第219話 マジか?
オレは空を駆けられてもホバリングする技術はない。なので、プレアシア号の少し前で海にダイブ。水圧で速度を殺して海面に顔を出した。
「レオガルド様!」
「すまない、遅れた! 被害は?」
「ありません! 数名が様子見のために島に残っています!」
「わかった! お前たちは一旦コルモアに向かえ! 補給を万全にしたら戻ってこい!」
海から飛び立つのは手間なので、そのまま泳いでミドットリー島に向かった。
──レオガルド。乗れ!
オレを掬うように背中に乗せてくれるロド。サメにも野次馬根性があるんだろうか?
泳げるところまで乗せてもらい、空へ放り投げてくれた。
風を纏って陸にシュタッ! と島に着地した。
マゴダと呼ばれる飛竜がこちらに勘づいた様子はない。殺気もない。まるで静かだ。本当にいるのか疑いたくなるな。
気配を殺して港に向かう。
「レオガルド様!」
やはり残ったのはオールダーか。ミドットリー島の司令官として義務を果たしたようだ。
「無事か?」
「はい。竜は山の頂上に居座ったままで、こちらに降りてくることはありません」
やはりミドットリー島を巣にするつもりか? まあ、空を飛ぶ竜としては見晴らしがよくて警戒しやすいのかもな。
「わかった。お前たちは隠れていろ。終わったら呼びにくるから」
戦いになったらかなりの被害、にはならないか。マゴダがSSSでもなければな。
「お気をつけて」
「ああ。すぐ終わらせるよ」
SかAなら瞬殺だ。まあ、どんな能力を持っているかわからんから油断はしないがな。
山に登るにはいくつか道があるが、それは人間が通る道であって獣なオレには関係ない。オレの臭いを嗅がれないよう風下から向かった。
どうやら背後から近づいているようで、折り畳んだ羽が見えた。
黒に白銀の線が走っており、眠っているのか油断しているのか、オレが近づいてきていることに気がついてない。
……随分と呑気なヤツだな……。
どんな獣でも隠れていたって油断はしない。住み処にいても安全てはないからだ。
AやSのモンスターだって外敵はいる。それをわかっているから同等と察したら殺られる前に殺れの精神で襲ってくるものだ。
勝てる相手か勝てない相手かを見抜けてこそ長生きできるものなのだ。
マゴダまであと百メートルだって言うのにまだ動かない。もう感じても不思議じゃないってのにな。
もうこの距離なら射程内。いや、確実に殺せる距離である。
先手必勝、殺る! と決めたらマゴダが動き、地面に手を置いてこちらに振り向いた。
その頃には三十メートルまで接近しており、一秒もしないでオレの爪がその背中を裂こうとしていた。
だが、無理矢理軌道を変え、体も捻って攻撃を逸らした。
無理な動きに体がついていけず、背中から地面に叩きつけられ、百メートルほど滑り落ちてしまった。
すぐに体勢を整え、起き上がってマゴダと対峙した。
……マジか……?
先ほど見たのは気のせいではなく、巨大な竜の人だった。
座っているので身長はわからないが、最低でも十五メートルはあるんじゃなかろうか?
頭に太い角を生やし、手足は鋭い爪を持ち、体の三割は鱗に守られているが、半分以上は人の姿だった。
しかも、そのマゴダはメス。いや、女であり、胸なんかもあった。
マゴダとか飛竜とかじゃなく、ドラゴンガールって言ったほうがしっくりくる姿である。
弱肉強食な狩猟ワールドからいっきに萌えなファンタジーワールドになった感じであった。
顔も人に近く、その唇は言語を話すかのように整っており、牙とか生えている様子もない。
こんにちは、とか言ったら当たり前のようにこんにちは、と返されそうである。
どうしていいかわからず佇んでしまったが、このままお見合いを続けていても仕方がない。意を決して話しかけてみることにした。
「オレはレオガルド。この島を守護する聖獣である。言葉はわかるか?」
なんか自分で自分のことを聖獣とか言っちゃうの恥ずかしいが、知性ある獣として見せるべく堂々と言ってやった。
「……け、獣がしゃべった……!?」
オレはこの世界にドラゴンガールがいることにびっくりしているけどな!
なんて戸惑いは見せず、しゃべるドラゴンガールを睨みつけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます