第12話 環境管理課長神は見守りたい。
[幼い神々の対応について]
現在環境管理課において、幼い神々の活動には幾分かの配慮が不足していると思われる。
一つ、環境管理だけなら動物、魔物の管理だけで十分に現職の神々の役にたっている。にも関わらず、殺伐とした人種とのトラブル、ゴブリンなどの襲撃型モンスターの対応による心の歪み、トラウマが懸念されている。
実際に、既に四名の我らの癒しが休職に追い込まれている。もちろん、総数からすれば僅かな神数ではあるが、これが最大と言うわけではなく、さらに拡大する場合、最悪の事態にならぬように課長神には強く改善を要求する。
課長神は、陳情書の一項目に目を通しただけで、目頭を押さえ天を仰ぐ。最近、ストレスのせいか少し量が気になる登頂部の髪が、はらりと舞い机に落ち、更に悲壮感を醸し出す。
胃が痛い。項目は陳情書の厚さから見て、最低であと十項目はある。環境課のやつは不思議で、こう言う陳情書になると、やけに滑らかに意見してくる。会議では、反対意見を言わない癖に、決まったら決まったで陳情書が高く積み上げられる。
通称『赤神制度』、神の強制労働が決まってからは特にだ。そして、そのほとんどに幼い神々への対応改善が、盛り込まれる。しかも、第一項目に。
ため息を漏らしつつ、視線を少し離れた席の幼い神に送る。ニコニコと楽しみながら慣れない操作をしているところだった。
可愛い、癒される。うむ、気持ちはわかる。荒んだ心が洗われるようだ。
だが、神は必ず穢れを知ることになる。それが遅いか早いか、その違いはあれども。
神の成長速度はまちまちだ。数年の神も、数百年の神も、不変の神もいる。なにが違うかは気にした事がなかったために、未だわかってはいない。
そんな当たり前のことに神を割けるほど神は足りていないから、今後もわからないままであろう。
少年少女の神々を見回しながら観察していくと、一つの事に気づく。彼ら、彼女らの回りの神はやたらと一挙手一投足に目をやりながら、神速で作業をこなしているのだ。
ふと、業績表と照らし合わせてみると、幼い神々の近くの席ほど業績は高いが、始末書の数も増えているのだ。業績に至っては一番幼い神の席から離れた神の優に三倍になる。
改善、する必要ないな。むしろ、このままでいこう。ついでに幼い神々が入ってきたら遠い席の神の近くに配置をしよう。それがいい。
名付けて『オアシス拡張計画』とでも題して、他部署の課長神へも報告すべきか。いや、しかし、情報管理課はちょっとウチとは違うからなぁ。まぁ、先ずは数が揃ってコチラが満足レベルにまで到達してからでいいか。幼い神々の数は少ないし。
部下の諸君、君たちの奮闘で幼い神々を救ってくれたまえ。わたしはそれを望んでいる。
こうして、暗い笑みを浮かべ薄くなった頭頂を一撫でし作業に戻る。
後日、通称ロリ課として広く知れわたる事になるのは、一柱の神による独断から来たとは誰も気づかないままに。
今日も今日とて、幼い神々の見守り活動により、環境課の業務はなんとかこなされていくのであった。
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