第15話 侵略
村を長期に空けるときはやることがある。
大森林にはモンスターが跋扈している。ちなみにオレサイズのをモンスターと呼び、オレより一回り小さいのは獣と称してます。
……人間たちにしたらそこら辺にいる熊もモンスターだろうがな……。
で、だ。オレに勝てるモンスターはまだ会ったことはないが、オレの縄張りを狙うモンスターはそこそこいたりする。
だからたまに見回りして、近づいたら半殺しにして追い払い、ここはオレの縄張りじゃボケー! を教えている。
ただ、小さい獣は見逃している。まだ畜産ができないので狩りで肉を調達してるからだ。
小さい獣ならゼルム族が蹴散らせるが、群れる獣は厄介なので、親をぶっ殺して群れとしての体を崩しておくのだ。こうすると長期的に村を空けても大丈夫になるのだ。
よくくる頭が金色の毛で覆われている狼のボスを倒し、村に持ち帰ると、コルモアの町へいく準備ができていた。
ギギを背に乗せる。
「これよりコルモアの町へ出発します! レオノール国を築くために!」
ギギの宣言でコルモアの町を侵略するために向かう人間たちが吠えた。
帰りたいと騒いでいたが、軍人たちの支配よりオレらのほうがマシと判断し、レオノール国建国を支持した。
建国は建国で面倒事が増えるんだろうが、建国するなら早いほうがいい。纏まりのないところを攻められるほうがもっと面倒だろうからな。
コルモアの町にいくのは軍人だった者とコルモアの町にいた者。ゼルム族は二十人ばかり。ギギの世話役として娼婦だった女二人だ。
「あとは頼むぞ」
長老格とゼルが選んだ代理村長に言いつけ出発した。
今の季節は春の終わり。夏になる前にはコルモアの町について、秋になる前には終わらせたいものだ。
オレがいるので三十日はかかるところを十八日で到着できた。
と言っても歩いて半日のところで仮拠点を作り、二日ほど休む。その間な一旦村へと戻り、周辺を見回り、新たにやってきたデカい灰色熊をいただいてからまた戻った。
「コルモアの町はどんなもんだ?」
偵察に出ていたセオルに尋ねる。
「酷いものです。あそこにいたらと思うと吐き気がしてくる……」
どう酷いかは訊かないでおく。ここにはギギもいるしな。
「抵抗する軍人は殺すが、なるべくなら生け捕りにして、罪がある者は罰する。いいな?」
「はい。問題ありません」
セオルの頷きに他の者も同意の頷きをした。
決行は夜。コルモアの町の近くでオレが最大に吠えた。
コルモアの町が火がついたように騒がしくなるのを感じる。だが、すぐには突入したりはせず、日の出とともにセオルたちに突入させた。
ゼルム族には逃亡者を捕まえることを任せ、恨みが残らないようにする。
制圧はお昼前に終了した。
まあ、ミドロアたちや戻した者らによる離反行動の結果。軍人が二百人いようとこんなものだろうよ。
「死者は二十人。こちらに死者はいません」
まずまずの戦果だな。
オレもコルモアの町へと入った。ギギを乗せ、威風堂々と。
「……酷い……」
見せたくはなかったが、コルモアの町の者にギギを知らしめる必要がある。堪えてくれよ。
軍人たちがバカをやったようで、縛り首になった町の者が何人も見せしめに掲げられていた。
「早く下ろして葬ってあげてください」
ギギの指示で死者を下ろされ、家族と思われる者たちが駆け寄ってきた。
「死者は丁寧に葬ってやれ」
貴重な人手を殺しやがって。
「ギギ。皆に食事を与えてやれ」
慈愛はギギに任せ、セオルたちを連れて軍人を纏めた場所へと向かった。
「裏切り者が!」
て叫んだヤツに雷を落としてやる。周りにいた者も死んでしまったが、まあ、必要な犠牲。そいつの近くにいたことを呪え。
「他に言う者はいるか?」
威圧すると、軍人たちは押し黙った。素直でよろしい。
「コルモアの町はレオノール国が侵略した。従えぬ者は死ね。従える者は生かしてやる」
「一度しか言わぬ。従える者は立て!」
セオルの怒号にも似た命令にすぐ立ったのは全体の八割くらい。二割はふてぶてしい顔を見せていた。
立った者を移動させ、未だに座る者を処刑することに決めた。
「こんなことして済むと思うなよ! ミドガリア帝国の力をもってすればお前らなど皆殺しだ! そうなりたくなければ我らを今すぐ解放しろ!」
なんて騒ぐバカはガン無視。バカどもを張りつけにしてやる。
リンチなど野蛮な行為ではあるが、コルモアの町の者の不満を溜めておかせるのも困る。バカどもには捌け口となってもらうか。
町の者らに話を聞き、従うことを示したヤツらの中からも罪を冒した者を探し出し、そいつらも張りつけにしてやる。
合計六十八人とか、軍人が腐ると酷いことになるんだな。
「セオル。今まで楽をした分、町の者に貢献させろ。従順な者には酒を出してやっても構わない。レオノール国軍として鍛え直せ」
「わかりました」
軍人どもはセオルに任せ、町へと戻る途中で、ゼルたちが初老の男と部下らしき男たちをお縄にしてきた。
「レオガルド様。逃げた者を捕まえた」
「放せ! 獣どもが! わたしを誰だと思っている! わたしは、ミドガリア皇帝より任命されたロンズ提督だぞ! こんなことをして許されると思うなよ!」
それが通じると本気で思っているのか? バカなの? 死ぬの?
まあ、結果殺すんだけど、こんなバカを送り出すミドガリア帝国はなにを考えているんだか? バカを島流しにしてるとしか思えんよ。
「とりあえず、殴って黙らせろ。このバカの声などギギに聞かせたくない」
ゼルに殴られ沈黙するバカを引きずって町へと戻った。
炊き出しが行われ、町の者らが一心不乱に食っている。こりゃ、食料不足に陥ってんな……。
「ミドロア。至急、食料の貯蔵や家畜の数を調べろ」
「わ、わかりました。至急調べます!」
あまり芳しくない答えが返ってきそうだが、やらないわけにはいかない。食料不足で暴動なんてゴメンだからな。
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