第94話 ミディア
当然の如く、アルビノバリュードを連れて帰ったら驚かれた。
「レオガルド様、また……」
「ガルウゥ~」
なぜかギギとチェルシーに呆れられた。
オレだって好きで連れてきたわけではない、と言いわけするのは止めておいた。なんか、浮気がバレたアホ亭主みたいな気がしたからだ。
「ザザ。こいつ、霊力あるか?」
ギギとチェルシーのジト目を無視してザザに尋ねた。
「……はい。ありますね。それもかなり高いです……」
「やはりか」
最初はなにも感じなかったのだが、蜘蛛を食ってから冷たいような気配が伝わってきてたのだ。
「レブ。こいつの声が聞こえるか?」
次はテレパシー的な力を持ったレブに尋ねた。
「うん。すっごいしゃべってる。好き好き大好きって」
はぁ? 好き好き大好きって、なんじゃそりゃ?
「レオ様のこと大好きすぎて、チェルシーがヤキモチ妬いてる」
なんだろうな。これほど嬉しくない好意は? 獣な体に人の心があるオレには形ある愛は一生得られない。
「レオガルド様」
と、ギギが前の右脚に抱きついた。
いや、形ある愛はここにあったな。この愛があるからオレは獣でも生きていられ、面倒なことにもめげないでいられるんだったな。
「グルル」
「ふふ。ダメよ、あなた。ギギねえさまはレオ様の特別なんだから。邪魔しちゃダメ」
テレパシー的会話でアルビノバリュードを宥めるレブ。チェルシーを従えているだけに恐れることはなく、その霊力で静めていた。
「レブの呪霊、もしかして高まっているのか?」
ザザに尋ねる。
「そうですね。わたし以上です。ただ、その能力はモンスターに向けられてますが」
「なるほど。精神感応力か」
「精神感応力、ですか?」
「オレもよくは知らないが、レブの場合は、自分の精神と相手の精神を合わせる、同調させて従わせるものだろうな」
オレの心は人の心だからレブの呪霊は効果がない。同族や人間、ゼルム族には通じてないからな、ザザの言う通り、モンスターにしか効かない能力だ。
「レブ。こいつにここでの暮らし方を教えてくれ。あと、名前をつけてやってくれ」
オレに名前をつけるセンスはない。レブにつけてもらおう。
「女の子だからミディアだね」
「……あ、メスなんだ、こいつ……」
いや、オスとも思ってなかったが、メスと聞くとメスに見えるから不思議なものだ。
「なんでミディアなんだ?」
「響きが可愛いから」
特に意味はなかったようだ。
「あなたはミディア。ミディアよ」
精神感応力が働いたのか、アルビノ──ではなく、ミディアが舌を出して喜んでいる。
「こうしてみると、レブの呪霊は凄いな。アルビノと言う説は間違いかもしれないな」
考えてみればオレも白い。種として白いのではなく、特殊だから白いのかもしれんな。
「それで、ミディアの呪霊ってなにかわかるか?」
「んー。ミディアからは水のイメージを感じるかな?」
水?
「水霊ではありませんか? 人間でもたまにいます」
水霊?
ザザから話を聞くと、水を操る呪霊のようで、井戸を探したり日照りのときに水を出したりするそうだ。
「ミディア。水を出せるか?」
と尋ねてもオレの言葉は届かない。クゥン? って顔をしてるよ。
ちょっと考えてレブに謎触手を絡ませ、ミディアに精神感応力を繋いでもらった。
──好き好き大好き!
って感情だか意思だかがオレの中に流れてきた。
……つ、強い呪霊だな、これは……。
「レブ。オレの考えはわかるか?」
「んー。よくはわからない。レオ様はチェルシーと全然違うから」
「やはりか。そうなるとレブがミディアに伝えないとダメか」
レブの精神感応力でチェルシーの知能は高くなり、人間の子供くらいにら知能はあったりする。簡単な言葉なら理解している節もあるくらいだ。
「レブがミディアに跨がってもチェルシーは怒ったりしないか?」
「大丈夫だよ。チェルシーは理解ある子だから。でも、ちょっと嫉妬深いかな。レオ様に懐いているミディアが気に入らないみたいだから」
獣に嫉妬されてもなんも嬉しくないな。
「じゃあ、ミディアに跨がって教育してくれ。水霊の力も知りたいしな」
水を操れるならそれはレオノール国の力となる。育てておいて損はあるまいて。
「ギギ。少し、ミディアを教育してくる。ミナレアを頼む」
「はい。いってらっしゃいませ」
ギギに頬擦りをし、まずは狩りの仕方を覚えさせるために草食系モンスターがよくいる場所へと駆け出した。
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