第14話 新生シェアステラ王国誕生
その後、リュージの先導でアストレアは北塔の入口へと降りたった。
傍らには目を覚まして事の
そして、
「同志たちよ聞いてくれ！ ライザハット王は既に討った！ さらには北塔に幽閉されていたアストレア第一王女も解放したぞ！」
リュージは声も高らかに、誇らしくそう叫んだ。
リュージは今、自分が暴徒たちの一人であるかのように振る舞っているのだった。
「アストレア様だと？」
「ここ数年見た者はいないといわれていたが、幽閉されていらしたのか」
「そう言えば聞いたことがある！ アストレア王女は国王の圧政を批判したせいで閉じ込められたと！」
「アストレア様は俺たちの味方だ！」
「真に我らを導くのはアストレア様だ！」
「アストレア様！」
アストレアの名前を聞いた途端に、暴徒たちは口々にその名を連呼し褒めたたえた。
「さすがだなアストレア、たいそうな人気ぶりじゃないか」
リュージも事前に調べていたことなのだが、庶民たちのヘイトを溜めに溜めていた王侯貴族たちの中で、アストレアだけは驚くほどに評判が良かったのだ。
しかもリュージが舌を巻くほど頭の回る切れ者ときた。
群衆の反応を見て、アストレアに王を任せることにしたのは正解だったとリュージは確信するとともに、ほっと一安心していた。
もしも反対する人間が多ければ、そいつらを見せしめに殺して回る必要があったからだ。
復讐のためならばリュージは手段は択ばない。
殺すのにためらいもない。
今後の隠れ蓑として必要な新生シェアステラ王国を脅かす者がいれば、障害として排除するのにためらいはなかった。
とはいえ殺人鬼というわけでもないので、できれば殺さないに越したことはない。
その点で、アストレアの人気ぶりはリュージに十分な満足と安心を与えてくれていた。
「知っての通りアストレア王女は国民を愛する善良な人間だ。しかしながらライザハット王とフレイヤ王女の姦計によりこの北塔に閉じ込められていたのだ！ それを今、解放した！ 新たなシェアステラ王国は、やはりこの方が導いていくべきだと俺は思う！」
リュージの多大に扇動的な言葉に、
「アストレア様バンザイ！」
「新生シェアステラ王国の誕生だ！」
群衆たちは声を大にして賛意を示して盛り上がる。
その中には暴動の最初にリュージが会話を交わしたリーダー格の青年もいた。
彼はリュージの言葉を引き取るように、周囲の者にアストレアがいかに女王としてふさわしいかを言葉巧みに語って聞かせている。
「さてと、流れは作った。後はアストレア、お前次第だ」
アストレアを支持する声がどんどんと大きく広がっていくのをしっかりと見届けてから、
「う――」
リュージは精魂尽きたとでも言わんばかりに、派手にぶっ倒れた。
「リュージ様！？ 突然どうされたのですか！？」
アストレアが呼びかけるものの、リュージの意識はもう完全に闇の中だった。
リュージの使う神明流の『気』とは生命エネルギーそのものだ。
膨大な『気』を消費する神明流・皆伝奥義・四ノ型『不惑なりしザッソウ魂』によってアストレアの目を癒したことで、リュージの生命エネルギーは完全に空っぽになっており、もはや立っていることすら不可能だったのだ。
むしろ今まで一度立ちくらみをしただけで、後は疲れた素振りすら見せなかったのが不思議なくらいだった。
「リュージ様、リュージ様！ だめです、意識がありませんわ。セバス、すぐにリュージ様を安静な場所へ！ わたしは今、新たな王としてこの場所を離ることはできません」
「承知しております。すぐに手当てを施しますゆえ、どうかアストレア様は王としての職責を果たされますよう」
こうして『気』の使いすぎによる極度の疲労で意識を失ったリュージは、セバスチャンに背負われて新女王誕生の晴れの舞台を後にしたのだった。
――――――
（作者注）アストレアはメインヒロインなので、復讐（ざまぁ）の対象外です。アストレアに関してはリュージが殺すことは決してありませんので、安心して読み進めてください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます