第10話 学校にて

 昼休み学食で友達にその夢の話をすると。


「やっぱ、お払いしてもらったほうがいいよ」


 心配そうに眉間に皺をよせる。


「お払いって高そうだし、変なのにつかまると、よけい話がややこしくなりそうだからなぁ」


 あまり乗り気のない返事を返す。

 確かにこのさきずっと、あんな夢に振り回されるのはごめんだった。しかしそれ以上に霊能力者とか霊媒師とか名乗っている人たちと、係わり合いになるのもなんだか億劫だった。


「それだったら、私いいとこ知っているわよ」


 別にひそひそ話しをしていたわけではないが、突然声をかけられビクリと体を震わせて後ろを振り返った。


「先輩!」


 おにぎりを片手に、ニコニコと同じサークルの先輩が圭介たちのほうを見ていた。

 サークル内では圭介の部屋の怪談話はすでに有名になっていたので、いきなりそんなことを言われてもそれほど驚いたり、立ち聞きされて腹が立ったりはしなかった。かえって自分で探すより、どこか紹介してもらったほうが少しは安心できるかもしれないと圭介は考え、


「本当ですか」


 身を乗り出しで先輩に尋ねる。


「私が直接関わったわけじゃないんだけど、友達でそういうの供養してもらった子がいるの」

「教えてください!」


 圭介は藁にもすがる思いでそう叫んでいた。


「いいわよ、ちなみに確認するけどその夢に出てきたのって、クマのみだったのよね」

「えっ? あ、はいそうですが……」


 圭介はなぜ先輩がクマのぬいぐるみであることを聞き返したのか、その時は怪訝に思いながら素直に返事を返した。


「私もそういうのってよくわからないんだけど、ぬいぐるみ関係専門の霊媒師? 霊能力者? みたいなのよね」

「ぬいぐるみ専門……」


 口に出していってみるとなんだかすごく胡散臭い。


 そもそも霊とは普通人間もしくは生き物なのではないか? それともぬいぐるみに取り付いた霊? またはぬいぐるみ自体が付喪神みたいなったそんなもの専用とでもいうのだろうか?


 しかしいまそんなことをこの先輩に訊いたところで、納得のいく返事がもらえるとは思えない。


「ホームページもあるらしいから、そこまず見て相談してみれば。たしか相談料は無料だったとかいっていたはずだから」


 本当に怪しい宗教じゃないんだろうか。いまさらになってやはり不安になる。


「大丈夫、宗教とかではないみたいだったから。みんな変わってはいたけど、いい人だったらしいし」


 圭介の顔を見て思いが通じたのか、先輩が付け加える。


「そうですか、ありがとうございます」

「結果教えてね」


 そういうと先輩は軽くウインクした。


「はい」


 乾いた笑みでそれに答える。先輩たちが圭介を心配している気持ちは本物だ……、しかしおもしろがっているのもなんとなく感じる。

 とりあえず相談だけしてだめそうだったら、その時は引っ越せばいいか。

 圭介も自分の身に起きているとはいえ、命に関わることはなさそうだったので、わりかし軽く考えているところもあった。そしてまた先輩のいう『変わった人たち』というのにも興味があったし、霊媒師や霊能力者だという人物に関わることもこの先の人生では二度とないと考えてみれば、貴重な体験かも知れない。


 そうして圭介は先輩に紹介されたホームページを、家に帰って開いたのだった。

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