いつか

@aoi_setouchi

第1話 ブルー・ホリデイ

 ゆり子は、次の日が仕事の休日は決まって憂鬱になる。整体を受けながら、ほぐされる心地よさとともに体は無理をしていることを実感する。いつも、体はおきざりだ。心は無理をする。ああ、このまま家に帰らずに、ブルゾンとマフラー、スマホとイヤホンだけをもってどこか、どこか遠くへ行きたい。目を瞑って、思い描く。この部屋を出て、商店街を早足で通り過ぎて西荻窪駅から東京駅へ。それから、夜7時くらいだと、どこまで遠くへ新幹線で行けるだろうか。これまでの、自分を置いて知らない土地で、しばらくぼうっとしていたい。今まで、逃げるタイミングはあったのに、逃げなかった後悔が押し寄せてくる。

 そんな思いが、ぐるぐる。 

「お疲れ様でした。お体の感じいかがですか。緊張の強い方ではないですか。力の抜き方を覚えられると少し楽になるかもしれませんね。」

 そんな言葉とともに、整体を終える。整体後は、デトックスのハーブティー。薬草の味がするブレンドのハーブティーは、緩くなった体に染みる。 

「ありがとうございました。会計はカードで。」そう言ってゆり子は、カードで支払いをすませる。口コミ投稿分の割引がされていないことがちらっと頭をかすめるも、それを口にできるような人間ではない。

 会計を終えて部屋をでる。夜風がしみる。家までは、徒歩二分。あえて遠回りの商店街を通る。このまま商店街を行けばすぐそこは西荻窪駅、遠くに行ける。だけど、ゆり子はそんなことできないのだ。そんなことができるのなら、今こんなとこにいないのだ。

 少し時期外れの寂れた青い色のイルミネーションを見ながらゆり子は家路に着く。

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