第48話 戦争1

 コルモアの町とコルモアの港は別にしていた。


 昔は距離的には一キロくらい離れていたので、港はゴルティアに任せていたのだ。


 しかし、人口増加により距離はなくなり、ゴルティアは航海訓練で毎日海へ出てるので去年統一。セオルは侯爵兼町長。ゴルティアは伯爵兼海軍大将として身分を与えて任せていた。


 海軍がいるなら陸軍もいるが、陸軍はゼルム族を中心に組織し、人間はコルモア周辺を守る警備隊的な仕事をさせている。ちなみにコルモア陸軍としてミドロア(探検隊としてオレのところにきた男ね)を中将として据えた。


 ゴルティアがプレアシア号で出ているので、マイアナとの戦いの指揮はセオルに任せ、ゼルには王の立場で立たせることにする。


 セオル族の陸軍は後方(海を正面と見てるからな)に待機させてある。他から上陸されたときに対応させるためにな。


 コルモアに戻って五日。やっとマイアナの大船団がやってきた。


「遅かったな?」


 ミドットリー島から一日の距離なのに。


「ゴルティア号を見て警戒したんでしょう。わかる者が見ればミドガリアの戦艦だとわかりますから」


 なるほど。艦の型を覚えるほどの戦いをしているってことか。


 マイアナの戦艦は四隻。通常船は十二隻。それだけでマイアナの本気度がわかると言うものだ。


「交渉にくるかな?」


「しないでしょうね。掲げている旗は見たこともない旗ですからね」


 レオノール国の旗はゼルム族を象ったものにしている。まあ、初代王がゼルだからって言う、単純な理由だけどな。


「戦艦は無傷で手に入れたいな。レオノール国にも艦隊を置きたい」


 ミドットリー島も開拓して、前線基地にしたい。それには戦艦や人が欲しい。オレにはマイアナとかミドガリアとかどうでもいいからな。


 ……どっちを相手しようと苦労するのは違いないんだからな……。


 戦艦が三隻が突出し、大きく旋回。大砲を出した。


「ゼル王」


 これからゼルが王として立場を確立させるためにゼル王と呼ぶことにしたのだ。


「レオガルド様から王と呼ばれるのはこそばゆいな」


「慣れろ。お前の声がこれからのレオノール国を創っていくんだからな」


 まあ、いろいろ口出しているオレが言っても説得力はないが、まだ形にしたばかりの国を纏めろと言うほうが間違っている。超越したオレが支えなければあっと言う間に瓦解してしまうわ。


「……そうだな。慣れるしかないな……」


 そして、やるしかない。人間の国から仲間を守るためには、な。


 どの種族が王になろうと平和な国にはならない。ただ、短い平和が訪れるだけだ。だが、人間種以外の種が国を持つことには意味があるはずだ。


 まあ、まだその意味は見出だせてはいないが、それは積み重ねていって、ゼル自信が見つけるしかない。オレはギギを幸せにすることで忙しいからな。がんばれ、である。


 マイアナの戦艦がこちらを向き、一斉に大砲が火を吹いた。


「全軍、レオノール国を守れ!」


 ゼル王の言葉で、レオノール国とマイアナの間で戦争が勃発する。


 このことはちゃんと記録し、マイアナからの攻撃で始まったことをレオノール国の民に正義はこちらにあると知らしめるのだ。


 この日のために作ったレオノール国の旗を一斉に掲げさせ、オレの雷で大砲の弾を撃ち落としてやる。


 本当ならすべていただきたいところだが、崖の上にはレオノール軍が立っている。兵士を鼓舞するためにも大砲の弾を撃ち落とす必要があるのだ。


 戦争などしないに越したことはないが、生きるために戦いをしするのが生き物と言うもの。そこに種族は関係ない。強い生き物が弱い生き物を食らう自然の摂理。この世の法だ。食われたくないのなら食らう立場になれ、である。


 二艦目がこちらの正面となり、一斉に撃ち出した。


 今度は崖にわざと当てさせる。連続で雷を撃てないと思わせるためにな。


 そのことは全兵に言ってあるので大した混乱はない。あとで回収させていただきます。


 三艦目に代わり、また一斉に撃ち出され、それもわざと受ける。


 崖は堅牢で岩肌を軽く削っただけ。いずれ湾を拡張しなくちゃならないと考えると、堅牢なのも良し悪しだなと思うぜ。


 崖の上から一旦兵士を下がらせる。


 砲撃でレオノール国は落とせないし、海にいられたのでは手出しができない。マイアナもそれはわかっているだろうから、戦艦を湾に入れようと動いた。こちらが迎え撃つとも思わないで。


 敵はバカなのは助かるが、今回はそうしないとならないからやっているまでだろう。このまま帰るなんてできないんだからな。


 湾の出入口は狭い。百メートルはあるが、深いところは五十メートルもない。一隻ずつしか入れないのだ。


 おそらく、そのことはマイアナ側にも知っているはずだ。この大陸に上陸できるのはここしかないんだからな。


 ……まあ、乗り上げる覚悟があればどこからでも上陸はできるけど……。


「ヤトア。日頃の成果を見せろよ」


 ヤトアには突撃隊を指揮させているのだ。


「任せろ」


 戦艦へと飛び移り、軽い放電を放って兵士たちを動きを封じた。


 その間にヤトアが霊装術で戦艦に上がり、ロープ梯子を垂らして突撃隊を導いた。


 次々とマイアナの兵士を殺して制圧していき、十分もしないで完了。すぐに一般兵を上がらせて戦艦を桟橋に接岸させた。


「二番艦、きます!」


 見張りからの声が挙がる。三十分もしないで突入してくるとか、やはり計画していたようだ。


「次、いくぞ!」


 まあ、こちらも計画通り。気を引き締めて第二ラウンドを開始した。

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