十九想 結局自分のことを話しちゃった

「あぶなっ」


 足が滑ってこけるとこだった。

 森の中だから足をちゃんと土に着けないと、足を痛めたりぐねったりする。


 今は何度も通ってる道だからずいぶんと慣れてはいるけれど。

 それでも転びかけたり倒れたり、根っこに引っ掛けたり。

 バリエーション豊かなこけ方があるのは変わらない。


 雨が降ってると普通は地面が水にぬれて滑りやすくなるけど、

ここロウレストでは木がとてつもなく大きくて光が全然入ってこないくらいに、

枝とか葉っぱが天井を埋め尽くしてるから、雨だって入ってこない。


 木の幹はぬれてるから雨が降ってるかはわかるけど、

時間帯は全くわからない。


 なのに割と普通に歩けてるのは考えてみたらおかしいね。

 だってずっと暗いってことだから足元が普通に見えるのはおかしい。


 あ、あれ?

 私ランタンとか持ってないよね?

 ・

 ・

 ・

 ない…ね。


 …当たり前のことなのに気付いてなかった。

 いつもライトを消してからコリレとしてるはず。

 でも顔は普通に見えてたんだった。


 コリレの方は私の顔が見えてたのかなぁ。

 …じゃないそれの次くらいに大事なことある!


 つまり…私は地球にいた人間とは全然違うってことになるよね?!


 元々褐色がつかない黒い髪と目で残機なしリスポーンがあっただけなのに…。

 いやそれでも十分人間味ないな、特に残機なしリスポーンとか。


 それでもぱっと見は人間だった、うん。


 だったのに、多分目を解剖したら地球人とかなり違う部分が出てくるんじゃない?

 今度やってもらお。

 私も気になるし、片目だったら見えなくなったりしてないからね。


 あとは私が周りからどう見られているかだよね。

 ジルママなら何か知ってるかもしれないから聞くとして、

コリレにも聞こう、夜はいつも暗くしてからだから絶対見てるはず。


 今まで教えてくれなかったのも普通を知らなかったからで十分片付くし。

 …コリレと夜を過ごしたことあるのって私だけか。

 くくっ。

 なんかうれしいかも。


 コリレとジルママに聞くことがまた増えた気もするけど気にもとめたくない。

 説明しようとしたらなぜか疑問が増えただけだし。


 急に私の体に疑問を持っちゃったけど、

さっきまでは世代の話をしてたから戻そっか。


 第一世代の話はしたから次は第二世代。

 私たちの世代で、神様たちの孫の世代。


 第一世代と比べたらひどく脆くて弱い。

 自分のことだからそのくらいはわかってる。

 私は下の世代よりも脆いんだけどね!


