第13話:第3章②天使

「なにはともかく、退治することは先送りする」


「先送りするー」


 選手宣誓のように右手を上げ宣言する風斗と横に付随する小動物。それを観戦するのは僕と小動物みたいな天使。長々と話をしたが、とりあえず平和な状況になったようだ。


「それにしても、あなたは本当に悪魔だったのか?」


「そうなの、悪魔だったの!」


 信じていなかったのか。


「どうして人間になったんですか?」


「ええっとねー……」


 あれー、僕が説明したはずですけどー。


「何?!巨人の正体は人間?」


「びっくりでしょ?」


「お前らの仲良くなる速さにな!」


 2人は10年来の友達みたいにキャッキャッウフフしてた。


 というか、何のネタバレだ?巨人の漫画なんか僕は知らないぞ。


「うふふ。わたしたちと仲良くしたいらしいぞ」


「あらあら、ハーレムをつくりたいのですかな?」


 はったおすぞ。


 さっきまで命のやり取りしていたのに、なんだこれ?


 てか、元悪魔、どこでそんなセリフ覚えた? どうして体をクネクネさせる? 取り巻きみたいに後ろでニヤニヤするな!


「……というか、どうするんだ?悪魔に戻る算段はあるのか?」


「サンダン、ってなに?」


「空手とかである、2段と4段の間にあるものよ」


 笑顔で嘘を教えないでくれ。無視していいか?


「とにかく、人間から悪魔に戻ることはできないのか?もう魔法は使えないのか?」


「そうなの。さっき試したけど、なんにも」


 お駄賃をなくした子供のように悲しんでいた。


「それは、天使の力でなんとかならないのか?」


「それは無理だ。天使が悪魔を手伝うなんて、やってはダメだ」


「そうなのか。討伐するためには必要悪も大切では?」


「それは人間の理だ。天使の世界では通じない」


「それでは、話が進まないではないか」


「たしかにそうだな。でも、それも仕方ない」


「……というか」


「ん?」


「なんで風斗が言ってんだ!お前は天使ではないだろ!」


 風斗は親方のように両手を組み、自分は悪くないと言いたげだ。


「なぜって、天使の代弁よ」


「天使自体が、神の代弁をするものだと思うのだが」


「ふふふ、ありがとう」


「ほめてねぇよ」


 天然か? あと、口調が定まってないぞ。


「わたしは、天使から天使の世界の事情を聴いているから分かるの。あなたが言ったことは無理よ」


「そ、そんなことわからねぇだろ?直接天使に聞かないと」


「別にいいけど、聞ける?」


 ハムスター天使は鼻ちょうちんを膨らませていた。


「……鼻ちょうちんなんか初めて見た」


 僕は肩を落とした。


「わたしはね、意地悪を言っているわけではないの。四六時中365日、天使のことを聞いてきたからだいたいのことはわかるの」


「そう言われたら説得力あるけど」


「だから、天使の力では無理なの。別の方法を考えましょう」


 こいつ、天使の言葉遣いの影響を受けて、喋り方が定まっていないのでは?


「それで、何か案はあるのか?」


「……」


「……」


「……zzz」


「寝るなー」


 鼻ちょうちんを膨らませる女性を初めて見た。


「……すみません、1年前から寝不足で」


 天使のせいだ。


 天使のコトバを四六時中365日聴いているせいだ。


 てか、そこまで影響を受けるのか?

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