第41話 卵
ニワトリの化け物を咥えてなんとか第五要塞へと戻ってきた。
「ハァ~。さすがに疲れた」
サイズ的にはオレと同じくらいなのに、なぜか重いときやがった。こいつ、石でも腹に入れてんのか?
「レオガルド様、怪我はないか?」
「そこそこに強かったが、怪我はない。ただ、持ってくるまで疲れた。ドーガ。こいつを解体してくれ。心臓以外は好きにしていい」
実はオレ、心臓が好物なんだよね。血の濃さや食感がいいんだよ。
「わかった」
「オレは水を飲んでくる」
激闘ではなかったが、初めてのモンスターに緊張したせいか喉がカラカラだ。この体、汗とかかかないのにな。
「ミドに注意してくれ」
あ、白いワニがいるんだったな。旨かったらオヤツにいただくか。
二分も走ると湿地帯に出て、綺麗な水があるところを探す。オレの胃なら泥水でも平気だが、飲むのならやっぱり綺麗に澄んだ水がいいんだよ。
「う~ん。濁ってるな~」
流れが緩やかなせいか、どこも茶色に濁っている。
しばらく探していると、ミドがいた。
「白いだけで完全にワニだな」
つーか、白って目立つんじゃね? こいつらどうやって捕食してんだ?
オレが近づくとミドは逃げていく。捕食者じゃなくて捕食されるほうか?
「ん?」
なんか足に噛みついてくるものがいる。なんだ?
前足から弱い雷を放つと、ニシキヘビだかヤツメウナギだかっぽいのが浮いてきた。
「なにもないかと思ったが、平原も命に溢れてるんだな」
せっかくなので食ってみる。
「悪くはないが、ちょっと泥臭いな」
泥抜きしたら旨いかもしれんが、そこまで食いたいものではない。これを食うならミドットリー島にいってリバットを食ったほうがいいな。
すべてを平らげ、その場で水を飲んで第五要塞へと戻った。
「もう解体したのか」
戻ったらすでにニワトリの化け物は解体され、なんかの草の上に心臓が置かれていた。
「ドーガ。落ち着いたら湿地帯から水を引くようにしろ。水が流れたら畑も作れるからな」
「長老たちに話してみる」
レオノール国に入りたいと言ってたが、混ざるまでには時間がかかる。それまでにフレンズな獣人たちで頑張ってもらおう。
「あいつの心臓か。なかなかデカいな」
新鮮なうちに心臓へとかぶりつき、濃厚な血の味と脳が痺れるくらいの旨さに感動してしまった。
……これは火竜の心臓を食ったとき以来だな……。
あっと言う間に平らげてしまい、物足りなさに悲しくなってしまう。殺さず増やせばよかったかな?
あ、ニワトリの化け物ほどではないが、似たようなのがいたな。ここまで旨くなくてもそこそこに旨いはずだ。
すぐにでも駆け出したい気持ちを抑えつけ、第五要塞でゼルたちの指揮をする。ゼルたちにはたくさん経験して欲しいからな。
「どうもバルバの統率が崩れているように思う」
五日くらいしたとき、夕食の席でゼルがそんなことを口にした。
「はっきりそうだとは言えないか」
「ああ。まだ気のせいレベルだ。集団で動いてはいるが、なんだか知能が落ちたように見えるのだ」
元々知能があるようなモンスターではなかった。もしかするとニワトリの化け物が統率してたかもしれんな。特殊能力を持っていたっぽいし。
「なら、明日はオレも出る。あと、できることなら番か卵を持ち帰りたいな」
「バルバを飼うのか?」
「ああ。保護区にも放ちたいな」
バルバが鳥なら卵を産むはずだ。卵が食べられたら料理のレパートリーも増えるはずだ。オレは食えんけど。
次の日になり、ミロアーを朝飯にしてからゼルたちを連れて出発した。あと、ヤトアもついてきた。
霊装術で体を強化することを覚えたようで、ゼルたちの走りについてこられている。Aランクのモンスターと戦える日もそう遠くはなさそうだ。
半日も走ると、バルバの群れを発見。オレの目で捉えられる距離から観察する。
「ゼル。食料は何日分持ってきた?」
「三日分だ。ただ、水はそれほどない」
ゼルム族も水を結構飲む種族だ。下半身につけた水袋では一日半、ってくらいだろう。樽をもっと作らせるか。
いや、そうなると人材が必要か。ゴゴールからも職人を募らせるか?
「レオガルド様?」
「すまん。考え事をしていた」
それはあと。今はバルバだ。
夕方近くまでバルバを観察してたら運よく湧水が出ている場所を発見できた。
「あの山から流れてくるのか?」
五、六十キロ先にキリマンジャロっぽい山が見える。この平原、地下水が豊富なのかもしれないな。
「ここを拠点にしてバルバを観察するぞ」
バルバもよく水を飲んでいる。ってことは、他にも湧水が出てるところがありそうだ。
三人一組にして四方を探らせると、一組がバルバの卵を見つけてきた。
ゼルム族が抱えるところからしてラグビーボールよりデカい感じだ。
「巣はあちらこちらにあり、一ヶ所に卵が二つから四つはありました」
オレも見にいくと、すり鉢状に穴が掘られ、そこに卵が置いてあった。
「つきっきりで卵を温めるわけではないのか?」
一旦下がり、ヤトアに草を纏わせて見張らせ、次の日、ヤトアが拠点に戻ってきた。
「夜には戻ってきて、朝になるとどこかへいってしまったぞ」
やはりつきっきりで卵を温めるわけではないようだ。暖かくなったら産む、って感じかな?
「一度、戻って卵を持ち帰る用意をするぞ」
いつ孵化するかわからない。即決即断で第五要塞へと戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます