第11話
外は空から夕日が差し込んできており、辺りはだんだん薄暗くなってきた。
ゆめはゆうたの車に乗り、くるみの家に向かう。
「…くるみさんが大切にしていたぬいぐるみってどんなぬいぐるみだったんですか?」
「んー、あれは茶色いクマのぬいぐるみで、どこに行く時でも連れていっていたんだ。…あの時も下敷きになっていたみたいだから、きっと抱えて持っていたんだと思うよ。」
「…そうなんですかぁ…」
あれから三十分くらい経っただろうか、ゆうたの車がくるみの家に到着した。
家の敷地に車を停め、ゆうたとゆめは家に入り、くるみの部屋に向かった。
くるみの部屋。ドアを開けて中に入ると、壁やタンスなど桜色のものが多く、カーテンはハート柄で、ぬいぐるみもたくさんあり、いかにも女の子の部屋という感じの部屋だ。
ぬいぐるみが置いてある棚を見渡すと、こちらをずっと見ているような気配のするクマのぬいぐるみが一つだけある。
ゆめはそのぬいぐるみを抱きかかえ、話しかけてみることにした。
「クマちゃん、クマちゃん、ここにあるぬいぐるみの中で一番かわいいクマちゃんはだぁれぇ?…」
「…ぼくだよ!」
〘あっ、意外と簡単にしゃべったな。〙
「あっ、しゃべった。くるみが話しかけている時にしかしゃべったことがなかったのに…」
ゆうたは不思議そうに見ていた。
「くまちゃん、あなたのお名前は?」
「ぼくはくっぴー。」
「あなたは何でお話ができるの?」
「そんなの簡単さ。ぼくはくるみの守護霊だからね。」
「えぇーっ、しゅっ、しゅごれえぇー?」
「そうだよ。ぼくはいつでもくるみを見守ってきたんだ。そしてくるみに何か危ないことがある時はいつでもぼくが助けてきたんだ。」
「じゃあ、昨日の交通事故の時も?」
「ううん、あの時はぼく、下敷きになっていて動けなかったんだ。くるみは車に轢かれる前に、ビルの二階から落ちてしまって、それで落ちた時の衝撃を和らげようと思って、ぼくが下敷きになって助けようと思ったんだけど、思ったより落ちた時の衝撃が強くて、ぼくはくるみに潰されてしまって、車に轢かれる瞬間には動けなかったんだ…」
〘そういえば、ココが駆けつけた時には、くるみさんはまだ微かに息が残っていたって言っていたよね…二階から落ちたってことは、落とされた時はそんなにケガをしていなかったのかも…そして車に轢かれてケガをしてしまい死んでしまったってことか…〙
「ねぇ、ビルの二階から落ちたって言っていたけど、何で落ちてしまったの?」
「くるみは外で何かが光っているのを見つけて、レストランのバルコニーから、その光る何かを見ようと外に体を乗り出して見ていた時に、後ろから黒い体の人がくるみに駆け寄ってきていきなり突き落としたんだ。」
「えっ、レストランって、○○ビルの?」
「うん、くるみはお昼になると、あそこのレストランに毎日のように通っていたんだ。そして毎日光る何かを眺めていたんだ。」
〘…ってことは、くるみさんは、昨日のお昼時も○○ビル二階のレストランに居て、ベランダで光る何かを見ていた時に、黒い体の人に突き落とされたってこと?…〙
「ねぇ、光る何かって何だったの?」
「…んー、分かんない…でも、隣のビルの上の方から光っていたような気がするけど…」
〘…隣のビルの上の方?…光る物?…もしかして…ボン?さん…そんな訳無いかぁ…〙
「…そっかぁ…じゃあ、黒い体の人ってどんな感じの人だったか他に覚えてる?」
「…んー、…スラっとしていて背が高い感じだったような気がするけど…ぼくも一瞬だったから余り覚えてない…」
〘…体が黒くて、スラっとして背が高い人…そういえば、ココも同じような特徴の人をトイレから出ていくのを見たって言ってたよなぁ…〙
「顔とか見ていないの?」
「…んー、顔は覚えてないけど…髪の長い、女の人だったような…」
〘…髪の長い女性?…体が黒くて、背が高くて、スラっとしてて…んっ?もしかして…〙
「社長、もう一度○○ビルに戻ってもらうことってできますか?」
「えっ、良いけど、どうしたの?」
ゆめはくるみの部屋に置いてあるハートの形をした目覚まし時計に目を向け…
「社長、急いで!」
ゆめはくっぴーを抱えたまま、社長と慌てるようにして家から出て車に乗り込んだ。
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