第4話 幼い女神は触れあいたい。

「こんにちはっ! えっと、うさぎさん?」


 幼い女神は目の前の小さく輝くモヤに声をかける。


 意思は伝わるので、その小さく輝くモヤは首を縦に振り『そうです』と答える。


 転生課の仕事は年齢により細分化される。特に幼い神には主に動物、昆虫、魚類などが担当の『小動物類部署』に配属される。神として生まれ、成熟するまでは主に、部署から異動はない。


 これは転生課課長神の配慮によるものだ。以前はランダムで、特に欲深い人類の対応に当たった場合、病んだり、闇落ちしたりとかなりの被害を免れなかったからだ。


 まぁ、そのせいで、成熟した神々からは苦情が上がったのだが。いわく、『癒しが消えた』と。


 果たしてそれは、小動物の魂との触れあいの事か、それともを指しているのかは明らかに後者なのだとわかるが。


 理由としては、魂との触れあいは原則禁止されているから。接触禁止のわけは簡単で、触れあう事で神からの寵愛を魂に刻むことになるからだという。


 過去にウサギから人へと転生希望をした者が、許可の声を聞き、嬉しさのあまりに可愛らしい躍りを見せたとき、担当の幼い神がつい撫でてしまったのだ。


 その際には特になにも異常はなかったのだが、後日、他部署の環境管理課、情報管理課からの報告が上がったのだ。


 が生まれている……と。

 そう、ウサミミの獣人が産まれたのだ。それにより環境管理課、情報管理課のその世界担当者が積み上がる問題点や、情報の処理が追い付かずパンクし、クレームが入ったのだ。


 あぁ、可愛いなぁうさぎさん……撫でたいなぁ。抱き上げたい。うぅ。なんで触れられないの?


 『?』


 ウサギの魂は首をかしげ、何処かウズウズしている幼い女神を見上げている。


「えっと、またうさぎさんで良いの? どんな世界のうさぎさんが良い?」


 このまま、黙っていては耐えれずに抱きついてしまいそうなので女神は話を進める事にした。


「うんうん。そっかぁ。う~ん、それならこの世界はどうかなぁ? 自然豊かで人の文化も全然発展してないから凄く暮らしやすいと思うよ?」


 幼い女神の言葉にうさぎはこくりと頷き、転生手続きを終えて旅に出た。


「あぁ、うさぎさん。うぅ」


 呻いていると、後ろから課長の視線を感じ、幼い女神は仕事に専念することになる。


「つぎのかたぁ~、熊さんっ!!!!」


 しばらく後に、新たな人種が生まれ、クレームが来るのだが、それはまた別のお話。 

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