第33話 物流は、命のリズム。「ピッ」1つの充電器が、コンビニのレジなどでスキャンされ、客の手元に届くまでのは、大旅行。「ピッ」「ピッ」「あん」

 女性にからまれて、意識が、すっ飛んだ。

 「おい…!」

 「え?」

 「おい、そこのメガネ!」

 学習塾講師の仲間、イケダたちの世界が、開けた。

 「おい、お前?」

 「はい?」

 「俺たち高齢者様に、スマホの充電器をもってこいよ!」

 「は、はい」

 「はい、じゃないだろう?」

 「かしこまりました!」

 「…若い奴らめ。誰のおかげで、今、平和に暮らせていると、思っているんだ」

 「そんなの、今は、関係ないんじゃ…」

 「うるせえ。早く、もってこい」

 「かしこまりました!」

 「俺たちは、高齢者様だぞ?ああ?」

 地域の寄り合いで、イケダは、へこんでいた。

 「これから買いにいっていたのでは、間に合わん。もたもたしていると、高齢者様たちに、何をされるか…。そうだ!」

 物流会社に、配送を依頼するしかない!

 物流は、命のリズム。

 「ピッ」

 1つの充電器が、コンビニのレジなどでスキャンされて、客の手元に届くまでの旅は、長かった。

 「ピッ」

 「ピッ」

 「あん」

 充電器は、数々の部品から作られる。

 数種類の化学薬品や石油などを通じて、充電器の製造工場に入っていき、それらを組み合わせて、充電器が組み立てられる。

 そして、多くの人の手が、加えられる。

 派遣労働者や外国の労働者が、どれほど、集まっていたか…。

 それらの人々が、仕事をしてくれない世代の前で、薄給で、どれだけ汗をかいていたか…。

 労働者の身分差問題、再び?

 工場の機械、すべての製造過程が、物流のメカニズムを働かせる。

 化学薬品等を用いて加工していくときも、販売店に運ばれていくときも。

 物流の流れの中では、どれか1つの作業でも正常に通過できなければ、充電器は生まれない。プラグ(コンセント)に通されることも、なくなってしまう。

 物流は、命のリズム。

 そんな物流も、もともとは、物を運ぶ運動だけを、意味していたらしいよ?







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