第9回

 そして――

 一行が案内されたのは、市が立っていた場所から、通りを数本離れた区域。

 そこは周囲を堀と壁で囲まれ、入り口は大門のみという、奇っ怪な場所であった。

 言われるままに着いてきた泉たちは、その一角に入り、「輪違屋わちがいや」と書かれた看板のかかった豪邸のような建物に案内され、さらにその座敷に上げられていた。

「ここは………なに……?」

「なんじゃ、おぬし、島原を知らんのか?」

「島原?」

 おかしそうに笑う菊池に問い返す。

もとでいっとう歴史のある遊郭ゆうかくぞ」

「遊郭ぅ?」

 聞き慣れない単語ではあったが、頭をぐるりと回し、記憶を掘り起こす。

「遊郭って、エッチなお店ですか!?」

「えっち?」

「いやこっちの話で……」

 遊郭――この時代、いわゆる売春などが許可された、「公娼」の場である。

 島原遊郭は、大坂の新町遊廓、江戸の吉原遊廓と並び「日本三大遊郭」とも称されたが、その中でも最も歴史は古く、足利義満の時代にまで遡ることができるという。

「まいったなぁ……遊郭なんて連れてこられても、どうしろっていうんですか」

「なにか……困るんかのう?」

「いや、あの、ボク、これでも女なんですが」

 女が遊郭に来てどうせいと言うのだと、泉は憤慨にも近い顔になる。

「なんか問題あるんかい?」

「いや、ですから――」

 だが、そんな泉を不思議そうに見返す菊池に、却って戸惑う。

「ははぁ、おんし、遊郭に来るのは初めてか。なんも知らんようじゃのう」

「はい?」

 遊郭とは、ただの売春街ではない。

 そもそもが、当時の遊郭とは歌舞音曲を初めとした芸術芸能の中心地でもあり、「花街」の別名通り、まさに「文化の華」の場であった。

「遊郭は確かに春を売る場所じゃ。だが同時に、歌や踊り、風雅風流を楽しむ場でもある」

 琴に三味線、琵琶びわに胡弓などの楽器演奏。

 地歌長唄小唄などの音曲。

 書に絵画、香道や茶道。

 さらには囲碁に貝合せに双六すごろくなどの、平安の時代から伝わるみやびな遊び。

 そういった数々の娯楽の総合エンターテイメント施設、それが「遊郭」なのだ。

「中には、母親を親孝行として連れてくる者もおるぐらいじゃ」

「マジっすか!?」

 現代の価値観とは、そもそもが根底から違うことに驚かされた。

「はぁ、なるほどねぇ……」

 つまり、「お礼」として、泉がここに連れてこられるまでは、常識の範囲内なのだ。

「しかし、輪違屋とはのう……懐かしのう」

「菊池さん、来たことあるんですか?」

「おう、昔のう。そのころはちょうど大火の後でな」

「大火……火事ですか……」

 島原遊郭は、この頃より十年以上前に大火事に会い、その規模を大きく縮小していた。

「だいぶ戻ってきたが……往時の華やかさの半分も戻っとらんそうじゃ」

「これでまだ半分以下なんですか」

 大火の影響もあり、歴史ある島原遊郭も衰退期に入り、多くの店は当時新開発されていた祇園へと移転していた。

「ここは屯所からも近いですから、義父もよく来られているそうですね」

「近藤さんも?」

「ええ、土方さんや、他の隊士も」

「ふええ……みんな遊ぶ時は遊ぶんだねぇ」

 周平の言葉に、呆れたような感心したような声を上げる泉。

 彼女らのいる輪違屋は、二一世紀も現存しており、近藤勇が書いたと言われる書が残っている。

 さらに、他にも幕末の様々な著名人ゆかりの地でもあるのだが……

「ところで、あのお姉さんはどうしたんだろう」

 ここまで連れてきておいて、いなくなってしまった、あの娘である。

「お待たせいたしました」

 ――と思っていたら、襖が開き、その娘が現れた。

「え――」

 彼女の姿を見て、泉は言葉を失う。

「あ、あの……」

 そこにいたのは、輝くばかりの美しさの花魁おいらんであった。

 花魁――遊郭における最上級に位置する芸鼓。

