第31話:第7章①危機
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「信じられない」
「あたしは味方よ」
「応援するしかないもんね」
僕はガバッと目を覚ました。夢……を見ていたようだ。
先程まで見ていた光景は水の中のようにぼやけていた。あれは誰だったの取るか?
僕は再び芝生の上に寝転がったら、座っているメフィスが目に入った。
「おっはよー」
いつもと変わらず能天気な笑顔だったが、それが辛く見えた。白鳥は一見すると優雅に見えるが水面では足を馬車馬のごとく働かせているのと同じだ。僕はどうしてこの子の表面しか見てこなかったのだろう?
「んー? どーしたのかなー、今日は?」
いつもより近く僕の顔を覗き込むメフィスに僕はドギマギした。昨日の発言からするに、こんなに近づくのは相手にとってもドギマギするはずだが、そんな様子は全く出さなかった。鉄仮面というものか?
「女心がわからない」
僕はエビフライから衣を剥ぎ取ったくらい包み隠さず本心を言った。メフィスは奇妙な食べ方を驚く天ぷら屋の店主のように一瞬の真顔になったあと、すぐに笑顔の衣をまとった。
「あははは、あんたもそんなことを考えるようになったんだ!キャラにない」
「うっさいな」
「でも、いいことだと思うよ。うん。あんたにとっても、あの2人にとっても」
そう笑顔で言うメフィスに、僕は胸が焼けた。こんなことは言っていいのかわからないが、昨日のことを言うべきだろうか?
「あのな、メフィス。昨日なんだけど……」
「お二人さん、元気―!」
今日も聞こえてきた風斗の声。なんでこのタイミングなんだ。僕はパブロフの犬のごとく条件反射で2人がいるだろう方向を見た。
が、風斗1人だけだった。
「あれ?1人?」
僕はおしゃれをしている風斗に聞いた。
「何よ?1人じゃ悪い?」
風斗は少しむすっとした。
「悪くはないが、いつも琉音といっしょにいるイメージだから」
「あら、そう? そうかもね」
さらにむすむすっとした。
昨日のことがあるから、その話はやめておこう。
「それから、きれいだね。似合っているよ」
「そんなおべんちゃら、言わなくていいわよ」
むすっとしながらも、口元が緩んでいた。なんやかんやで、褒められると嬉しいものらしい。
てか、おべんちゃら、って今時……
「あの、それから昨日のこと」
「それはもういいのよ。どうせ不可抗力だったんでしょ?だから、その話はもうなし。わかった?」
そう言いながら人差し指でビシッと僕の唇を射抜くポーズをした風斗は、男の僕から見ても勇ましかった。
それを見て、メフィスは仲直りした子供たちを見て安心するお母さんみたいな表情になっていた。
そして、タイミングがいいのか悪いのか、琉音が来た。
「――やっほー」
みんなで口々に返事した。
風斗も返事していた。
ははっ、どうやら仲悪くなったわけではなさそうだ。
「ところで、なんで別々で来たのー?」
ばか、メフィス、それは聞かないほうがいいだろ!
「――なんとなく」
なんとなく変な空気になった気がしたから、僕は話を変えた。
「そういえば、今の時期は就活生は忙しそうだな。バブル崩壊以降は就活が大変らしいが、大丈夫かな? リーマンショックやギリシャ危機で内定取り消しとか大変だった後だけど、大丈夫かな? まぁ、大規模大災害とか世界的なウイルス流行とかでもっと大変になるわけではないのだから、大丈夫かな?」
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