第20話 あなたは、「触らせてもらって、良いですか?」「押してもらって、良いですか?」と言われて、簡単に断れますか?これが、強迫言葉です!

 「高齢者には、逆らえません」

 「そうでしょう?」

 「先生?」

 「はい」

 「触らせてもらって良いですかって、断りにくい日本語、ですよね?」

 「そうなんですよね」

 「ほぼほぼ、命令です」

 「ええ」

 「高齢者の命令は、怖い」

 「怖くて、うちの子に触らないでって、言えなくなってしまうでしょう?」

 「はい」

 「育児の、脅迫…」

 「育児の世界は、いつだって、バーチャルですよね」

 「そうですよね?」

 「特に、今の、変なウィルスの社会では、危険が大きいと思います。社会全体で、赤ちゃんを見守る空気が読めなくなってきたように感じますし」

 「スナガさん?」

 「はい」

 「先ほど、触らせてもらって良いですかという、脅迫言葉の例をあげましたよね?」

 「はい」

 「エレベーターの中での会話も、似ています」

 エレベーターに、乗ると…?

 他人から、こう言われることがあった。

 「5階(のボタン)を押してもらって、良いですか?」

 「閉まる(のボタン)を押してもらって、良いですか?」

 これも、強迫言葉。

 使ってほしくない言葉らしい。

 「スナガさん?」

 「はい」

 「スナガさんがエレベーターに乗っていたときに、途中の階で、誰かが乗ってきたとします」

 「はい」

 「そうして、その人が、先に乗っていたスナガさんに、ボタンを押していただけませんかと、言ってきたとします」

 「はい」

 「そのとき、言われたスナガさんは、両手に物を持っていたか何かで、手を動かせなかったとします」

 「はい」

 「そのときは、ごめんなさい、手がふさがっているんですと、言えますよね?」

 「はい」

 「でも、スナガさん?」

 「…え」

 「押してもらって良いですか?と、言われたら?」

 「あっ!今度は…。できませんって、言いにくくなりました」

 「でしょう?」

 「押してもらって、良いですか?って…。あ!」

 「脅迫言葉って、多いんですね」


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