伊達政宗、隻眼の覇者は伊達じゃない その弐
二本松城攻めが終わったことを輝宗に伝え終えると、何かをやりきったように深いため息をもらした。
虎哉は俺を心配しているようだった。「お体は問題ありませんか?」
「ええ、今回の二本松城攻めで疲れはしましたが問題は何一つとしてございません」
「さようですか? ならば良いのですが......」
もしかすると、俺自身が気付いていないだけで周囲からは疲れているとわかるほど表に出ていたのかもしれない。俺ともあろう者が疲れを表に出してしまうとは油断したな。
ポーカーフェイスとかは得意な方なんだが、以後感情を表に出さないように自分を
「師匠、今日のところは私は帰りますね」
「了解しました。それでは私もこれで失礼させていただきます」
「はい」
資福寺を出ると米沢城に戻り、疲れを癒やすために何かをしなくてはいけないと思い立った。ただ疲労回復をするには温泉しか思いつかないな。さて、どうしようか。
「やあ」アマテラスは玉座のようなものに座って足を組んでいた。「元気かい?」
「なっ! アマテラスかよ、驚かせんな」
どうやら、俺はまた神界に呼び出されたようだ。このくだりもさすがに飽きてくるぞ。
「ハハハ。面白い反応だよ。予想以上だ。早速、我はなぜ
「何で呼んだのかって急に言われてもわかるわけが......。あ、今回の戦に勝利したことを祝福するためだったりする?」
「君には我がそれほど優しい奴に見えている、ということか。ふむ、小説に反映させておこう」
「もったいぶるな。何で呼んだんだよ」
「とある人物を君に紹介するためなんだよ。
「ツクヨミ、聞いたことは大いにある。太陽を司る神であるアマテラスに対して、月を司る神・ツクヨミだろ?」
「大正解。我の妹にして月を司り、四天王のメンバーでもあるのがツクヨミだ。──来い、ツクヨミ!」
「参りました、ツクヨミでございます」
アマテラスの呼び掛けに応じ、ツクヨミは何もない空間から現れた。こいつらが神だとは知っていても、人の姿をして現実離れした技を使われるとつい驚いてしまう。やめてくれ。
「おう、ツクヨミ。お前が会いたいと言っていたから伊達政宗を呼んでやったぞ」
「ということは彼が、人間にも関わらず人外な力を使うという者ですか」
人外な力を使うという言葉を人外な神には言われたくはなかった。
「そうなんだよ。こいつは人間のくせに神の力とか使うんだよ。応用力もあるし強いぞ」
「まったく、彼を神の使者と認定したのは誰なのですか?」
するとアマテラスは苦笑いをし、そっぽを向いた。「ええとね......俺の娘がこいつを神の使者にしたんだ」
「まさか身内が犯人だったとは」
なぜ俺が悪口を言われなくてはならないのだ。俺は被害者だぞ。俺が原因でもあるが、俺は殺された後にアーティネスによって神の使者と認定されたんだ。悪口を言われるのはおかしい。
「話しを戻そう。我がツクヨミと政宗を対面させたのは、これから二人に協力してもらいたいことがあるからなんだ」
「え? 妹が会いたがっていたと言っていなかったか?」
「まあ、それもあるがな。政宗のような人間が神力を発動する場合には申請が必要になるが、それは好き勝手させないために設けられた制限なのだ。それと同様に、太陽神は絶大な力を有する故に発動にはいくつかの制限が存在する。その制限をすり抜けて力を発動することも出来なくはないが、やや時間が掛かる。だから二人に協力してほしい」
そういうことか。俺は神の使者として特例で神力を
つまりアマテラスの目的は、アマテラス自身は制限がキツすぎて発動出来ない力を俺とツクヨミに協力させて発動させる、ということだろう。
「すぐに答えてくれ。アマテラスの最終的な目的はなんだ?」
「隠すほど重要なことではないから言うが、アーティネスから力を
「アーティネスの力を奪う!?」
「そうなんだよ。彼女は我の娘という立場を良いことに、最近は思うがままに暴れ回っている。それを食い止めるには一時的にでもアーティネスから力を奪う必要があるのだが、
剥奪の力、と言われて思い出したことがある。俺は前にアマテラスから歴史知識を剥奪されたのだが、その際はすんなりと力を発動していた。
「アマテラスは俺の歴史知識を奪ったことがあっただろ? 制限はそこまでキツくはないんじゃないか?」
「知識を奪っても肉体に影響は
神様といってもそこまで自由がきくものではないということか。勉強になったが、一生役に立たなさそうな知識を頭に入れてしまった。いや、後々役立つ知識の可能性もあるから、わざわざ忘れる必要はないな。
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