32 へたくそな嘘

「……そ、そんなことは無いぞ?」



武器屋の娘ことテテに正体が

バレそうになったコウは

斜め上を向きながらそう答えた。


しかし、



「いいえ、私の勘は当たるもの。

貴方……本当は危ない人物じゃないでしょうね?」


「危ない人物ってなんだよ……

まぁ、とりあえず俺は唯の狩人だ」


「本当に?」


「本当だ。 というか、

早く新しい剣を見せてくれないか?

出来れば、丈夫な物だとありがたいんだが……」



狩人はそもそも剣など使わない。


しかし、今のコウには正常に嘘を付けるほどの

余裕は無かった。


その為、有り得ない嘘をついてしまった訳だが、

コウが無理やり話を逸らしそう問うと、



「……わかったわ。

今回は店の商品が悪かったことにするから

好きなのを貰ってくれていいわよ」



テテはコウへ問いただすことを諦め、

小さくそう呟いた。



「それはありがたいな」



コウはそう答えると、

店の中を物色し始めるのだった。


そしてテテはそんなコウを

訝しげに見つめるのだった。

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