伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その肆漆

 何が起こった!? 目の前にいたはずのホースティーに一瞬で背後を取られて、攻撃されたんだ。今は俺が倒れている。

 あの高速移動がホースティーの奥の手だってか? だったら、その高速移動を封じれば良いだけだ!

 ムクリと起きあがり、ホースティーから離れて燭台切を握りしめた。

「僕の攻撃を受けても、起き上がりますか。これは手強いですね」

「はっ! 大した攻撃力もないくせに」

「まあ、僕は技巧派の四天王なので」

 高速移動の封じ方......。俺が神経をまして、ホースティーの動きを目で追えば良いんだ。

 ホースティーを見て、行動を停止する。すると、ホースティーは動き出した。かなり速いが、あとは近づいてくるホースティーを斬るだけだ。余裕だ──。

「ぐっ!」

 急に消えたかと思ったら、ホースティーは目の前に現れやがった。あと少し反応に遅れたら、攻撃されていた。燭台切で防げて良かった。

「反応が早いですね」

「まあな!」

 こいつの攻撃を防ぐには、防御壁を俺の周りに展開する必要がある。ただ、それをすれば神力の消費が多すぎる。結果としては、防御壁を維持いじする力がなくなってやられてしまう。

 考えるんだ。......奴を、ホースティーを倒すには何をすれば良いんだ!?

「すきを見せるのは良い手とは言えません」ホースティーは俺の顎を蹴り、俺を遠くへ飛ばした。「痛いですか?」

「やりやがった! テメェ」

 瞬発力で飛び出すと、俺はホースティーに飛び乗って床に張り倒す。燭台切を逆さに持つと、剣先を目の少し手前で止めた。

「ホースティー、貴様の負けだ」

「ハハハ。僕の負けではないよ。僕を舐めないでもらいたいね」

 ホースティーは俺を殴り、姿をまた消した。地上ではが悪いから、空中に飛んで防御壁で足場を展開する。そこに着地し、空中でホースティーの様子を伺った。

「ホースティーがいない、だと?」

 俺は周囲を見回すが、ホースティーの姿は見えない。もっとも、八方を警戒するも姿は見えないけれど、気配だけは感じられる。近くにいることは確かだ。どこにいる。

「上だよ!」

 声がして上を向くと、ホースティーは上空で両手を振りかぶっていた。落下速度を加えて俺を攻撃するようだ。即座に燭台切でガードする。

「痛っ!」

「落下速度は伊達じゃないよ!」

 ホースティーは燭台切をすり抜けて、俺の頭頂部を叩いた。頭が揺れてあまり思考が回らなくなったが、ここぞとばかりに俺はホースティーの顎を下から突き上げて殴った。

 両者は高所から地面に落下。意識を失ったようだった。


 両者ともにダウン。相打ちとなった。

 アマテラスはガルフを呼ぶ。「ガルフよ。我はモーティマーを回復させたから余力がない。貴様が二人を回復させるのだ」

「ああ、仕方ねぇか」

「頼むぞ」

 ガルフは右手で政宗の頭を、左手でホースティーの頭を掴んだ。そして力を込め、回復を行った。

「これで終わりだ」

 ガルフは二人の頭を手から離し、その場を去った。ガルフが手を離したことにより、政宗とホースティーの頭は地面に叩きつけられた。

「ふむ」アマテラスはホースティーの体を持ち、肩に置いた。「政宗の次にひかえる二番手の立場の奴は誰だ?」

「私でございます」

 顔立ちは政宗や成実、輝宗にも似ている青年が前に出た。歳は政宗より多少食っているようだ。

「貴様、名は何と申す?」

「伊達氏一門筆頭、石川いしかわ氏の石川昭光あきみつにございます!」

「石川昭光、か。ホースティーとモーティマーを寝かせたい。城の部屋を貸していただきたいんだ」

「わかりました。案内いたします」

「では」成実も昭光の隣りに並んだ。「若様は私が運びます」

 石川昭光は政宗の血縁者。ゆえに、伊達氏一門に属している。その一門筆頭こそが、石川氏。

 成実は亘理わたり伊達氏の初代当主。ただ、亘理伊達氏は1603年に始まるから、まだ早い。けれど、伊達成実は一門の中でもそれなりの地位である。もちろん、以前も述べたように政宗の血縁者だ。

 成実は政宗をかついだ。「小十郎殿!」

「お呼びですか?」

「若様を運ぶのを手伝ってください」

「わかりました!」

 二人は政宗を丁寧に担ぎ、部屋まで運んだ。


 目が覚めて辺りに目を配ると、枕元に成実がいた。俺は頭を右手で押さえながら、体を起こした。

「何がどうなったんだ?」

「若様とホースティー殿は相打ちで、両者ともに倒れました」

「そうか」

 ホースティーの高速移動は、俺の目では追えなかった。視力に自信はあったが、奴は速かった。

「若様。これから予定していた会議はどういたしますか?」

「これからすぐに会議を開こう。ホースティーは起きているか?」

「はい」

「なら」俺は布団から抜け出して、身だしなみを整えた。「会議へ行こうか」

 だが、成実は部屋を出ようとする俺を止めた。「お待ちください」

「どうした?」

「ホースティー殿の奥の手は高速移動ではないでしょう。私は地上から見ていたからわかりますが、ホースティー殿は途中で姿を完全に消しています」

「じゃあ、ホースティーの奥の手は瞬間移動ってか!?」

 俺は驚きの余り声が出なかった。もしホースティーの奥の手が瞬間移動なら、俺と相性は最悪だ。力押しである俺は、スピードに自身がない。

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