第21話:第5章①芝生上の会話
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「なにボーッとしてんの?」
メフィスが座っている横で、僕は芝生に寝転がっていた。
傍から見たら仲良くいちゃついているカップルみたいなものか。
そんなアニメみたいな展開があるのか?
アニメみたいな展開といったら、昨日のことは現実だったのだろうか? あの風斗が僕のことを好き? 別の人のことだったのだろうか?
空は曇っている。
「ちょっと、聞いてる?」
あぁ、聞いているよ。
聞いているといったら、昨日の発言は聞いても良かったのか? 他の2人は知っているのか? 秘密のことなのか?
まさか僕がこういうことで悩むことになるなんて。つい数日前まで、別のことで悩みながらここで寝転がっていたのだが、嘘のようだ。
そもそも、ほんとうにぼくのことか?
「ねぇったら」
というか、どこに惚れるところがあったんだ? 僕はイケメンでもないし金持ちでもないし性格がいいわけでもないぞ。やっぱり違うくない?
あいつ、僕にだけは変に食って掛かってくるし、むしろ嫌われていない? よく考えたら、天使側のあいつと悪魔側の僕とでは、仲良くなれなくない? 僕、ボコボコに殴られるくらい嫌われてない?
あれ? 昨日の発言は聞き違いじゃない?
「き・い・て・るー!!!」
足の小指まで揺れるくらいの振動が耳元で起きた。
僕は腰だけがジェットコースターに乗っているような変な浮いた感覚が痙攣と交互に襲ってきた。
「はい?」
「ほんと信じられない。あたしの話聞いているの?」
「なんだっけ?」
「漫画の話だよ。ある女の子が喧嘩ばかりしている男の子のことが好きになって、そのことを人がいないところで呟いたら、その男の子のことが好きな別の女の子が聞いてしまったの。これって、どうなるのかな?」
えらいベタベタな展開だな。そして、僕には若干タイムリーな話だな。
「そういう展開の時、影で聞いてしまった女の子が自分の心を押し殺してその女の子を応援するけど我慢できなくなり、後でその子に自分の本音を暴露して正々堂々と恋敵として切磋琢磨していくかな。それか、男の子にその女の子が脈がないと嘘を言って陥れるけど結局その嘘がばれて自分の恋が成就しないほうかもしれない」
「へぇー、すごいね。そうなるんだ」
「まぁ、よくある展開だ」
それくらいの漫画の知識は任せておけ。
「現実もそうなのかな?」
「……そうかもな」
それは知らん
そう漫画談義をしていると、風斗がやってきた。
「2人とも元気―」
その顔はいつも以上に綺麗に見えた。キラキラ光って見えるわけでも花を背負って見えるわけでもないが、後光が差しているようには見えた。
「元気―」
「ふふ、2人とも元気そうで良かった」
「僕、返事してませんけどー」
と僕が元気なく言っても無視して2人で話をし始めた。
全く、人の気も知らないで。
「――元気?」
「わー!」
と僕は元気よく目の前の琉音の出現に驚いた。
「急に出てくるなよ」
「――さっきからいたけど」
「えっ? いつから?」
「――風斗さんと一緒に」
気付かなかった。顕微鏡で風斗を観察するぐらい視界が狭かったようだ。
「ごめん。気付かなかった」
「――元気?」
「元気だよ」
「――よかった。元気なかったから」
初めて二言目を聞いた気がした。
「君、心配してくれたのか?」
「――いつも心配している」
いや、いつもはうそだろ。
「ありがとう」
「――思っていないでしょ」
おまえには言われたくない!
「なんで横に座るんだ?」
琉音は唐突に僕の横に座り始めた。アニメで幼馴染みの女の子が落ち込んでいる男の子を慰めてくれる時の状況を思い出した。
「――アニメでこういうシーンがあったから」
図星かーい。
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