二想 自然な家にも程がある
「私は帰ってきたぁ!」
毎回毎回大変なんだよね。
いや、帰るのは一瞬なんだけど、
その一瞬が怖くって、何十回気絶したか。
簡単に言うと某黒い球体の転送みたいなものなんだけど。
転送中にお腹を見たら、内臓が見えるんだよ。
そう中身が見えるの。
怖いよー。
しかも段々と位置が変わっていくし。
さらにね!
その消えていった部分の感覚が残ってるから混乱する、
今でもちょっと怖くてアトラクション感覚だもん。
でここは家の近くの木。
近所どころか真ん前にある。
そう、ここは木の内側。
すごいよね異世界、木の内側が空洞なんだよ。
流石に一畳くらいの部屋にしかならないけど。
樹齢約五十年の木だから大きいくらいだと思う。
ドアも設置してる、五年に一回くらいとり替えてるけど。
誰に説明してんの私。
「そろそろ出るか」
ワープくらみもなくなってきたし。
ちょうどいいでしょ。
んでこの目の前にある「木」が私たちの家、
私が今いる木と比べものにならないほど大きな木。
森の中でもかなり大きい方。
この木の話は長くなるからまた今度。
木の幹に同化してるドアなんてどうかしてるぜ、なんて。
しょうもな、やめとこ。
ここはちゃんとドアになってるから入れるよ。
「ただいまー」
ちなみにドアノブは無くて、幹にある穴に手を入れて開けるんだけど、
たまーに幼虫が居たりする、五十年前くらいに放した虫の子孫だね。
毒とかは持ってないから焼いたら食べれたりする。
推奨はしないけど生でも可。
嫁さんは食感がダメみたい、見た目は全然平気で、
成虫はむしろ美味しそうに食べてる。
うちは玄関があって、家では裸足で過ごしてる。
日本人スタイルだね。
「お帰りなさいませ、マスター」
「お迎えありがとう、【コリレ】」
私のかわいいお嫁さん。
髪は太ももまで伸びて私と違って全部真っ黒。
同じく目も黒い、日本人でもそういないほどの。
それに髪や目に相反するような白い肌、まあ外に出れないから当然だけど。
しかもとっても華奢で庇護欲が沸いて…。
もうほんっとにか”わ”い”い”な”あ”。
だから耳元で、
「今夜は寝かせないから」
って言っちゃった!キャッ。
「はい、ご随意に」
‘好きにして‘だってさ、今日は私が攻めでいいってこと。
夜が楽しみだねー、ククククク。
ご飯は大体和食。
私もコリレも何故か日本食が好きだから。
理由は知らない、なんかおいしいんだよ、うん。
嫁さんが作ってくれるご飯だからおいしいんだろうけどね。
「いただきます」
日本人なら言わないとね、とゆうか。
別にキリスト教でもお祈りはするから当たり前か。
「いただきます、マスター考え事はお食事の後にして頂けますか」
眉間にしわが寄ってる。
それでもかわいい。
「あ、ごめん」
すごい真面目。
コリレがいないと私は簡単に礼儀なんかを忘れてしまいそう、
私には絶対にいないといけない存在だね。
私たちは四つ足のテーブルで食べてる。
四十年前くらいはコリレがちゃぶ台と座布団を推してきてたけど正座が苦手だから断固拒否した。
コリレは黒髪黒目な大和撫子の見た目どうり、イメージどうりの日本かぶれだから大変だった。
あの時期はNINJAも好んでいたしかぶれ具合がすごかった。
文化を持って来た神様を何度しめようかと。
「マスター?」
「あ、はい」
失礼しました、二回目だ。
「ごちそうさまでした、おいしかった」
「お粗末様でした」
敬語は素だけどそれ以外の、お粗末様とかはかぶれた影響だったり。
元々は作った側もごちそうさまってしてた。
「ではマスター今日のご報告をお願いします」
「わかった」
お金の管理とかほとんどコリレに任せてる。
仕事が多いけど私がやると時間がかかりすぎるから適材適所ってやつ。
「今日もらったお金は銀貨三枚だよ」
「わかりました、ではしまっておきますね」
「うん、よろしく」
あ、行った。
今のうちにこの世界のお金に関して説明しなきゃ、
って誰に言ってんだろ。
なんか妄想が増えてる気がする。
まぁ、妄想だから何言ってもいっか。
気を取り直してお金の説明!
お金は…いや貨幣って言った方がいいかな。
貨幣は鉄貨、銅貨、青銅貨、銀貨と、円銅貨と円銀貨って言うのがあるけど。
今は銀貨の話をするね。
銀貨の価値はだいたい一○○○円。
お札じゃなくて硬貨なんだよ。
形は3cmの正方形。
円銅貨があるからわかってたと思うけど、この世界の貨幣は丸くないものが多いよ
ちなみに鉄貨はⅠインチっていうだいぶテキトーな規格だったりする。
あ、戻ってきた。
他の貨幣は近くにあって時間がある時に話すよ。
「マスター、何をしておられるのですか?」
「うん、ちょっと考え事をね」
テキトーが過ぎる返答になっちゃった。
「私はお風呂に入ってきます」
「うん、ベッドで待っといて」
「はい」
こういうやり取りは何百回とやってるけど未だにちょっとドキドキする。
いつまでも若い心を持っていたい。
もう百歳以上になるけど。
見た目は少女なんだけど!
まだ上がらないんだ、相変わらず長風呂だねえ。
「お先に上りました」
「うん、私も入る」
お風呂お風呂。
シャンプーは使ってる、めんどくさいけどコリレが怒るからね、
身だしなみに厳しい子だよ。
身体はだいぶテキトーに洗ってる。
こうやってると一緒に入るときに叱られるし遊ばれるけど。
しゅわぁ。
お風呂上りは…眠くなるなぁ、 どうせ眠気なんて吹き飛ぶし。
吹き飛ばすけど、頑張って。
髪はちゃんと乾かさないと怒られる。
六十回は怒られた。
私の髪はそんなに長くなくて肩にかからないくらい。
一束だけ腰あたりまで伸ばしてる。
コリレは私と比べてかなり長くて太ももくらいまでで、
いつも髪が水のように広がっていって、いいにおいがする。
お風呂から寝室はだいたい正面にあって。
すぐに着く。
さっき時計は35時くらいを指してたかな。
待ってくれてるから入ろう。
コリレはちょっとうとうとしてる。
否が応でも起こすけど。
「コリレ、いくよ」
「はい、【ロヴィリス】」
する時は私の名前を呼んでくれる。
じゃ、いただきます。
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