 現代にも残っており、ネットやテレビなどで、泉もその姿を見たことはある。

 だが違う。生で、至近距離で見るそれは、次元が違った。

 美しさをこれでもかと極め、更には凝縮したその真髄を、処理しきれないほどの視覚情報で目の前に叩きつけられたかのような、ただ視界に入ったるだけでも酔っ払ってしまいそうになるほどの妖艶さであった。

「ほほう、おんし、花魁じゃったか。道理で美しか娘と思うたが、いやはや驚きじゃ」

 場馴れしているのか、あわてふためく泉に反して、菊池は余裕の態度であった。

「その節は、ありがとうございます」

 ふわりと、優雅なまでの物腰で腰を置く。

 その挙動の一つ一つが洗練されていた。

「隠すつもりはなかったでありんすが……あまりわっちのような者が大門の外をふらついていると知られたら、それも色々お立場の悪くなる方たちがおりますので」

 口調まで変わっていた。

「改めて、輪違屋の天神……糸里いとさとと申します。どうぞよろしゅう」

 天神とは、芸妓の格の一つで、最上位に位置する太夫たゆうに準ずる者である。

 この時代、島原には太夫の座にある者はいなくなっていたため、事実上の最高位となる。

「なぁんも、ワシラらは大したことはしとらん。上げ過ぎではなかとか?」

 菊池が、笑いながらも、鋭い一言を返す。

 この時、糸里は、泉らの下座に座った。

 花魁は遊女ではあるが、彼女らは芸妓としての誇りを持つ。

 例え千両積まれても好まぬ者とは場を同じくしないし、それだけ積まれても、手も握らせないことすら珍しくない。

 その高貴さと気品が、彼女らの価値であり、それを許し受け入れることが、当時の上流階級の男たちのステイタスだったのだ。

 天神たる糸里が、見た目だけならば下級の武士の周平や菊池、ましてやただの町人にしか見えない泉の下に座るというのは、まずありえないことであった。

「それが、そのう……こればかりは、恥ずかしくて、こちらもへりくだるしかないんでありんす」

 悲しげに目元に手を当てる糸里。

それすらも一枚の絵画のように美しい仕草である彼女に、泉は尋ねる。

「どうかしたんですか?」

「はあ……皆様をお招きして、先のお礼にと、菓子を楽しんで頂こうと思ったのでありんすが」

 花街は、「文化の華」の極地である。

 当然そこには、「食文化」も含まれる。

 千年に渡って、大商人や大名、公家に供してきた絶品の菓子を作る者たちもいるのだが――

「この店の出入りの菓子職人が、急病に臥せったとかで……」

「なんとまぁ」

 糸里が下座に着いたのもそれが理由であった。

 礼をしたいからと半ば無理やり引っ張り込んで、「できませんでした」とは、興や粋を好む花街の者として、不格好この上ない話であった。

「なぁんも、そういうことなら仕方なしじゃ」

 菊池は呵々大笑しながらそう口にし、そのまま言葉を続ける。

「ないもんはしかたなか。ここまで連れてきてもてなそうとしてくれただけで十分じゃ。いい目の保養もさせてもうたからのう」

 言うと、ぬっと立ち上がる。

「さて、ではおいとましようかのう、ご両人」

 そして、泉と周平にも退室を促そうとする。

「お、お待ちくださいまし」

 だが、そんな一同を、糸里はなおも引き止める。

「え、なんですか?」

糸里の視線が、泉に向けられた。

「あの、よろしければ、お作りになっていただけないでしょうか?」

「ええ⁉」

 礼をしたいと言って招かれたところで、なぜその礼の品を自分が作らねばならないのか……さすがに抗いの声を上げざるを得ない話であった。

「いえ、わかっております。このようなことは筋が違うと……ただ」

 そう言うと、糸里の目に、妙な光が宿る。

「なんでも、新選組で賄い方をしてらっしゃる方だと……あの荒くれ者……もとい! 硬骨こうこつな武人の皆さまを唸らせているお方のお作りになるお品を、ぜひ味わってみたく思いまして……」

