第6話 桃太郎 その6
一晩中ずっとモヤモヤした気持ちのまま朝を迎えた桃太郎は家の者に何も告げず山の頂上まで一気に駆け登りました。
いつものひらけた場所に立つとグルリと周りを見廻し、遠くまで響くように長く長く指笛を吹きました。
2度、3度。長さを変え指笛を吹きます。
動物達への緊急の合図です。
鳥やイノシシ、犬、いろんな種類の動物達が続々と集まってきます。
「珍しいの。桃太郎。何事じゃ」
イノシシが話しかけます。動物達の長老ともいわれる立場の者です。
「みんなにどうしても考えて欲しいことがあるんじゃ。マジメに考えて答えをワシにくれ」
いつもと違い神妙な顔の桃太郎に動物達はただならぬものを感じとり、一気に静かになりました。
「先に謝っちょく。お前らを巻き込むことになることを。そうしてな、こういう話しなんじゃが」
桃太郎は昨夜おじい達から聞いた話しを動物達に話し始めました。
「という話しじゃ。すぐに答えてくれとは言わん。難しいことじゃからな。そうだなぁ………。2回目の朝日が昇ったときにまた集まろう」
動物達がそれぞれの場所に帰ってしまったあとも桃太郎はずっとそこに座っていました。自分が知っている鬼達と聞いた話しの中の鬼達。どっちが本当の姿なのか。
遠くの島に住んでいるという鬼達。
異形の姿故にそう思われるのか。
「なんで自分でしねえんだよ」
クソっと悪態をついて立ち上がりました。
「こういうことだけ、なんだよな」
桃太郎もまた、生い立ち故に鬼同様忌み嫌われる存在だと気づいていたのでした。
「鬼同士で喧嘩しろってか。ムカつく」
否応なく2日のちには答えが出ます。
さて、どうなりますやら。
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