四想 欲求からは誰も逃げられない
「ごちそうさまでした」
「お粗末様でしたっと」
うん、やっぱりまじめだね。
食事中は一言も喋らない。
冷たいように感じるかもしれないけど。
たまには落ち着ける時間が欲しいから、その時間を食事中にとってるだけ。
あと、食べるものに感謝するため。
これは日本人特有のやつ。
コリレはそれにハマったってだけ。
狩る側からしたら獲物に感謝する余裕なんてないだろうけど。
コリレはあくまで消費者だから、その余裕がある。
感謝は余裕があるから出来ることなんだって思う。
何言ってんだろ私。
もっと簡単に言えばいいのに。
「先程の続きですが、私は貴女のことを想っています」
「うん、知ってる」
さっき言葉で伝わってるし、
身体にも聞いてる。
「ですので、今の私では身に余ると思い、少しでも心にゆとりを頂きたいのです」
「コリレ」
…これ言ったらさっきまでの話全部無駄になるけど。
「何でしょうか」
「本当に余裕、欲しい?」
「は、い」
声が途切れて、顔がちょっとひきつった。
今のは肯定じゃなくて疑問形。
言い方が怖くなっちゃったのもあった?
「余裕があるってことは…私は?」
ヤバい。
自分で言ってつらくなってきた。
それを想像するだけで。
「ごめん…ちょっとベッド行こう」
「…はい」
コリレもつらそう。
早くいきたい。
「ふう」
コーヒーは正直苦味しかなくておいしさとかは分からない。
だけど苦いからちょっとだけ目が覚める。
カフェインなんて即効性はないだろうからそんなもんでしょ、
知らないけど。
さっきのことだけど私とコリレはもう100年以上一緒に居る。
それでも不安定になることはある。
不安定にわざとすることすらある。
だってこの世界に来た頃から、
私達は二人ぼっちだから。
別に好きでもなかった時からずっと相手に頼ってる。
その頃は愛情なんて感じてなくて、
感じる余裕もなかったから。
今以上にドライで会話も少なかった。
ん?今も少ないじゃないかって?
くく、今は大体の言葉は言わなくてもなんとなく表情で分かるようになったから、
完ぺきではないけどね。
それはコリレも同じこと、
だけどさっきみたいに落ち着かなくなる時はよくある。
そういう時は声が聴きたくなるから、身体を重ねてる。
食欲も睡眠欲は人並み程度だと思うけど、
コリレに対する性欲は全然抑えられない。
コリレ以外にはなんとも思わないのに。
コリレの側にいるときだけおかしくなる。
それも気持ちいいから別にどうでもいいんだけどね。
でもどっちかが寝込むのだけは何とかしたい。
もう15時か。
コリレはしばらく寝てるだろうし、
今日は休みの日にしようかな。
本業の時は休めないから。
今のうちにだらけておこうか…、
いや、武器の手入れをしないと。
定期的に見て、いつの間にか錆びてた、なんてことはないように。
ちょうどいいから私の武器の説明でもしよ。
私は基本斧を使ってる。
普段は軽い手斧、木を切る用ね、人じゃない。
で仕事用、
あ、ライターのね。
いやライターの話もしてないな、
後でしないと。
ライターの話は一旦置いといて。
その仕事に使ってる斧だけど。
私がだいたい170cmなのに、
斧の全長は2mくらいある。
斧頭は80cm、刃もだいたい同じ。
握りも含めて全部鉄でできてるから、まあ重い。
私が使えるのなんて慣れてるからと、
種族的に力がちょい強めだからとしか言えない。
筋トレはちゃんとやってるけどね。
四日に一回くらい。
それでも背負って歩くのは大変。
ちなみに武器はクローゼットに置いてる。
服とか靴とかの身だしなみには私もコリレもあんまり気にしないから、
クローゼットはだいぶ空いてる。
予備の斧も六丁くらいある。
真空パック的なものに入れてるから錆びたりしない。
あ、それだけ斧があっても下着は気にしてるよ。
普通の服よりも気にしてるくらい。
それでも下着だから全然クローゼットが埋まらないけど、
まだ五分の一くらいしか埋まってないし。
っと話が逸れた、
ほんの少し話を戻して。
いつも武器の手入れをしてる場所だけど。
まぁ、それ用の場所なんてないからリビングで手入れしてる。
リビングは時計がある部屋なんだけど、家の中で二番目に使わない。
別にリビングはテレビとかが置いてるわけでもなく。
でかめのソファーが置いてあるだけで、ぐでる以外にやることがない。
正直二人で落ち着いた時間なんてそうそうないし、うん。
だからリビングで手入れをしてる。
オリーブオイルのにおいがするのは仕方ない。
リビングの床を汚さないようにレジャーシートのようなものを敷くよ。
このレジャーシートはある魚のすり身を固めて、
それを平たく伸ばして熱したら出来る。
これは食べれない。
そんなことは
手入れの手順、
って言っても家だと割とてきとーにやってる。
やることもそんなにないし。
アルカリ性の洗剤をかけて、乾燥しないようにラップっぽいやつをかけて。
ラップはこの世界の山羊みたいな生き物の乳で作るチーズのようなものを
薄くスライスしてできる。
これは食べれる。
で、五分くらいしたら水で流して。
斧を傷つけない位の柔らかさの羊毛で水気を取って。
後はタオル使って全体にオリーブオイルを塗る。
全部金属製だから握りも含めて塗って終わり。
後片付けしながらこの斧の話をしようか。
一人妄想だけどこれを説明するのが楽しみ。
ライターとしての仕事では愛用してるからね。
さっきも言った通り、斧の全長は2mあるんだけど。
その真ん中あたりにナックルガードが付いてて、
割と見た目でわかりやすくなってる。
ここを片手で握る。
これからはガードって呼ぶようにするよ。
もう片方の手は握りの一番下からくらいの所まで私が包帯で巻いてて、
そこを握ってる。
この部分はグリップって呼んでる。
何の構えもしてないときは左手でグリップ、右手でガードを持って、
斧を腰辺りに持ってきてちょっと力を抜く。
戦闘態勢ではあってもあんまり仕事に集中してないときはこの姿勢。
ちゃんと構える時はあるけど大体本業の時にするから今は置いておく。
戦ってないときの持ち方だけど、背中に置いてるよ。
背負い方は、頑丈なリュックみたいなものがあってそこに斧頭を入れて、
そのリュックを
斧を入れるときは耐刃性の高い布っぽいものを使うようにしてる。
この布は触感が柔らかくて指が沈み込むくらい。
なのに水はほとんど吸わなくて熱にも強い。
刃だとスライドさせれば切れるけど巻く程度では切れたりもしない。
このもちもちした布はある砂を溶かしたものを薄く延ばして乾燥させてできる。
いろんな用途があって、
うちのベットのマットレスにある皮みたいなのにも使われてたり。
これほんと癖になる触り心地でたまに斧を片付け忘れることが…っと。
話が逸れた。
これを使って斧を収納してる、流石に使いまわすけど。
背負ってると斧頭の下あたりが首の上辺りにきて怖かったり。
それが原因で一回首切れたことあるしね。
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