第28話 拠点兼避難所

 バルバを狩る。


 言葉にすれば簡単だが、実行するとなるとやるべきことは多々ある。


 まあ、オレが単独でやるなら三日もあれば狩り尽くせるが、これは銃士隊の訓練であり、フレンズな獣人たちに銃を見せつける機会でもある。手間はかかってもやらなくてはならないことなのだ。


「まず、平原を調べる。どこになにがあるか、なにが住んでるか、水場はどこか、区画エリアごとに調べていく」


 区画エリアの概念はここにくる間に教えた。村も区画エリア分して少しずつ教えた。


 いろいろ概念を教えるのはマジ大変。小さい頃からの教育が大切だと痛感させられたよ。


「三人一組で探れ。もし、一人が倒れたらすぐに下がること。昼には三チームが集まり、また調査。大陽が暮れる前にまた集まる。これを何日かやって、反省点を話し合う」


「あ、あの、それはなぜするのでしょうか?」


 わからないことは聞け。わからないままにするなと教えてある。


「いずれお前たちは隊を率いてもらう。つまり、何人もの部下を連れて戦うことになる。だから、今から隊を率いる勉強をする。上の立場から、下の立場から、よく学べ。あと、これは敵を知る行動であり行為だ。感情のまま戦うのは獣の所業だ。知恵がある人なら頭を使って戦え」


 獣のオレが言うのもなんだが、獣だからこそ知恵の大切さを説けると思う。知恵と知識でゼルム族を率いているのだからな。


「おれたちはもうレオノールの民だ。森を駆ける獣ではない。知恵と知識を持つ人だと忘れるな」


 レオノールの民となったら人と括る。種としてゼルム、人間、ベイガーと分類すると決めて、もし、種として侮辱したら罪とするとしたのだ。


 こう言うことは最初から決めて、守らせるほうがいい。差別は本当に厄介だからな。


 ゼルが選んだだけあり、全員が納得の頷きをする。


 まず少数に地位と名誉、そして誇りを与える。まだ力がすべてな考えが残るこいつらを従えさせるには軍方式がいいだろう。


「ゼルは全体を見ろ。もうお前は武力ではなく部下を正しく見て、正しく判断して、その成果を与える立場になるんだからな」


「わかってはいるが、戦えないのは寂しいな……」


「王が直接戦う状況になるのはお前が無能だからだ。お前たちも王に戦わせるなど恥だと思え。それは自分たちが無能だったからなったことなんだとな」


 民主主義を教えるより君主制にしたほうが馴染みやすいとは言え、やろうとするとなかなか大変である。


 まず武勲を上げさせて纏めるしかない。やることいっぱいで萎えそうだけどよ。


「無理して上手くやろうとするな。失敗するのも強くなる糧だ。死なないのなら恐れず失敗しろ。他は支えてやれ。一人は皆のために。皆は一人のために。王は民のために。これを忘れるな」


 ラグビーでも教えて団体戦を学ばせたいが、種族的体格差を解決できないから却下しました。


「よし。いけ!」


 三組平原へと駆けていった。


「ゼルはこの辺の草を刈れ。地図を作る」


 紙はあるが、まだ地図を小さく描き写せるほどの技量はない。まずは大きく描いて学ばせよう。しばらく雨が降りませんように。


 昼に三組が帰ってきて一メートル×一メートルのマスを一区画とし、主要なものを描かせる。が、これと言ったものはないようだ。


 まあ、これは練習なので四日続け、なにもないので三キロ四方を調べられた。


「バルバは襲ってきたか?」


「いえ、遠くにいるのは見えましたが、近づいてくることはありませんでした」


「そうか。なら、拠点を半日いったところに移す。ドーガ、用意していたものは揃えられたか?」


「ああ。用意できた。人数も揃っている」


 木を担いだ男や鎧竜の鱗スコップを担いだ男たちが四十人ほど引き連れて半日進んだところへと向かった。


「ここを拠点兼避難所を造る。まず見張り櫓を建てろ」


 今回、バルバを追い払ってもまたバルバがくるかもしれない。そうなったときの備えとして半日で移動できる場所に拠点兼避難所を造ることを指示したのだ。


 必要か? と疑問に思うフレンズな獣人たちが多かったが、報酬としてバルバを狩ってくることを約束したら四十人も集まってしまった。


 バルバの肉はフレンズな獣人たちの舌に合ったのか、女子どもまで集まってしまって苦労したとドーガが言っていたっけ。


 オレは魔除けよろしく土を盛ったところで眠り、暗くなったら狩りへと出る。


 十キロほど駆けると、バルバが団子になって眠っていた。


 そこに雷を落としたいのを我慢し、静かに忍びよって一匹だけを狩って颯爽と離脱した。


 後方でギャーギャー騒いでいるが、追ってくる様子はない。これで逃げていかないといいんだかな。


 拠点へと戻ると、フレンズな獣人たちが腹を空かせており、見事な連携でバルバを解体し、火で焼いてあっと言う間に食い尽くしてしまった。ベイガー族並みに大食漢なヤツらだよ。


 ちなみに、ゼルたちは持参したゴノ粉でパンを焼き、フレンズな獣人たちが採った山芋や川魚を食っています。


 五日で拠点が完成し、さらに半日移動したところに拠点を造り始めた。


 平原の地形も大体わかってきて、水場もいくつか発見できた。


「ドーガ。コノスノが採れるのはまだ先か?」


「ああ。もう一日進んだところから生り始める」


 ってことは最低でもあと二つは必要か。なんか今年中に終わりそうにないかもな。そうなったらオレが追い払って来年また再開するか。ハァ~。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る