第8話 いやらしいのは、働く世界も同じ。労働は、身分差の世界。正規と非正規は、まだまだ、同じ労働者とは呼べない。見せかけなんだよ…。  

 「落ち込むな、ツバキ?」

 「はい」

 「労働には、トリックが、あるんだ」

 「…トリック?」

 「国が、どちらの社員も、同じく扱おうとしている。それは、金を吸い上げやすくさせるためだ」

 「そうだったんですか」

 「トリックだよ、ツバキ?」

 「…」

 「正社員と契約社員は、まだまだ、同じ労働者じゃない。見せかけだけの、平等だ」

 「…」

 「さっきも、言ったようにな。同じように扱うのは、国が、年金やらの制度を続けさせたいからだ」

 「…」

 「今、日本には、金がない」

 「…」

 「裕福なじいじとばあばたちが、この世から、消えてくれない限りはな」

 「…」

 「日本も、エッチだよな。正社員も契約社員もどちらも平等にしますよ、だとさ。厚生年金に加入させますから、国に金を払ってくださいっていう下心が、見え見え」

 「下心の、平等…」

 「…」

 「ツバキ?」

 「はい」

 「俺たちは、勝ち組リアルの、犠牲だ。あの、監督のじいじとばあばたちにあやつられている、星野君のように」

 「…先輩も、言いますねえ」

 「非正規は、トリック」

 「にわとり…」

 「それは、トリニクだろ。コウノトリニク…。おっと、それは、姉貴がやっているクリニックだ。ははは」

 「労働って、まやかしの世界ですよ」

 「生きるしかないんだよな、ツバキ?」

 「…はい」

 「契約社員は契約社員で、正社員になりたいからと、奮起できる」

 「そりゃあ、そうですが」

 「労働の身分差っていうのは、そういう、良い相乗効果が生まれるんじゃないかと期待されて、生まれるものでもあるんだよ。たくさんの、トリック」

 「…先輩?」

 「何だ?ツバキ」

 「塾の講師仲間、今ころ、どうしていますかねえ?」

 「元気、だろう。どんな世界にいっても、非正規組は、負けない」

 「先輩?」

 「え?」

 「これで会社は、自然と、人員削減ができたわけですよね?」

 「エロいことを、言うなよな…」





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