伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その肆伍
アマテラスは敗北をしたような気持ちだった。四天王筆頭のモーティマーがボロボロで、しかも伊達政宗に人質に取られている。
これは一時的に友好な関係にならなければならない、アマテラスはそう悟った。「我々の負けだ。モーティマーを解放してほしい」
「信用ならねぇ」
長年信頼を築こうとしたことのないアマテラスは、政宗に偉そうに接してしまった。決して、アマテラスがいつも偉そうにしているわけではないのだ。
ただし、偉そうにしている、とも取れる。アマテラスには神界の頂点というプライドがあり、誰かに
「わかった。......モーティマーを人質に取っていて良いから、我々二人で話しをしよう」
「それで良いんだ」
伊達政宗は不気味な笑みを浮かべながら、モーティマーの喉元に当てた刀を離すことなく、アマテラスの元に近寄った。
「二人で話しをしたい。だから、これより結界を張る!」
アマテラスは半径五メートルに結界を展開し、外から内部が見られないような工夫をして防音結界まで展開した。
「若様!」景頼は陽月斬を振り回し、結界を叩き壊そうとした。だが、強固な結界にはヒビすら入らなかった。「大丈夫ですか!?」
四天王の一人で、ガルフと名乗る男が鼻で笑った。「おいおい、アマテラス様の結界がそう簡単に壊せるわけねぇだろ」
「あなた方は負けたのです。口は
「あ? 勝ったからって負けた方が弱者なわけじゃねぇからな?」
「ええ、強者が勝つわけではありません。勝った方が勝者です」
「チッ! そのなまくらを使って俺に勝ってみろよ。お前らが勝ったのは政宗がモーティマーを人質に取ったからなんだよ!」
「なまくら? ああ、この陽月斬のことですか?」
「当たり前だ! 刃先が
「では、対戦を始めましょう!」
陽月斬をなまくらと呼ばれたことに珍しく腹を立てた景頼は、陽月斬をガルフに向けた。
「はっ! 面白いな!」ガルフは剣を取り出した。「お前らの使うような日本刀とは形状が違うだろ? 日本刀と違って、刃が真っ直ぐ伸びてんだ。名を、神剣ガルフと言う」
神剣を振り下ろしたガルフだったが、景頼は陽月斬で受け止めた。
「はぁ!? 何でなまくらが神剣を受け止められてんだ!」
「陽月斬はわざと切れ味を悪くし、重さに特化させた刀。故意になまくらとなったものです。若様の燭台切は鋭利さと重さを兼ね備え、技巧派にしか使いこなせないものなのですが、この陽月斬は重さによって相手を叩き潰すもの。つまり、力押しの私に向いた刀です!」
「何で、何でだ!? 何で俺が!」
陽月斬は神剣を弾きかえし、床に倒れたガルフの心臓を捉えた。「このまま降参をしないと、あなたの心臓をえぐりだします」
「俺は降参はしねぇよっ!」
すると、四天王の一人がガルフに近づいた。「力押しのあなたが力押しで負けた時点で勝敗はついています。そもそも、ヘルリャフカを倒せなかった我々がヘルリャフカを倒した方々に勝てるわけがありませんでしたよ」
「くそっ!」
ガルフは立ち上がり、怒りながら姿を消した。
景頼は戦いを止めてくれた四天王に顔を向け、頭を下げる。「ありがとうございました」
「僕は四天王のリーダーであるホースティー。よろしく」
ホースティーが握手を要求すると、景頼もそれに応じた。ホースティーは手を離すと、そのまま他の四天王と合流した。
景頼は陽月斬を鞘に入れると、結界を見直した。この奥で何をしているのか。陽月斬で壊せなかったのだ。景頼は成実達の集まる場所まで行き、
「景頼殿」成実は四天王の様子を
「でしょうね」
「気付いていましたか」
「先ほど手合わせをしたガルフは単に戦いたかっただけでしょうが、ホースティーと名乗っていた四天王のリーダー。あの人の目は何かを企んでいます。そもそも、若様が人質にしたモーティマーが四天王筆頭だとしたら、四天王のリーダーのホースティーは力以外の何かがあるはずです。その何かが、彼を四天王のリーダーにした要因だと考えられます」
「なるほど。では、モーティマーやガルフより、ホースティーを警戒していた方が良いということですね?」
「そういうことになります。アマテラスにとってはモーティマーよりホースティーの方が大事だから四天王リーダーに命じたと考えられますし、ホースティーの未知数の何かが余計気になります。ホースティーが切り札の可能性もありますし、大人数にホースティーを見張ることを指示してください」
「はい!」
成実は自分の配下を集め、ホースティーを警戒することを指示した。景頼は陽月斬をいつでも握ることが出来る体勢で、ホースティーを見ていた。
その時、アマテラスが展開した結界が解除されて政宗が出てきた。「
景頼は絶句した。非友好的なアマテラスとどう話せば、同盟を組めるのだ!?
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