伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その肆肆

 燭台切に異常はない。これなら五人とも戦えそうだ。アマテラスには防御壁を無効化されるし、江渡弥平の時と同じだ。神力に頼らず、己の実力だけで頑張るしかない。やってやるよ。

「成実、景頼、ホームズ! 俺に続けっ!」

 俺は燭台切を握り、アマテラスに正面から突っ込んだ。バリツを見習い、俺は燭台切の剣先をアマテラスに向かって突いた。

 アマテラスはそれをかわし、空高く飛んだ。

「自由落下は」俺はアマテラスの真下に構えた。「危険すぎないか?」

「誰が自由落下をすると言ったんだ」

 手を広げて下に向けると、アマテラスは防御壁を展開した。俺が使う防御壁と同じ原理のようだ。

「貴様!」

「面白い技だったから、真似させてもらったよ」

 その防御壁を足場に、アマテラスは様々な場所に高速移動した。飛んだ先に防御壁を展開して反射し、高速移動を可能としているのだろう。これでは、どこから攻撃が来るかわからない。

「お前の負けだ!」

 高速移動中に、俺は背後から攻撃を受けた。「ぐああぁ!」

 ホームズは俺が危険だと察知して、ステッキを駆使してアマテラスを叩き飛ばす。

「動きは政宗がしたものと同じだが、力が強いから攻撃力も高いわけか」

「まあね。力押しもバリツの特徴なんだ」

 ホームズは牽制し、敵の注意を引きつけた。その間に俺は距離を取り、うまく体勢を整えた。

「イタタタタ」

 アマテラスに殴られた腹はものすごく痛い。このハンデを持ったままのでの戦闘は危険だ。痛みがなくなるまでは仲間の守りにてっすることにしよう。

 周囲を見回し、激しい攻撃を受けている部隊を探した。どうやら、遠距離射手部隊が狙われている。敵方も遠距離から攻撃をしているし、あいつらを守ってやらない手はない。

 先頭の忠義に近づき、防御壁を展開する。この距離なら無効化される心配もない。

「助かりました、若様!」

「ああ、痛みがなくなるまでは防御をするから安心しろ。その間、忠義の腕で奴らに矢を撃ってくれ」

「わかりました」

 忠義は非常に優れた眼を持っている。その眼で敵の位置を正確につかみ、兼三が作った高機能の弓矢を使い、その腕で間違いなく敵を射てきた。忠義は弓矢で右に出る者はいない。それほど遠距離での戦闘に向いている。

 発達した右手で弓を引き、矢が放たれた。その矢は、敵方で一番巨大な奴に直撃した。そいつは矢が刺さり、不意打ちだったためにダメージを食らった。

「さすがは忠義だ」

「いえ、矢に毒物が塗られていたからこそです」

「忠義の腕があってこそ、矢がうまく敵方に刺さるんだ。少しくらい過信しても良いんじゃないか?」

 忠義は顔を赤くして、首を激しく横に振った。「若様にお褒めいただき光栄ですが、自分など大したこともありません」

「そうか? けど──」

 先ほど忠義の矢を食らった敵方が、いつの間にかこちらに移動していた。「戦闘中に気を抜くとは、面白い奴だ。我は四天王の一人であるモーティマーだ。四天王最強の肩書きを持つ」

 アマテラスの付き人みたいな四人は四天王だったのか。いや、今驚くべきはそこじゃない。目の前にいるモーティマーは四天王最強らしい。アマテラスに次ぐ二番手の力を誇る可能性がある、ということだ。

「忠義、下がれ!」

「はいっ!」

 忠義ら遠距離射手部隊は後退し、モーティマーと一対一をすることになった。

「我とタイマンをするとは、良い度胸じゃないか」

「モーティマーだかなんだか知らんが、燭台切を甘く見るんじゃねぇぞ」

「我が甘く見ているのは、貴様だけだ」

「あぁん? テメェ、俺が優れているんじゃなくて、この刀だけが優れているとでも思ってんのか?」

「貴様自身の突出した部分は歴史知識ぐらいだ。アマテラス様とまともに戦えていたのは、その刀のお陰だ。防御壁だって、貴様自身の力ではない」

「チッ!」

 俺は思いきり燭台切を振り下ろした。しかし、モーティマーはそれを手で受け止めた。「ふむ、この刀は重さと鋭利さによって、触れるだけでかなりのダメージを与えられるのか」

「それは俺が考えついたことなんだがな」

「やはり貴様は頭だけしか優れていないのか」

 キレた。ここまでキレたのは久しぶりだ。それほどのことを、モーティマーは俺に言ったのだ。そして、怒りにまかせてモーティマーを殴りつけた。

「ぐはっ! なぜ、貴様ごときがこんな攻撃力を!」

「手を防御壁でおおって殴りつけたからだ!」

 モーティマーは腹を抱え、猫背になっていた。俺はここぞと言うばかりに燭台切で斬りつける。

「ああああぁぁぁーーーーー!」

 血はモーティマーの体を覆えるほどの量が流れた。戦のために準備して持っていた縄を取り出し、モーティマーの腱を全て切り裂いてから縛り上げた。これで人質が手に入ったというものだ。

 アマテラスを見つけると、燭台切の剣先をモーティマーののどに当てて叫んだ。「降参をしないとモーティマーの喉元を掻き切る!」

 それを聞いたアマテラスは、モーティマーが人質に取られていることを知って目を大きく見開いた。何はともあれ、これで俺達の勝ちになるはずだ。

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