伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その肆陸

 勝った! この勝負、俺の勝ちだ! モーティマーを人質に取って、アマテラスと話し合った。あの話し合いは予想外だったが、同盟を結ぶことが出来た。これで伊達家は繁栄はんえいの道を辿ることになる!

 その時、ホースティーと名乗る四天王のリーダーがアマテラスの目の前に立った。「アマテラス様」

「どうした、ホースティー?」

「外道な人間と手を組むなど、アマテラス様のご意志でしょうか?」

「そうだ。我の意志だ」

「見損ないましたよ」ホースティーは戦闘態勢に入った。「僕がアマテラス様に勝ったら、僕が太陽神となろう」

「反逆か。面白いぞ、ホースティー!」

 アマテラスは不気味な笑いをして、ホースティーに拳を振るった。

「ガハッ!」ホースティーは数メートル飛ばされて、血を吐いた。「ぢぐしょー!」

「ハッハッハッ! 次期太陽神の器はアーティネスだ。それに、もしアーティネスが継がないとしても、貴様みたいな技巧派四天王より力押しのモーティマーの方に跡を継がせたいもんだねぇ」

 俺は何が起こったのかまったくわからなかった。ホースティーが反逆して、あっさりとアマテラスに負ける。そしてこうなっているわけだが......何でこうなった?

 そうだ、景頼と成実に話しを聞いたら良いんだ! あいつらはどこだ──。

「若様」成実は俺の横でつぶやいた。「お話ししたいことがございます」

「うおっ!」

 急に現れたもんだから、俺は腰を抜かしそうになってしまった。「な、何だよ?」

「景頼殿の推測によるところが大きいですが、四天王のリーダーであるホースティーには何かあります」

 ホースティーに何かある。そこまでは俺にも容易に想像が付く。景頼がそこまで言い切るなら、根拠があるはずだ。

「根拠は何だ?」

「モーティマーが四天王筆頭なのに、ホースティーは四天王のリーダーに君臨くんりんしております。力以外の何かが、ホースティーにはあるということです」

 確かに、言われてみればうなずける。ホースティーはガルフのことを『力押し』と言った。つまり、ホースティーは力押しではない何かがあるということだ。

「成実。だったらホースティーの戦いぶりを目に焼き付けてみようぜ」

 俺と成実がアマテラスとホースティーの二人の方へ目を向けると、当然ながらアマテラスが圧倒していた。

 ホースティーの身のこなしはうまい。ただ、力押しのタイプではないことはハッキリした。力押しタイプなら、あんな動き方をする必要はない。

 ホースティーには力以外の何かがあることは確かのようだ。その何かがわからなけりゃ意味がねぇが、まあ大丈夫だろ。何とかなる。

 おっ! そうこうしている内に、ホースティーの奴がアマテラスに床に倒された。

「貴様の負けのようだ、ホースティー」

「まだ経験不足かな」

 ホースティーは負けたことに悔しがっていない。つまるところ、奥の手があってこその余裕よゆうだ。ホースティーは奥の手を隠してやがるから、負けても悔しくないんだ。

 俺は声をひそめた。「ホースティーを特に警戒しておけ」

「わかりました」

 あいつは相当強い。今回俺が勝ったのはマグレを掴んだからだけど、このマグレを掴むかなり確立が低かったようだな。あの五人は強いし、俺が勝てたのが奇跡だ。

「それと、アマテラスと同盟を組むことになったから、会議を開く! 景頼とお前、小十郎、、俺、アマテラスが参加だ」

「アマテラスが参加ですか?」

「まあな。これからはアマテラス殿と呼べよ」

「了解しました」

「成実は景頼、小十郎と合流して先に会議行ってろ」

「わ、若様はどうするんですか?」

「アマテラスと話す」

 俺は燭台切を腰にぶら下げ、アマテラスの元へ行った。奴はホースティーのしばりながら、俺を見た。「よう」

 俺は米沢城を指差した。「会議が開かれる。アマテラス殿に出席していただきたい」

「どんな会議だ?」

「これから両者でどうするべきか。それを話し合うための会議だ」

 アマテラスは迷っているようだった。首を傾げている。「出席はホースティーにさせる。我はモーティマーの回復に力を使うから、出席する気力がなくなることだろう」

 ホースティー? 奴は裏切ったばっかだろ!?

「失礼ながら、ホースティー殿は今し方裏切った者だと思いますが?」

「安心しろ。モーティマーは強さだと我の次だが、立場の場合は二番手がホースティーだ。お前はヘルリャフカに勝ってんだから、ホースティーごときは余裕で倒せるだろうぜ」

「いや、しかしだな......」

「なら、ホースティーと戦ってみろよ。奴は簡単に倒せるぜ」

 するとそれを盗み聞いていたのか、ホースティーは力を振り絞って構えた。「どこからでも良いですよ」

 予想外の状況にまどうが、ここでホースティーと戦えば奴の奥の手がわかるかもしれない。こちらとしても、メリットが大きい。

「わかった。遠慮えんりょなくやらせてもらう」

 俺は燭台切を握り、刃先をホースティーに向けた。その途端とたん、背中に衝撃が走る。ホースティーは一瞬で俺の背後に移動して、背中を攻撃したんだ。まったく見えなかった。

「がっ!」

 ダメージが大きすぎて、俺はその場に倒れ込んだ。

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