第2話 「愛、覚えていますか?」「覚えてねえよ」「詰んだな」 「2歩」 「それ、負けているから」時代は、エッチな感じに、変わっていくらしい。

 「ほら…」

 「え?」

 「ツバキ先生、泣いているじゃないか?」

 「俺ら的には、詰んだな」

 「2歩」

 「それ、負けている」

 「わからない人には、何のことやら、わからない」

 「おい、落とせって。…ツバキ先生に、聞こえちゃうだろ?」

 「黙ろうぜ?」

 「黙れ!」

 「俗物が!」

 ツバキは、ついに、何も言わずにはいられなくなっていた。

 「…ちょっと、そこ?静かに、してください。がんばらないと、将来、上手くいかなくなっちゃうよ?愛、覚えていますか?」

 教室の一部が、また、ざわつき出した。

 「おい、聞いたか?」

 「愛、覚えていますかって…」

 「覚えてねえよ」

 「ツバキ先生って、氷河期っていう時代の人なんだよな?ガチャ回して、やり直し選挙をしたいだろうな」

 「今は、俺らの時代」

 「俺ら、さとっちゃったんだものな。勉強とか、そんなにがんばらなくても、良くなった。字の読み書きとか、入社先で、教えてもらえるし」

努力、ピンチ!

 「良い学校に入れれば、良い会社に、良い老後」

 それって、幻想だった。

 「講師の、皆さん?今どきの子は、SNSという武器をもっていますからね。気を付けてください。がまんを、しましょう。彼らは、強いのです」

 ずいぶん前に、いわゆる、泥棒ひげを蓄えていた塾長に言われたものだ。

 「そうだ。今どきの子って、泥棒ひげっていう言葉を、知っているのか?今どきの泥棒は、エリートサラリーマンのような姿をしている」

 ツバキは、疲れていた。

 「泥棒、か…。泥棒といえば、黒いひげの男が危機一髪のゲームが、思い出される」

 自然に、あごをさすっていた。

 エッチ、なんだね。

 「ヨシユキのクセのように、なってきた。ははは…」

 ヨシユキは、塾の講師仲間の1人。

 さあ。

 ここで、学習!

 「ほとんどの人は、黒ヒゲゲームの本当のやり方を、知らない」


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