第11話 美の女神はもてはやされたい。
おかしい。明らかにおかしい。私は美の女神として生まれてきた。つまりは、眉目秀麗で、自身のスタイルにも自信がある。
にも関わらず、環境課の男神達はこぞって幼い女神を見て朗らかな顔になるのだ。幼い男神に私はそんな顔をしたりはしない、一部の女神は同じような顔をしているが、あれは母性だろう。
対して私への対処は、誰も彼も変わらずに素っ気ないし、簡潔に終わる。幼い女神には長く話に付き合う男神がだ。
もしや、ロリコンなの? ここは環境課ではなく、ロリコン環境課なの? ロリの為のロリによる環境で作業を行う部署なの?
憎い! あの、珠のような肌、無垢な瞳、穢れを知らない身振り、無邪気な笑顔、全てが憎い!
私も生まれたときはそうだった。でも、私の頃はそんなに世界が多くなく、無邪気に遊んでいただけだった。
それはそれで、良かったけど。幼馴染みの男神達に言い寄られ、ちやほやされ、遊びで付き合っては捨てたり、とにかく、やりたい放題だった。
そう、昔を省みて女神は小さく嗤う。ちやほやされるのは今のうちだけよ。あと少ししたらあなただって他の女神、私と同様に見向きもされなくなるのよ。
そう、心で思うと幾分かは気が紛れた。
その、暗い笑顔と、過去のあれこれが起因して今の現状に至るとは自覚せずに。
「あの、この世界についてなんですけど」
思考から現実に引き戻され女神は、とにかく明るい笑顔で対応する。
「なにかしら? あぁ、その世界だったら、二酸化炭素を徐々に増やして自然の消失を人々に恐れさせて回復してから戻せばいいわ」
「ありがとうございます」
おや? 自分の中では満点の笑顔だったはず、なのになぜ男神は照れも、みとれもしなかったのかしら? やっぱりロリコンだから?
疑問を抱きつつも、自身の担当世界のエラーを処理していく。
「お前よく、あの女神に行けたな」
「いえ、仕事ですから……」
「昔は確かに綺麗だったんだけどなぁ。今じゃエール樽だもんな。顔もなんかトロールみたいだし」
「いえ、見た目とかは……」
「あれで美の女神らしいぜ? やっぱり寄る年波には勝てねぇってのが神でも辛いな。笑顔も怖いし」
「…………」
「やっぱりこの環境課のアイドルは幼い女神ちゃんだな。狙ってない笑顔が眩しいぜ」
「(回りの女神の視線が辛いんだけど……)」
その日、環境課で一柱が星になったのを彼は覚えていない。例え最後の言葉が『これだから、BBAは…………あぁ、幼い女神は最高だっ!』だったとしても、彼はそう言いはなった神の顔を思い出せないのだ。
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