第202話 巫女神

 四日かけて諸島連合体の船団が上陸した。


 と言っても八隻もいるので外港には錨を下ろせない。なのでコルベトラにも二隻回した。


 主要はコルモアに降りたので、オレはこちらを監視し、コルベトラはヤトアとロズルに任せた。


「レオガルド様。セオル様から伝言です」


 と、コルモアを見張らせていたゴードがやってきた。


「三日後に諸島連合体の歓迎会を開くそうです。その際、この大陸がいかに危険かを知らせたいので、凶悪そうなモンスターを狩ってきて欲しいそうです」


 凶悪そうなモンスターか~。なにがいい? と言うか、この付近にはもう凶悪そうなモンスターいない。ここを長時間離れられんし、海のモンスターにするか。


「港に揚げておくと伝えておいてくれ」


「わかりました」


 夜になったら海に入り、なにかいないかと探していたら首長竜の群れがいた。


 ……こんなのもいるんだな……。


 回遊する種なのか、この辺では見ないものだ。ミドの眷族でもないし、とりあえず一匹狩って味見してみる。


 特別美味いものではないが、特別不味いわけでもない。これまでの経験からこういう味は人間に好まれる。これでいいだろう。


 二匹狩って港の浜辺に揚げた。


 港を見張る兵士たちがオレに気がつき、松明(的なもの)を掲げて集まってきた。


「警備、ご苦労。これを諸島連合体のヤツらに食わせてやれ。諸島連合体のヤツらは大人しくしているか?」


「はい。気持ち悪いくらい大人しくしております」


 きっとレニーラが言い含めたんだろうよ。


「油断せず警備を続けてくれ」


 そう言って海に出て見張っていた場所に戻った。


 ゴードからの報告でも諸島連合体のヤツらは大人しくしているそうで、この大陸に慣れようとしているそうだ。


「師匠」


 コルベトラからヤトアが戻ってきた。


「スパイが十八人いたよ」


「そっちにいってたか。結構連れてきたようだな」


 一人だけとは思わなかったが、まさか十八人もいるとは思わなかった。死ぬのを予想して多目に送り込んだのかな?


「なにかしゃべったか?」


「帝国の者のようで、レオノール国を探るために送り込まれたそうだ」


 まあ、あちらからしたら謎の大陸。諸島連合体から話は流れているだろうが、この大陸にきて戻った者はいない。まずは生きて情報を持ち帰るのが最大の目的だわな。


「とにかく、知っている情報を引き出させろ。暮らしでも政治でも帝国の現状が知りたい。そうミドアに伝えろ」


 交渉するにしてもあちらの現状を知らないと不平等な約束を飲まされてしまう恐れがある。


 まあ、今回は交流が目的だろう。諸島連合体だってこちらを知らないのだ。まずは情報収集に力を入れるだろうよ。


「レオガルド様。セオル様がきて欲しいとのことです。諸島連合体の代表がゼル王に謁見したいそうです」


 やはりそうなるか。王と会うと会わないでは諸島連合体としても今後の判断に困るだろうからな。


「わかった。明日の朝に街道から入る。ギギも連れていくから巫女も迎えるように伝えてくれ」


 ギギを表に出すのは嫌だが、ギギがオレに跨がっていれば諸島連合体もオレを恐れたりしないだろう。威圧しても今後の関係に関わってくるからな。


「わかりました」


 あとはドーガに任せてマイノカに走った。


 着いたらすぐにゼルたちを集めて諸島連合体のことを話した。


「準備やなんだで十五日以上先になる。それまでに迎える準備を頼む。おそらく二十から三十人は連れてくる」


「どのていどの身分なのだ?」


「部族長くらいの身分だ。それなりの決定権を持たされているそうだ。まあ、今回は顔見せみたいなもの。決定することはないだろうが、軽々しく約束したりはするな。人間は約束で縛るからな」


「わかっている。レオガルド様から散々言われているからな」


「フフ。王らしくなったな」


「気が重い毎日だがな」


「それが王と言うものだ。嫌ならジュニアを鍛えて王位を譲れ」


 ここにはジュニアもいる。オレが認めていることを皆の前で示しておいた。


「そうだな。だが、まだ譲る気はない。ジュニアにはもっと学ばせたいのでな」


「まあ、レオノール国もまだ落ち着いてないしな。急ぐことはないさ」


 ゼルもまだ若い。あと二十年はがんばってもらうとしよう。


「ギギ。悪いが付き合ってくれ。レオノール国の巫女神として諸島連合体に見せておきたいんでな」


「はい。レオガルド様に恥じないよう勤めます」


「そう肩を張る必要はない。守護聖獣の巫女として胸を張っておけ。場はセオルに仕切らせるし、嫁や巫女を横におく。失礼なことを言ってきたら優しく微笑んでおけ」


 この日がくることは前々から教えてあるし、ギギも人間。人間の中で育ってきたのだから対応はできるはずだ。巫女たちを纏めてもきてるんだからな。


「ゼルム族の巫女も二人くらい連れていくか。ギギ。選んでくれ」


「わかりました。礼服を着ていきますか?」


「んー。橇に乗せるから乱れるしな。コルモアの前で着替えるとしよう。ゼル王。銃士隊を出してくれ。諸島連合体の護衛にする」


 オレがいれば問題ないが、エサを探しに出る必要もある。オレがいない間は銃士隊に守らせるとしよう。


「わかった。二十名でよいか?」


「ああ。それでいい。銀の弾を持たせろよ」


 出発は明日朝、陽が昇ったら出発することにする。


 神殿に戻ったら久しぶりに巫女たちに体を梳いてもらい、明日に備えた。

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