第46話 戦艦再び

 夏がくれば塩作り~。遥かな海~、白い壁~。


 なんて歌いたくなるくらい塩作りが忙しい。


 人口増加になれば食糧が増える。わかっていたのに塩を増産するのを忘れていたのだ。


 増産するには人を投入するしかないと、一番消費するフレンズな獣人を連れてきて塩作りをさせている。


 獣人が塩分摂りすぎじゃないかと思ったが、毛がないだけによく汗をかく。昔は塩分不足で死ぬ者が多かったそうだ。


 ゼルム族も夏場はよく汗をかき、塩を求めているところを見ている。ただ、こちらは塩分過多で体調を崩す者が出てると言う状況になっている。まったく、種が違うと体調管理も違ってくるから参るぜ。


「お前たち、休憩だ! 水と塩、ロドの蜜を口にしろ!」


 フレンズな獣人たちはこちらから指示しないと働き通すので、一時間置きくらいに十分くらいの休憩させる。


 その間に崖の近くで村を造る人間たちの様子を見にいく。


「調子はどうだ?」


「まあまあですな」


 人間たちにもちゃんと休憩はするように言っているので進みはゆっくりだが、オレの命令で守らせているよ。


「ここは、川が小さいのか難点だな」


 小川はたくさんあるが、大人数を支えれるくらいの川はない。ここも拡張しないとダメだな~。


 と言っても、大きい川からとなると五キロ先からとなる。もうどこからも人手は持ってこれないわ。


「まったく、チートがない国造りは苦痛でしかないなぜ」


 あれをやろうとしたらこれが足りない。なんの無限地獄かと思うよ。


 オレも木陰で休んでいると、ゼルム族の輸送隊がやってきた。


「ご苦労さん。体調は大丈夫か?」


「はい。ここまでくるまでに川がいくつもありますので問題ありません」


 まだこことの道はできてないので、輸送隊は下半身の両脇に鞄をつけての輸送となる。そのせいで荷物の量は少ないために、一日三回の輸送となるのだ。


「肉食獣は出たか?」


 オレがいることで姿を見せなくなったが、オレのいないところには出ている。数人で走るゼルム族はいい獲物だ。


「はい。狼が出ました。倒しておいたのでレオガルド様のオヤツにしてください」


 輸送隊は弓矢を使い、途中には避難小屋兼矢の補給所を作ってある。狼くらいでは輸送の邪魔にはならんか。


 せっかくなので周辺の見回りついでにいただくことにする。


「狼はすぐ増えるよな」


 ってか、なに食ってんだろう? 小動物がいるのか?


 草食獣はオレの気配を遠くからでも感じられるのか、見ることはなかなかない。ウサギがいるの、ゼルム族と出会ったときに知ったくらいだしな。


 夏の暑い日に塩作りをこなし、そろそろ夏が終わりそうなとき、警戒の笛が鳴り響いた。なんだ?


「レオガルド様! マイアナの戦艦です!」


 畑にしようとしたところにデカい岩があったので、それを取り除こうとしてたら人間の男が駆けてきた。


「数は?」


「視界には一隻です!」


 一隻? 探索しにきたのか?


「ゼルム族がきたらコルモアに走らせろ。他は仕事を中断。姿を隠せ」


 そう指示を出して海に向かった。


「レオガルド様、あそこです」


 望遠鏡を覗いていた人間の男が戦艦がいる方向を指差した。


 オレの視力ではまだ豆粒だ。望遠鏡を使ってるとは言え、よくわかるな。なんか特徴があるのか?


「マイアナは金糸を使った旗を使いますので、大陽の光に反射するんです」


 光に反射する金糸って、どんな素材だ? まさか本物の金を使ってるとかか?


「こちらに向かってきてますね」


 あちらからは塩の壁で光が反射しているのだろう。


「大砲は見えるか?」


「まだわかりませんが、帆の数からして戦艦なのは間違いありません」


 一隻ってのが謎だが、こちらに向かっているのは確か。フレンズな獣人には森に隠れてもらい、人間に崖に立ってもらう。オレは木の枝を被せてもらい迷彩する。


 戦艦は徐々にこちらへと近づいてくる。


 オレの視力でもわかるくらい近づき、戦艦の全体がわかった。


「大砲が届く距離に入りました」


 戦艦が右に旋回し始め、たくさんの大砲がこちらを向いた。


 ……人間の行動は判を押したように同じだな……。


 次々と大砲が火を噴いた。ハイ、お前ら死刑決定です。


 被せてある木を払い、風を吹かせて大砲の弾を絡め取っていただいた。


 次を撃つために旋回し、こちらを向いたら撃ってきた。


「大盤振る舞いでなによりだ」


 鉄はいくらあっても困らない。じゃんじゃん撃てや。


 なんて都合よくはない。効かないとわかるやいなや戦艦は畳んだ帆を広げて逃げの態勢に入った。


「船乗りだったヤツはいるか?」


 人間たちに問うと、六人が手を挙げた。


 そう重そうでない三十半ばくらいのを二人選び、謎触手で腹に絡める。


「目を瞑っていろ!」


 崖から飛び出し、風を操って海を駆けた。


 あっと言う間に戦艦に近づき、甲板にいるヤツらに向けてプチサンダーを放った。


 何人かが黒焦げになり、広い場所に着地(着艦か?)。プチサンダーから逃れられたヤツらに弱い雷を放って気絶させた。


「抵抗する者は殺す! 従わない者も殺す! 十数える間に決めろ」


 一、二、三と数えていき、八で艦長らしき男が出てきて降伏することを宣言した。


「戦艦を岸に移動させろ」


 そう命じさせ、簡易的に造った桟橋に接岸させた。


「もう一度言う。抵抗する者は殺す。従わない者も殺す。命乞いは聞かない。覚えておけ」


 フレンズな獣人を呼んでこさせ、戦艦の乗員を降ろした。

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