第37話

「すんませーん!!誰かいますかー?」


俺は扉の前で大きな声で尋ねてみる

暫くするとヨボヨボの爺さんが出てきて


「どちら様かな?」


「俺ここの近くでギルドの依頼を受けて調査してたんが、日も暮れて野宿しようと思った矢先に、灯りが見えたんで一泊させてほしいなと思ってさ」


「なぁに、そんなのは問題ないじゃよ!どうせ『今』はワシ1人しか住んでおらんし、かまいはせんよ」


「ささ、お客人外は寒いだろうに、中に入って暖まりなされ」


俺は優しい老人の御好意で一泊させてもらえる事になった。


♦︎


ご飯も食べさせて貰ってひと段落ついたが、何かがおかしい、どう見てもこの老人が1人で住んでいた雰囲気ではない、考えるにもう1人一緒に住んでたようにも思える。


(まさか、こんな老人が盗賊でこの家の人をやって、住んでるとかないよな、、)


「あのー御老人、もしかしてこの家には実はもう1人住んでいませんでしたか?何か1人で住んでるのには何か変な感じがしまして」


俺の問いに老人は少し表情を落とし、静かに語った


「ワシはこの間まで、婆さんと2人で暮らしておった、そして最近畑を荒らす悪い狸がここら辺に縄張りを作って、困ってた所罠を設置して生捕に成功したのじゃよ!」


「そして、その数日後ワシが山に芝刈りに行こうととした時に晩飯は狸汁にしようと話して出て行って帰ってきた時には婆さんとはもう会えなかった・・・」


「あの狸は婆さんを騙し殺し、そのまま婆さんを汁の具材に、、その狸は変化の術を使い婆さんになりすましワシに婆さんを食べさせたのじゃよ、、、」


「それを食ったのを確かめた狸は正体を表し、事の顛末を話しその場を去って行った」


「ワシはあまりの悲しみに泣きじゃくって、婆さんを供養し、心が空っぽになってた時にお客人が来たのじゃよ」


「ワシはあの狸を許せない!婆さんと同じ目に合わせないとワシの心は晴れない!お客人!どうか頼む!あの狸を捕らえてワシの所まで連れてきてくれないか!」


老人の事情はわかった、ターゲットも狸って事で俺にもなんとかなりそうだな。


「一宿一飯のお礼はせんといかんから、頼まれよう!狸はどうであれ生きていれば問題ないよな?」


「もちろんじゃ!ワシの手であの狸にトドメを刺せれば問題はない!」


何という爺さんの執念!でも大切な人が騙されて殺され怒る気持ちはわからないわけでもない。

これは是が非でも狸を生捕りしなければ!


「トメよ!優しいお客人があのにっくき狸を捕まえてきてくれるじゃと!!!うおおおおおおおトーーーメーーー!!」


もう爺さんの中では俺が了承したって事なってるのね!わかった!爺さん俺に任せてくれ!

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