 蠱惑的こわくてきなまでの艷やかな笑顔で、糸里は言う。

「なんで……それを……?」

 泉と周平は、名乗りはしたが、新選組の者だとは一言も言っていない。

「まぁ、世の中、壁に耳あり障子に目ありと申しますし」

 糸里は笑顔を崩さぬまま、二人に告げる。

 彼女がどうやって泉たちのことを知ったのかはわからない。

 もしかしたらあの場にいた者たちの中に、なんらかの理由で、二人のどちらか、もしくは両方のことを知っている人がいたのかも知れない。

(不味いなぁ……)

 だが、そんなことは、今はどうでもよかった。

 このことが公になれば、面倒なことになる。

 泉はまだいい。彼女はただの賄い方で武士ではない。

 だが、刀を抜けなかった周平は、場合によっては「士道不覚悟」に問われる可能性がある。

 そうなれば、「わかっているな?」と釘を差されたにも関わらず、彼をそんな事態に追い込んでしまった泉に、回り回って責任がおっ被される可能性がある。

(いや、やりそうだ。あの人達ならやりそうだ)

 そうでなくても、新参者の泉と、局長の養子の周平なら、どちらを優先するかは火を見るよりも明らかである。

「稲葉くん……その、僕に気を使わなくていい」

 小声で、周平が言った。

 泉の心中を全て察した上で、彼は無理をするなと言ったのだ。

(これは卑怯だなぁ……)

 今までのように、力づくなり半ば脅すなりなどしてやらされるなら、抗いもできるのだが、こういう言い方をされればそれもできない。

(案外、こういう性格を見込んで、養子に迎えられたのかも知れないなぁ)

 近藤もまた、他者を力で屈服させるというより、「力を貸したい」と思わせるタイプである。

「わかりました……厨房は、どこですか?」

 こうなれば、糸里の狙いはわからないが、彼女の要求に応じ、今回の件を公にしないようにする以外、泉ができることはなかった。



「さてと……」

 厨房に向かい、材料を前に、泉は何を作ったものかと腕を組む。

「すまない……稲葉くん、僕のせいで……」

 隣には、申し訳なさそうにしている周平の姿が。

「あ~……いや、いいですよ。気にしないでください」

 これがこの時代の武士ならば、別の感情を抱くのだろうが、泉は現代人である。

 だから、彼を責める気にはならなかった。

 周平が、「人を殺せない」人間であるということを。

(沖田さんや土方さんが言ってたのは、こういうことだったのか……)

 彼の剣の才能は、もしかしたら、沖田にも比肩するのかも知れない。

 鍛錬の時間で、試合に見えなかったのも、それほどまで周平が高い技術を有していたからなのだろう。

 実力が天と地ほど離れていたからこそ、まるで子どもが大人にじゃれているようにしか見えなかったのだ。

(皮肉だなぁ……)

 泉は、少し悲しくなった。

 剣は人を殺すもの――なんのかんの言っても、それがこの時代の常識だろう。

 もしも現代ならば、人を殺すことを前提とした剣を振るわなくていい時代ならば、彼は間違いなく、天才剣士として名を馳せただろう。

 だが、この時代ではそれはならない――

(新選組局長の養子が、人を殺せない侍だなんて……)

