第26話 「遺贈寄付」って、何だろう?2人の唇が、重なった。「う…ううん…」「ああ…ああ」「ううん」「はあ…はあ」「お客様?…どうなんです、私?」

 「ぷっつん…」

 ツバキの頭が、くらっと、震えた。

 「あら、また」

 「え?」

 「お客様って、そんなにも?」

 「え?」

 「わかっていますから…」

 女性の身体が、ぽっと、熱くなってきた。ツバキの、身体も。

 瞬間。

 2人の唇が、重なった。

 「う…ううん…」

 「ああ…ああ」

 「ううん」

 「はあ…はあ」

 「お客様?」

 「ああ…はい」

 「今度は、タナカで、いかが?」

 「タナカ?」

 …またも、仲間の名前だぞ?

 「お客様?」

 「…はい」

 「ああ…触らないで」

 「触って、いませんよ」

 「だって…」

 「う…ううん」

 「ああん、やだあ」

 「だって…」

 「ねえ?触らないで、あたためれば良いんじゃないのかと、思っているんじゃないんですか?」

 「そんなこと、…う」

 「あら、また?また、緊張しちゃったのかしら?」

 「…いや、その」

 「隠さなくても、わかるわよ」

 「ああ…ああ…」

 「ほしいんでしょう?」

 「…」

 「お客様って、エッチなのね?」

 タナカ…。

 タナカが墜とされたのは、こんな世界。

 「信仰心のない自律界」

 今や、都市化や核家族化が、進みすぎ。

 「人々から、信仰心が奪われているんじゃないか?」

 信仰心をなくした人たちは、心のよりどころに迷い、うろうろ。

 「あんた、しっかり、しなさい!」

 母親のほうが、真剣?

 頼るべき場としての寺院がないのは、心細いことだ。

 そこで、今では、インターネットや民間サービスで葬儀や僧の手配をすることも増えてきた。

 だがそのことで、新たなトラブル。

「高額の弔い料金を、請求された!」

 相続も、問題。

 「遺産を、ケンカして分配したくない。それなら、遺産なんて、ないほうが良い。死ぬことも、難しい。命あるうちに、遺産のいく先、寄付先を決めたい。社会貢献を、実感できるようになりたい」

 そう考える人に、今、遺産を公共団体に寄付するこの制度が、注目されてきた。

 「遺贈寄付」






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る