 でも勝てないわけじゃない。

 第二世代が第一世代に教えてもらってるときに、

たま~に勝ったり一部の能力が第一世代よりも突出していたり、

すごく頑張って第一世代を追い抜くことがある。


 私は師匠の鎧を壊すので精一杯。

 向こうは私を殺さないよう、本気で戦ってないのに。


 戦い方はだいぶ似てるから知れることも多いよ。

 あっちは私の完全上位互換だから真似できないことだって多いけどね。


 うん、第二世代に教えてる第一世代はだいたいがその第二世代の上位互換。

 そもそも師弟とか先生と生徒みたいになるのは元々親子のときがほとんどだし。

 上位互換になるのはこの世界では当然といえば当然。

 私が珍しいだけ。


 それに第一世代と同じで第二世代もそんなに暴れるようなのはいない。

 私が第二世代の中ではかなりの問題児扱いだし。


 あと自分の親から神様たちのことを聞いてるのもあると思うよ。

 神様たちはいい祖父母に見えるらしくて。

 問題を起こすこともあるけど、神様とか親以外の第一世代とかに𠮟られると、

すぐに止める。


 問題を起こすのも産まれて15年、20年くらいの子が多い。

 つまり思春期みたいなものだね。


 私が派遣されることもあるけど。

 痛みとか人を殺した時の恐怖とか死へ近づいた時の感覚とかを、

覚えさせるために派遣されることがほとんど。


 私は死んだとしても問題ないからって酷いよね。

 流石にサンドバックにはならない程度の手加減にするけどさぁ。


 第一、第二世代は平和な性格だからさっき言ったことを感じさせれば収められる。

 本来ならおしおきはするべきじゃないって思っちゃうんだけど。

 悪いことをしたのなら罰は与えないといけない。

 神様たちのようなになってしまう前に、ね。



 ついでに第三世代の説明もしようか。

 第三世代は……問題のある子が多いイメージがあるな。


 そもそも第二世代よりも数が多いから当たり前に見えるけど。

 さっき言ったみたいに第二世代にはやんちゃな子はいても悪人はいない。


 だけど第三世代は悪い生き方しかできない子も出てくる。

 私はそういう子を鎮圧するのが主な役目。


 今まで第三世代の子は七人を殺して。

 一人ロウレストへ誘拐した。


 それに第一、第二世代の中にも数人殺したり誘拐するしかなかった子もいる。

 種族の問題でそうなってくる子もいる。


 殺した子はみんなその場で埋めたよ。

 中には今の私よりも年齢が上の子だっていたんだ。

 全員私の手で…。


 っと、ちょっとだけ怖い話になっちゃったね。

 コリレがいたら引き倒してたかも。

 今行ってる森衛所には誘拐した子も何人かいるからその時に紹介するね。



 スキルの話とか魔法の話もしたいけどもうすぐ着きそうだから、

ロウレストのちょっとした話をしておこう!


 ほんとにちょっとした話を二つくらい。


 一つ目はロウレストの特徴、

まず広さだけど…。

 えー、確か…700kmくらいだったはず。

 あ、平方忘れてた。


 700平方kmくらいの広さらしい。

 神様に聞いただけだから、うろ覚えだけど。

 確かにロウレストを11時ごろから私の最高速度で走ったとしても、

空が見えるようになったときには無白が高いところにあるし。

 広いのはわかる、端から端までってなったら3日くらいかかりそうだもん。


 他にはさっき言ったようにずっと暗いってこととか。

 木がとっても高くて、見上げても木の一番上が暗くて見えないこととか。

 ロウレスト自体の特徴はこんなものかな。


 あ、もう一つあった。

 ここにある全部の木に火が付かないってこと。


 どういうことかはあんまりわからないけど、火を付けると爆発するらしい。

 付けた人は大けがを負って、爆発した周囲の木も少しへこんでたりしてはいた。

 だけど火は完全に消えていたそうな。


 付けた人もわざとじゃなくてランタンを取り落としちゃったらしいけど。

 さんざんだね。


 で二つ目の話。

 それは食料のこと。


 前話したキノヒマク以外にもご飯があって、

木の実や木の幹とかを食べられる木がある。


 食べられる実がついている木の一つはヒオン。

 この木は10m以上の高さに実をつけてるからある程度木登りができないと、

実に触ることもできないし。


 実には口が付いていて、触ると嚙んでくる。

 嚙むといっても食虫植物みたいに食べるためじゃない、

ただ自衛のために牙が付いてるだけ。


 嚙んでくるのも枝から切り落とせば防げるんだけど、

ちゃんと落とした直後に掴まないと当然グチャってなる。

 10mだからね。


 サイズもりんご一個分くらいあるから。

 人が下にいても危険なだけ。

 重さはりんご以上あるし。


 おいしいんだけどね。

 生ではオレンジのような味がするお肉みたいで。

 焼くと焼きりんごみたいな食感になって甘くなる。


 …オレンジ味のお肉ってどうなんだろ。

 私はおいしく食べてるけど。

 おいしいからいっか、うん。


 木の幹食材はまた今度ね。

 明るくなってきたから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る