 きっとそれは、周平本人にとっても最大の悩みであり、苦しみなのであろうことは、想像に難くない。

「このせいで、義父にも迷惑をかけてしまっているんだ……」

 史実において、近藤勇の養子、近藤周平が、人を殺せなかったという記録は残っていない。

それだけ厳重に包み隠されてきたということなのだろう。

「今まで、何度か頑張ってみたんですが……どうしても」

 人を殺せる努力をするというのも、現代人の泉の感覚からすれば、違和感を覚えるものだ。

「あの、でも……その……え~っと……」

 なんとか周平を励まそうとする泉であったが、どう言っていいのか、言葉が出てこない。

 なにを言っても、下手な慰めにも成らない。

「そがいに、気にすることはなかと思うがのう」

 そんな二人に、声を掛ける者がいた。

「菊池さん? お座敷の方で待っていたはずじゃ……」

 厨房の入り口にいつのまにか、巨漢の男、菊池が立っていた。

「いやぁ、すまんのう。どがいな菓子が出てくるかと楽しみすぎてな」

 カラカラと、子供のように笑っている。

「お侍さんは……こういう料理とか、興味ない人の方が多いんじゃないですか?」

「なん言うとるか? オイはなにが楽しみかちゅうて食うことほど楽しみはないぞ」

 ずんずんと厨房に入ると、材料が盛られた籠を見て、ふぅむとつぶやく。

「ええっと、おはんは……確か、周平ち言うたの?」

「え、あ、はい」

 何気なく、飾ることのない口調で、菊池が声を掛ける。

「あんまり、気に病み過ぎぬほうがよかよ。人を斬れんいうたとて、さほど大した話じゃなか」

「―――!」

 菊池の言葉に、周平は驚く。

(やっぱり気づいていたか)

 心の中で納得する泉。

「しかし、やはり武士たるもの……」

 だが、言われたからとて、それで納得できるのなら無理はない。

 周平は暗い顔でうつむいている。

「おいは……それ以前に、刀を振れん」

「え?」

 笑いながら、どこか皮肉げに、菊池が言う。

「見ぃ?」

 着物の袖をまくり、右腕を見せる。

 そこには、かなり古い、だが深い傷跡があった。

「幼い時分に、やんちゃしてのう……人斬りどころか、素振りもできんわ」

 そう言うと、さらに一層大きな声で笑う。

 武士の家に生まれ、刀を振れないということは、どれだけの辛さだろう。

 現代人の泉には、その心情を完璧に理解することはできない。

 だが、面目を保つためだけに人を斬り、時に己の腹すら斬る者たちにとって、それが辛酸の極みであろうことは、想像できる。

「いろいろと悩んだがな……だが、そがいなこと、細かいことじゃ」

 武士にとって、恥この上ない傷を見せた上でなお、菊池は心からの笑顔を見せる。

「おんしらは、黒船を見たことがあるか?」

 黒船。一般にペリーとともに浦賀へ来航した軍艦のみを指すと思われがちだが、実際は西洋諸国が用いる艦隊すべてを、幕末の人々は畏怖の念を込めてそう呼んだ。

「デカイぞぉ、とてつもなくデカイ、顎が外れるかと思うた……そして、恐ろしく強い」

 菊池の目は、ただの知識としてではなく、体験として知ったモノの色が浮かんでいた。

「あの船から大砲が放たれた瞬間……いや、ちがうのう。なにかが閃いたと思った時には、すでにどこかしらが爆発を起こす。そりゃあもう、根本が違う」

「まさか……菊池さん、あなたは……先の薩摩と英国の……見たのですか?」

「まぁのう……」

 周平の問いかけに、菊池は苦笑いで答える。

 薩英戦争――生麦事件を発端として起こった、四カ国連合艦隊と、薩摩藩との戦い。

「あんなのを見てしまうとなぁ、やっとうなんぞ、大したこととは思えん。刀振り回して、殺せる人間は何人じゃ? 十がせいぜい、できて二十。歴史に残る者でも、百もいかん。だが……黒船は一隻で、一門の大砲で、それをやってのけてしまう」

