第31話 タナカは、言った。「農民の粘り強さだ」高齢者も、他の世代に文句ばかり言っていないで、こういうふうに生きられれば、良いのにね。

 もちろん、収穫は、高齢者にとっては、負担大。

 腰を下ろし、足をかがむ体勢は、つらかった。そこでタナカは、考えた。

 「収穫などの全作業は、俺がやろう。高齢者には、工場で、収穫物の仕分け作業や梱包をやってもらう」 

 仕分けられて、梱包された野菜は、タナカの運転する大型トラックで、農協へ運ばれていった。

 農協の人が、その野菜を販売。

 農協での売上金の一部は、タナカの実家兼有料老人ホームの入居費用になった。

 「高齢者の自立と自律が、生まれる!」

 特別なノルマは、なかった。

 作業に参加する時間も、人それぞれ。

 「腰が、痛いのう…」

 途中で帰る人もいたが、OK。

 「あんたは、休んでいなさいな」

 「すまんのう」

 「その代わり、休憩に食べるリンゴの皮を、むいておいてくれや」

 「わかったよ」

 ブルルルル…。

 タナカが、農協から帰ってきた。

 「皆の野菜、もう、売り切りました!」

 「やった」

 「やった」

 「私らが…役に立てたんだねえ」

 冬場など、野菜の収穫がはかどらなくなったときには、ゲームセンターの景品チェックや、包装をしたり。

 地元新聞が、絶賛。

 「ここが、高齢者らの生きがい作りを推進している家です!」

 仕事という、退職後に忘れかけていた生活リズム、高齢者の存在価値が、呼び覚まされたのだ!

 タナカは、記者に言った。

 「農民の粘り強さだ」

 これに似た運動は、各地に、広まった。

 作業前には、介護の専門家がきて、血圧チェック。

 ビニールハウスの地面に、ゴムを敷く農家も出た。車イスでも、移動をしやすくするため。

 通路は、低い場所に置かれた。高齢者が、腰を曲げずに動けるようにするため。

 この運動の問題点は、フラッシュバック。

 「戦時中の、工場労働のようじゃ」

 昔を思い出させて、作業を敬遠してしまう高齢者も、出たから。

 タナカの世界は、発展途上。

 さあ、この世界の話は、終わり!

 他の仲間たちと、エッチなククルスドアンの店を、探しにいこう!





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