伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その肆
夜行隊戦闘力上位五名対伊達氏現当主伊達政宗。五対一の戦いだ。しかも相手は強いときた。俺も自分の地の力を知る必要があるし、神力は使わずに勝つ。
それに五対一で奴らが負ければ、俺が圧倒的強者に見える。そうしたら反乱を起こすこともなくなる。まさに一石二鳥だ。
俺は真剣を放り投げると、舞鶴が持っていた木刀を受け取る。
すると相手をする一人である細身の男が前に出た。「おいおい、五対一で木刀って正気かよ? あんた、ここで蛮勇を振るって良いのか?」
「やはり訓練を積んでいない兵士は礼儀というものを学んでいないんだな。木刀は素晴らしいのだ」
「あ? 誰に口を利いてるんだ?」
「お前だよ、細身のガリガリが。というか、当主にそんな口を利くお前の方が失礼だ。俺が
「知るか、んなもん」
「ハッ!」俺は鼻で笑った。「お前ら! 俺に力を示してみよ! そして俺に認められよ!」
「黙れ」
「そうそう、細身君。君、名前は?」
「
「覚えておこう。五人一斉に掛かってこい!」
俺がそう言うと、五人は俺を取り囲んでから刀で殺しに掛かってきた。連携がうまく取れてはいるが、所詮はその程度か。
木刀を振り上げてから堀田の真剣とプライドをへし折ると、ひるんだ一瞬で押し倒して道を作る。逃げ場が出来ると、あとは四人の真剣もたたき折る。
そして一旦は距離を取り、相手の出方を伺った。だが、刀がないから攻めてはこなかった。ならばと俺はすばやく近づき、一人ずつ脇腹を木刀で
「「ガハッ!」」
「期待外れだ。ここまで弱いとは思わなんだ」
俺が勝ち誇って気を抜いていたところで、不意の攻撃を受けて
二階堂のような筋肉質の男だった。力押しタイプだろうとは踏んでいたが、力の強さが想像以上だぜ。俺を仰け反らせるとは。
「俺を仰け反らせた者よ。名は何だ?」
「......
「三津木か。お前だけは認めよう。思い切り来てみろ!」
「相わかった!」
三津木には脚力もあるようで、深く踏み込んでからかなりの間合いをまばたきの間に詰めやがった。さすがに反応が遅れた俺は、攻撃を防いで後手に回る。
神力を使っても三津木とは
木刀には素手だと悟った三津木は刀を捨て、俺の木刀の攻撃を素手だけで
まず活かすべきは経験。安直な相手は今までどのような行動を取ったのか。次にテクニック。木刀の軌道をわざと逸らして、三津木が予想する木刀の動きをすり抜ける。そして最後に、腹に木刀を強打。ダメージを受けて肩の力が抜けたので、顎にアッパーカット。後方に倒れたところで地面に押さえつける。
「強いな。降参だ」
「俺もギリギリだった。三津木宗治と言ったか。貴様は認める。ただ、その他の奴らの力は認めない」
ため息をついて立ち上がると、舞鶴は具合の悪そうな顔をしていた。
「どうした舞鶴。体調が優れないのか?」
「いえ。三津木殿しか認めないということは、私は隊長失格なのではないかと思いまして」
「案ずるな。舞鶴には統率力がある。統率力ってのは皆をまとめ上げる力なわけだが、その力は隊長など上に立つ者が持つものだ。つまり、誇っても良いということだ。隊長失格ではない」
「それならば良いのですが......」
俺は夜行隊が集まっているところに目を向けて、息を吸い込んだ。
「これでわかったと思うが、夜行隊は弱い! 非常に弱い! 奇襲にはめっぽう強いが、普通の戦いともなるとめっぽう弱いわけだ。だから俺が鍛えてやると言っているんだ。理解をした奴から、俺に体を向けてみろ」
ふう、これで夜行隊のほとんどは俺に
それにしても、神力を使わないとここまで俺って弱いんだ。俺も鍛え直さないといけないか。
夜行隊の大体が俺に体を向けていた。これからは敬語でも使わせよう。若様、とも呼ばせようか。いや、性に合わんからなあ~。
倒れている堀田達四人の元へ向かうと、気を失っていたので無視をして話しを進めた。
「えー、これからは俺が舞鶴とともに夜行隊を鍛えることになる。俺のことを若様などとは呼ばなくていいが、最低限の敬語は使え。厳しい訓練はしないから安心すると良い」
「「はっ!」」
「ではまず、一人ずつ俺と真剣で戦ってもらう。俺とお前らの圧倒的な力の差を思い知り、戦場でも気を抜かないように性根からたたき直してやる!」
木刀を置くと、刀を手に取って鞘に戻す。それを腰に付けると、椅子に座って景頼から貰った煙草を口にくわえる。火を着けると、煙を吹かす。
覚悟しろ、夜行隊ども。鍛え上げて最強の兵士にしてやるよ。
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