 この戦争で、薩摩はそれまでの政策を大きく転換させる必要性を感じるほど、世界の力を思い知った。

「刀を使えぬ、人を殺せぬということは、もしかして、それ以外のことをせぇという、天の示しなんかもしれんぞ?」

「そう、でしょうか……」

「そうでなかったとしても――」

 そこで菊池は、再び笑うと、ドンと、周平の胸を突く。

「そう思ったほうが、楽しかよ?」

「あ………」

 悩んでいるよりも、その時間を別のことに用いる。

 自分ができることを探すほうが、遥かに有益。

 理屈ではわかっていても、心ではなかなか受け入れられない。

 しかし、少なくとも菊池はそれを「受け入れ」進んでいる男であった。

「……………」

 なにも言い返せず、じっとうつむく周平。

 だが、「時にはそんなふうに考える時間も必要だ」と思ったのか、菊池は励ますように肩をたたき、あらためて泉の方に振り返る。

「しっかし……料理人はおらんくせに、材料はいいもんがそろっとるのう」

 厨房には、各種様々な果物の他、貴重品である砂糖や卵、はちみつまで置かれていた。

「こいは、おまはん……仕組まれたかのう?」

「やっぱり……そう思います?」

 糸里というあの花魁は、まるで最初から泉をここに連れてくる予定であったかのように、段取りを整えていた。

「これは、よほど珍しか菓子を作ってもらわんと、不味いかもしれんのう」

 事態を楽しんでいるのか、それとも珍しい菓子が食えることを期待しているのか、どちらかなのか予想もつかない顔で、菊池は笑う。

「なにが目的なんでしょうね……」

 新選組の関係者と言えど、たかが一料理人が、なにがしかに巻き込まれる理由が見つからない。と、思ったら――

「わからんでもなか」

 そう口にする菊池の顔からは、笑顔が消えていた。

「―――!」

 その顔を見て、泉は一瞬言葉を失う。

 これに近い人間の表情を、彼は最近目にしたことがある。

 そう、あの夜、自分を殺そうとした不逞浪士のシンパの腕を一瞬で切り落とした時の、土方の目に似ていた。

(………………この人は)

 只者ではないと思っていたが、それとは別種の底知れなさを感じ、泉は言葉を失う。

「おう、どがいしたか?」

「あ、いえ………」

 しかし、次の瞬間には菊池は元の笑顔に戻っていた。

「まぁ、おまはんは硬いことは考えず、旨いものを作るということに専念したほうがよかかもな」

「で、ですね……」

 それ以上深入りすれば危険だと、本能の訴えに従い、泉は食材のチェックに移る。

 ただ美味いだけでなく、意表を突いたもの……と言われても、なかなか難しい話だった。

「ん………」

 上手く考えがまとまらない……そう思っていたら、また、あの声が聞こえてきた。


「料理で心を変えられる……わけはなかろう? 料理はしょせん料理だ。それ以上でもそれ以下でもない。個人個人の問題など、当人でなければどうもできん」


父の声は続く。


「だがな? 時に物語が、芸術が、風景が、人の心を変えることがある、それはなぜだと思う?」


「簡単だ。人は悩んでいる時、すでに答えを持っているのさ。そして、誰かに背中を押してもらいたがっている。それをすればいい。あとは勝手に自分で動き出す」


「と言われてもなぁ」

「どげんした?」

 いきなり誰かに返すようにつぶやく泉を見て、菊池が不思議がる。

「あ、いえ、こっちの話です」

 あわててごまかすが、この状況下で、菊池を満足させ、あの糸里を納得させ、かつ周平になんらかの力になるメニューとなると……

「ん……ああ、そうか、これならありかも知れないな」

 並ぶ材料を見ながら、一つの答えが浮かんできた。

「菊池さん、周平さんと一緒に、座敷に戻っていてください」

「おや、作るところを見せてはくれんのか?」

「ほら、種明かししちゃうとおもしろくないじゃないですか」

「ふむ?」

 不思議そうな顔をしつつ、菊池は泉に言われるがままに、厨房をあとにした。

「さてと」

 そして、泉はさっそく調理に入る―――

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