第17話 「ねえ、あなた…?」「君は、かわいいね」「バカ!」「ごめんよ」「それで、通販の送料って?」通販の送料無料なんて、ウソですからね。

 「ああん♡がまんしてよう!」

 「とてちてたあ」

 「ちゃんと、あとで、タカクラのスマホを、紹介してあげますから」

 タカクラ…かあ。

 遠く離れた世界で、スナガ夫妻の会話が、続いた。

 「ねえ、あなた…?」

 「君は、かわいいね」

 「バカ!」

 「ごめん、ごめん」

 「それで、通販の送料って、どうなっているの?」

 「ああ。送料って、実は、ネット通販元が負担しているんだそうだ」

 スナガ夫妻のほうは、買い物にいったホームセンターで、送料無料と聞いて、心ときめかせていたものだ。

 「送料は無料?」

 「買いましょ、買いましょ」

 「あ、でも」

 「何、あなた?」

 「無料なんだけれど、無料じゃないんだよな」

 「やっぱり、タカクラさんの、通販教育?」

 「ああ」

 「ネット通販好きのタカクラは、この学習塾の仕事を辞めなきゃならなくなったら、ネット通販物の配送ドライバーになるって、言っていたぞ」

 「ふうん」

 それが、まさか、本当に、失業しちゃうとは。

 ネット通販の商品価格は、大きくいえば、この3点で決められていたらしい。

 「仕入れ値」

 「利益」

 「経費」

 それだけを聞いたなら、送料は含まれないイメージだ。

 でも、送料は、無料じゃない!

 通販の、からくり。

 送料無料といわれていたのは、商品価格の中に、送料が含まれて処理されてしまっていたからだという。

 配送料は、経費として運送会社に支払われていた?

 運送業者からは、こんな声が上がった。

 「送料無料なんて、運送業の立場を考えてくれていない表現だ。やめてくれ。俺たち配達労働者が、パニくるだけじゃないか?」

 そこで、こんな言い方が生まれた。

 「送料無料(当社負担)」

 言い方にも、歴史あり。

 ではなぜ、カッコ付きで、当社負担って入れるのだろう?

 それは…。

 「販売促進戦略上の理由」

 ますます、パニくったでしょ?




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る