第2話 創造神セレーネ

「零様、神域へようこそ。私は女神セレーネ。5つの世界の創造神です。以後お見知りおきを……」 


「・・・うん?えええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」


 俺は自部自身のことを冷静なほうだと思っている。そんな俺が、他者が見たらドン引きするような表情で叫んでいる。

 俺はトラックではねられたときに頭を打って、幻覚を見ているんじゃないかと思った。

 しかしそれは、俺の目の前にいる女の人の言葉で幻覚じゃないと思い知らされる。


「あのーーー零様?どうかされましたか?」

「いやーでも、俺確かに死んだしなー」


 俺はとりあえず目の前にいる女の人に聞くことにした。


「あのー、すいませんここってどこですか?

 もしかして、天国とかですか?」


 目の前にいる女の人は咳ばらいを一つして、言った。


「ゴホン!ここは天国ではなくて神界ですよ」


 俺は今まで聴力検査にひっかかったこともないし、耳が特別悪いわけでもない。

 しかし俺は不覚にも、ついに幻聴が聞こえ始めたのかもしれないなと思ってしまった。

 なので、耳の穴をかっぽじって、もう一度聞くことにした。


「すいませんよく聞こえなかったんで、もう一度お願いします」

「神域ですよ。私が、神意魔法であなたの魂をこっちによんじゃいました」



 ・・・ん?今の言葉と目の前でテヘペロってしている女の顔を見て、俺はある一つの答えを導き出す。そしてそれを確認するために目の前の女に聞くことにした。


「もしかしなくても、これって、よくラノベとかである神の世界によばれるやつ?」

「ラノベというのが何かはわかりませんが、そうですよ。ちなみにあなたをここに呼んだのは私です!」


 俺は目の前でドヤ顔している女殴りたくなった。


「俺は神谷零です。えっとー、あなたの名前は何ですか?」


 俺はまだ目の前にいる女の名前をまだ知らないと思い尋ねる。


「私は女神セレーネ。5つの世界の創造神です」


 え、待って。俺もしかして、創造神様に対して失礼な態度とってた!?もっと丁寧な態度のほうがいいのかな?


「そうですよー。零様はもっと私に敬意を払わないといけないのです!」


 目の前でドヤってる女神を見て、俺は即座にさっき心で思ったことを取り消した。こいつ、何気に俺の心を読んでくるし……


「なぁ、えっとー、呼び方はセレでいいか?俺のことも零ってよんでいいから」

「・・・えっええ!?も、もちろんいいですよ。では、私も零さんと呼びます」


 セレは少し驚いた顔で、そう答えた。

 俺はセレがなぜ驚いた顔をしていたのか、その時はまだわからなかった。


 その時、突然空間がねじ曲がり中から一人の美少女が出てきた。

 その少女には羽が生えており、どこか神々しさを思わせる風格があった。

 俺が、あっけにとられて見ていると、少女はこちらを一度見た後、セレのほうに顔を向けた。


「セレーネ様、もう少しで神意魔法が切れます。要件を急いでください」

「わかったわ。アイン、あなたもわざわざ伝えに来てくれてありがとう」

「いえ、では私はこれで」


 そういって、アインと呼ばれていた少女は歪んだ空間に帰っていった。


「なあ、セレ、要件って?」

「零さん、あなたには私の世界、零さんの世界でいう異世界に行ってもらい、大陸同士の争いを止めてほしいのです」


 セレが真顔で俺に告げる。


「いまいち意味が分からないんだけど、どういうこと?」

「私の管轄かんかつする世界にディオルザルっていう所があるのですけど、そこでは、250年前から、人族、魔族、獣人族、エルフなどの亜人族で領土争いをしています。今までは見過ごせるぐらいのものだったんですけど、最近はそれも過激になってきました。それにより、世界はいずれ破滅します。そこで、零さんにはどのような方法でもいいので、争いを止めてほしいのです」


 さっきまでふざけていたセレが、全種族を救ってほしいと心からお願いしている。

 そこで俺は沙姫との会話を思い出した。

 顔はデレデレとしながらも、真剣に言っていた言葉。


『私達は兄妹、たとえ時間、空間が違っても、もし自分が相手だったらどうするかを考えてから答えを出そうね!どこにいても自分がした善行は想っている相手にも届くんだよ!まぁ、私だったらお兄ちゃんのことなんだけどね』


 俺は決意した。


「わかった。そのディオルザルっていう世界に行くよ。ただいくつか聞きたいことがあるんだけど、まず、俺のはねられた体はどうなるの?できれば、人間の体がいいんだけど」

「ありがとうございます!もちろん、零さんの体は私が最高のスペックで作ります。あと、あちらの世界のことを少し説明しておくと、あちらの世界では、自分のレベルを見ることができ、筋トレ、魔物の討伐など様々なことによってレベルが上がります。レベルには上限があって、その上限より上には成長しません。また一部の人は精霊と契約して精霊魔法という特別な魔法を使う人もいます。しかし、精霊とは基本話せないですし、話せても精霊に気に入られないといけないので精霊魔法使いは基本いません。零さんは……そもそも精霊と話せませんね」

「なあ、セレ、俺がその世界に行ってもすぐ殺されるだけだと思うんだけど?」

「そのことは心配いりません、私が今から、零さんに与えることのできる範囲で恩恵を3つ与えます。最強の力、最強の頭脳、教会に行けば、私と話せる権利など、なんでも与えれますよ」


 何か不穏な言葉が混ざっていたような気がするけど、気にしないでおこう。

 俺は、悩むことなく話を聞いていて思いついた恩恵を与えてもらうことにした。

 最後の一つはおまけみたいなものだが……


「俺が欲しい恩恵は、精霊と話すことができる権利、レベル上限をなくしてほしい……そして、最後にセレといつでも話すことのできる権利、どうだ?与えられそう?」

「そんなことでいいんですか?・・・分かりました。最後の恩恵は少し、条件付きになりますけど、零さんがそう望むなら」


 セレが俺に手をかざした。俺の体が金色に包まれる。

 すると次の瞬間、俺の体の中に何かが流れ込んできた。

 そしてそれはそのまま体の奥底へ沈んでいった。


「特に外見はなんも変わらないな」

「特に変化するような恩恵じゃないですからね、零さん、そろそろ時間です。また零さんが向こうの世界についたら話しましょう。最後にどこで生まれたいとかありますか?」

「できれば、精霊がたくさんいる所がいいな」

「分かりました。では、時の森に1歳の状態で転移させます。あなたに神の祝福を」



 その言葉を最後に俺の意識はどんどん下に落ちていった。

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