第215話 行政府 レオノール歴二十年
レオノール国二十年は穏やかに始まった。
「……二十年、か……」
時が過ぎるのは早いものだ。建国してから二十年。ギギと出会ってからは二十一年。オレが産まれてから……約三十年か? なんだかんだとアラサーだよ。
体的には衰えた感じはしない。二十年前、いや、日に日に力が満ちている感じがする。三十年生きて成長期が始まったのか?
「建国二十年では建国祭もありがたみもないか?」
国としてもまだ若く、ゼルム族、ベイガー族、人間、ゴゴール族、ブレイブと、まだ一つになっているわけではない。行き来するのも大変だからな。
最低でも五十年は経たないと建国祭の意味がないか。その間に必ず人間との争いはあるし、その後も何度も争うことになるはず。国として纏まってからのほうがいいだろうよ。
「レオガルド様、おはようございます」
朝になり、ギギたち巫女がやってきた。
ギギも三十歳になっているはずなのに、見た目は二十歳くらいからまったく変わってない。いや、それはゼルやヤトアたちも同じ。老けた様子は見て取れない。
これはやはり、オレのせいだろうか?
この大陸では群れのボスになると、なにか不思議な力が働いて、成長と言うより進化している節がある。
オレにはそんな不思議な力が出ている感じはないが、見ている限り、不思議な力が働いている。いったいなんなんだろうな?
巫女たちにレーキで毛を梳いてもらいながらぼんやりと考えていたら、いつの間にか眠ってしまった。
これと言った外敵による襲撃はなく、気候も穏やか。暑くもなく寒くもなく、適度に雨が降り、柔らかい風が吹いている。
レオノール歴二十年は平和に流れ、レオノール歴二十一年の春、諸島連合体にいっていた使節団が帰ってきた。
「よく帰ってきた。お前たちの働きに感謝する」
ゼルやギギたち主要メンバーで無事帰還した使節団を出迎え、苦労を労った。
「ありがとうございます。とても有意義な旅でした」
使節団の代表ロイドだが、ゼル王の代理として向かわせたのはゼルム族の男で、騎士ワルキューレに属してもいるロイゼだ。
補佐としてゴゴール族のマイバース。以前にも諸島連合体にいった男でもある。
「それはよかった。まずは休め。報告はあとで構わない」
ロドとラダーレンがついていたとは言え、一月にも及ぶ航海だ。ミドットリー島でも休んだだろうが、体は酷使している。報告は休んでからも充分だ。
使節団のヤツらを休ませている間に、オレは海に向かってロドとラダーレンに感謝を告げた。
──礼には及ばない。なかなか楽しい旅だった。いい餌さ場もあった。またいけのならついていく。
なにやら呪言に楽しさと興奮が混ざっている。よほど楽しい旅だったようだ。
二匹から旅の様子を聞いてから陸に戻った。
「凄い量だな」
シャーロット号一隻での航海だったが、諸島連合体からもらった荷物がとんでもない量だった。よく沈まなかったな。
「嵐に合いましたが、不思議と艦は安定してて大津波にも転覆しませんでした」
あ、そう言えば、こいつらにロドとラダーレンに護衛を頼んだの伝えてなかったわ。
「そうか。海の守護獣に感謝だな」
サメと龍を獣に入れていいのかはわからんが、あの二匹がいなければシャーロット号は沈んでいたことだろうよ。またあとで感謝しにいかないとな。
「鉄製のものが多いな」
たくさん積み込めるよう大砲は下ろしたと聞いてたが、それと同じだけの剣や槍が入った箱が降ろされたていた。
「身を守る武器が不足してますか」
まあ、モンスターはいなくても獣はいる。人間が獣と戦うには武器は必要か。
「これで諸島連合体との商売ができたらいいんだがな」
一隻か二隻かはついてくると思ったが、まさかのゼロ。諸島連合体もそう出せる船や人員がいないってことなんだろう。
「来年にはまたくるとは言ってました」
つまり、レオノール国との繋がりを切らしてならぬと、急ピッチで用意してるんだろうよ。
「こちらも船を造らないといけないな」
そのためには新たに港を築き、造船所を造らないとダメか。いや、それともコルモアの港を拡大するか?
まあ、それは使節団からの報告を聞いてから皆で考えるか。一朝一夕にはいかないんだろうからな。
「レオガルド様。ゼル王がお呼びです」
報告会をするようで、伝令がやってきた。
「わかった。すぐいくと伝えてくれ」
まだまだ続く荷降ろし数分くらい見詰めてからコルモアの行政府に向かった。
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