第5話 少年神は遊びたい。

 はやく休憩時間にならないかな。壁の時計をチラチラと見ながら対応を続ける。


 今はナマコを相手に希望の聴取をしている。


「次は海で魚として泳ぎたい、その希望でよろしいですか?」

 もぞもぞと動くことで肯定の意を伝えてくる。


「では、転生先は以前の世界と同じで、魚類に転生ということになります。良い旅を」


 そういい終わると、即転生処理を行う。壁の時計を見ると、あと五分で休憩時間になる。


 最近はまっているゲームで、自身の街を持ち発展させ、友神を招くものなのだが、僅かな空き時間にも手を加え満足度や、来訪者数を伸ばしたいのだ。まぁ、あと五分だし、もう休憩入って良いよね?


 そう思い席を立とうとしたときに、後ろから声が掛かる。


「おっ、かなりさばけておるの。午前のノルマを軽く消化して、午後の分にも手をつけておるのか」


 声の主は課長だった。そちらを向き一礼したあと僕はにこりと笑い、頷いた。頷いてしまった。


「ほう、ならばまだ時間もあるし、ちとやりがいのある仕事をふるかの」


「え?」


「なに、基本を守れておるし、処理も問題ない。まぁ、恐れずにやってみるがいい。おおぃ、次の者~」


 僕の返事を待つことなく課長は次の者を呼ぶ。


 そして、目の前に来たのは人だった。


 え? ちょっ! 困る! 人とか、それって成熟した神々の仕事だよ? 僕はまだ少年! まだ若いんだよ! しかも、休憩時間はあとちょっとなんだよ?


 内心で課長に突っ込みつつも反論は出来ない。


 時計を見ると休憩時間まで、三分をきっていた。とにかく、速く済ませてゲームをしたい。その一心で特別課題を消化に掛かる。


 それが彼の、少年神の運命の歯車を動かすことになるとは、露とも思わずに。


 後ろで仕事に対する姿勢に感心した課長神は、頷き、配置替えを心に決めた。


 その後、今までの発展速度が嘘のように、ログイン時間が少なくなった彼を心配する声が上がるのは別の話。


「あぁ、なにも考えずゲームをしたい……遊びたい……」


 彼の目に光が失われていったのは、語らずとも、ご理解頂ける事だろう。

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