伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その伍
「よっしゃ!」吸って短くなった煙草を地面に捨てると、足で踏みつける。「まずはテメェらの非力さを思い知れ。夜行隊戦闘力上位五名の内、一位以外は前に出ろ!」
俺が煙草を吹かして周囲に煙を充満させていると、三津木を筆頭に四人が前に出て構えた。
「おい、おかしいぞ。待てよ、まさか......三津木が戦闘力一位ではないというのか?」
俺がガッカリした表情を浮かべていると、それまで控えていた奴が刀を持って俺の目の前まで歩み寄ってきた。
「何だ、その拍子抜けのような表情は! 俺が夜行隊の戦闘力最強を誇る''
「鼬鼠殺し? 何かの称号か? 鼬鼠殺しとは、まったく強くは感じない名前だが。本名は?」
「わけがあって本名は言えん」
「ふーん。っても、お前は三津木より弱いな」
「は?」
その時、鼬鼠殺しは激怒した。誰の目から見てもキレているとわかる。血管が浮き出て、眉間には皺が寄っている。これを怒っていると言わずして何と言う。
「三津木より自分が下だと自覚するのが悔しいのだろう? フハハハハ。くだらねぇ」
「貴様に勝負を申し出る!」
面白いな、こいつ。正直に言うと三津木よりこいつが優れている側面がわからなくて本格的に困っているのだが、勇気だけは認める。強者に立ち向かうには勇気が必ず必要となるからな。
こいつが俺に敵うわけがないが、ただの蛮勇というわけでもなさそうだ。根拠のない勇気ではあるが、一対一をしてみる価値は確かにある。
「別に一対一は構わんが、木刀か真剣のどっちが良い?」
「素手だ。素手で戦おうじゃないか」
「なるほど、素手か。良い選択だね。俺が刀剣類の扱いに長けていても、体術には長けているわけがないとでも思ったか?」
「冗談でしょ? 私の情報ではお前は体術にも長けているようだな。それを知った上で素手での戦いを望んでいる。正々堂々と来い」
「最初から素手でやり合うつもりの奴の元へ行く時、一般論では刀などは持たんだろう? テメェの目的は?」
「さあ、勝負を始めよう。目的はお察しの通り、我が戦闘力最強を誇ることを認めさせる」
「良いね。嫌いじゃないよ」
俺は立ってからバランスを保ち、右手で拳を握った。左手を前に出して距離を取らせないようにすると、大きく右手を振りかぶってから前に踏み込んで腹に一撃を食らわせた。
一発で俺と鼬鼠殺しの力の差を理解するとは思ったが、案外とバカなんだな。俺のパンチで耐えているだけはあるが、あのまま立っていればあと数分も
「潰れろ」
「グググッ......」
「ふむ、鼬鼠殺しは耐久力すら三津木より
肩を落として脱力し、椅子に座って煙草をくわえた。
「う、動ける! 俺はまだ動けるぞおっ!」
「ん? ああ、まだ動くのか。ならば、まともに相手をしてやろう」
「来い!」
鼬鼠殺しが動くのを待っていると、奴はかなり離れてから拳を構えた。すると助走をし、速度を加えて攻撃をした。俺はそれを受け止め、こいつが夜行隊最強だということを自覚した。
普通ならもっと遅くて弱い打撃のように見えたが、鼬鼠殺しの打撃は力を逃がすように受け止めても尚ダメージが体に残った。
ただ鼬鼠殺しは力で押し切るタイプではないことは明白だから、導き出される答えは一つ。速度を殺さずに打撃をすることが、あいつには得手なのだ。
「気に入ったぞ。俺も本気で行かせてもらう!」
「やっと俺の強さがわかったか!」
背筋に力を込めると、両腕で殴れるように構える。倒れないように足の構え方にも注意を配り、息を吸い込んでから胸を張った。
こういう小手先の技を使うような非力な奴は、筋肉によって全身に出来る
両腕による交互のパンチで、鼬鼠殺しに強烈なのをぶち込んだ。重心をずらしながら右足で側頭部を斜め下に蹴り、倒れ込んだところで首根っこを掴む。
「どうした、貴様に勝ち目はない」
「だ、だが俺が三津木より強いことが証明されただろ?」
「いや、三津木の方が強かったな。残念」
くわえていた煙草の先に着火させると、
「あ、そうそう。夜行隊の戦闘力上位五名の内、三津木と鼬鼠殺し、堀田以外の二人も名乗ってくれ。名前を覚えられる自信はないが」
「は!」俺に敬意を払ったように前に出て、彼は強く口元を結んだ。「私は
「おう、よろしくな高木」
次に、眼光を鋭く光らせた輩がふんぞり返った。「
「剛毅鉄鋼とは随分と硬そうな名前だな。よろしく」
「ああ、よろしく」
夜行隊最強は鼬鼠殺し、二位はおそらく三津木宗治、三位は高木俊平、四位は剛毅鉄鋼、五位は消去法で堀田正典か。堀田の奴は夜行隊戦闘力五位であそこまで威張っていたとは。
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