伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その肆参

 いや、もしかすると、アマテラスの眼力の金縛りは精神的な何かに起因きいんしているんじゃないか? だとしたら、精神を強く保てば金縛りは解消出来るはずだ。

「ぐおおおぉぉ!」

 右足が前に踏み出した。腕も動く。どうやら、アマテラスの眼力には精神的な恐怖を相手に与えて動けなくする力しか宿っていないようだな。金縛りってのも、そこまで脅威じゃない。

「ホームズ! 連携攻撃をやるにしても危険すぎる!」

「じゃあ、どうすると言うんだよっ!」

「重臣を連れてこい! 権次から燭台切も受け取ってくるんだ!」

「──ああ、わかった!」

 ホームズは俺にステッキを渡し、城の中へ入っていった。

「俺はバリツが使えないんだが」

 右手にステッキ、左手に刀を握った。これなら、タイマンは出来そうだが、五人一気に攻められたら即死レベルだ。

 アマテラスは右手を振りかぶった。「そちらから攻撃してこないなら、こちらからいかせてもらうよ」

「くそっ! どうにでもなれ!」

 前に踏み込むと、まずは刀で脳天を狙った。だが、軽く右手で受け止められた。

「その程度の踏み込みの場合、力は大して掛からない。これっぽっちの攻撃でダメージは受けんよ」

「なっ!」

 次に、ステッキを使った攻撃をするために、ホームズのバリツの動き方を思い出した。ステッキはまったく鋭利ではないが、殺傷能力を生む方法がバリツだとホームズは語った。その攻撃は......あれか!

 アマテラスから離れ、先ほどよりも勢い良く前に踏み込む。そしてステッキの先をアマテラスに向け、そこから目にも止まらぬ早業はやわざで突いた。突き技こそバリツの真骨頂!

「ガハッ!」

 アマテラスの腹にクリティカルヒットした。バリツ、その名は伊達ではない。これは応用出来そうだな。

「どうした、神界最強の男なんだろ? 本気で来いよ」

「貴様ぁ!」

 アマテラスは再度振りかぶり、大剣を召喚して握りしめた。その大剣は、景頼の陽月斬より大きかった。

「ちくしょう!」

 燭台切さえあれば、まだまともな戦いが出来たはずなのに。こうなりゃ、バリツの完全再現しかないようだな。

 刀を捨てると、ホームズのステッキの持ち方を真似る。ステッキの中心部分は切り抜かれてなまりが流し込まれているから、鈍器どんきにもなり得る。勝機があると良いが。

「刀を捨て、そんなステッキで我に敵うとでも思っているのか? 調子に乗るなよ?」

「乗ってねぇ。バリツは最強の技ってだけで、俺はそれを体得したまでだ」

「ふん! 我が大剣で叩き潰す!」

 大剣が振り下ろされた。俺はそれをステッキで受け止めて、軌道を反らす。だが、さすがはアマテラス。そのくらいでは体勢を崩さない。

「どうした? 大剣の攻撃は俺に効いてないぞ?」

 ステッキを刀のように握り、上空に飛んだ。次は重力と落下速度、俺の体重とステッキの重さ、それらを合わせた突き技を頭に食らわせる。一発KOは確定だ。

「俺の勝──」

 アマテラスは俺の腹に拳を突き、俺を地面に叩きつけた。「攻撃に集中し過ぎて防御がおろそかになっていた。すきを突いて狙わせてもらったよ」

「ぐ......」

 寝そべりながら腹を押さえた。かなり痛い。防御壁の展開を完全に忘れていた。

「四天王達よ、とどめは我がやる」アマテラスは倒れている俺に近寄り、拳に力を込めた。「さらばだ」

 間一髪で防御壁を展開した俺は、アマテラスの攻撃を防ぎきることが出来た。

「神力を使ったか。だが、貴様以上の力を使って水を変化させれば、その防御壁は崩壊する」

 アマテラスが防御壁に神力で命令を上書きし、防御壁を無効化させた。俺はステッキを掴み、何とか這い回ってアマテラスから逃げようとした。

「甘いぞ、伊達政宗!」

 本気の一撃は、俺に目掛けて飛んできた。もう終わったと諦めたが、目の前に燭台切が現れた。好機とみてそれを手にし、鞘から引き抜いてアマテラスを振り払った。

「その刀......燭台切か。よもやこれほどの攻撃力を誇るとは」

 アマテラスの腕からは、赤々とした血がトクトクと流れ出ていた。

 燭台切が飛んできた方向を見ると、成実がいた。その後ろには、景頼や二階堂、忠義などの力押しの重臣達がいた。

「「アマテラス様、助太刀すけだちいたします」」

「よい! これは我の戦いだ。手を出すんじゃない!」

 金剛力士像にも似たアマテラスは、仁王立ちをする。大剣を二回ほど振り回し、目は掛かってこいと挑発している。

 成実は刀を構え、飛び出す体勢にする。俺は燭台切でアマテラスを威圧しつつ、皆と合流した。

「政宗」ホームズは俺の肩を叩いた。「僕のステッキを返してくれ」

「ああ、これか」

 ホームズはステッキを受け取り、ペン回しのように扱って剣のように両手で構えた。

 新たに作られた燭台切を確かめる。重さ、肉置の厚さ、長さ、全て申し分ない。刀身はしっかりしているし、以前より柄が持ちやすくなっている。容易に折れることはないはずである。

 これは完璧だ。ちゃんとバージョンアップしている。触れただけで全てを切り裂けそうだ。

「ホームズ、成実、景頼は俺と連携攻撃! 忠義は遠距離射手部隊を指揮しながら離れた位置で矢を放て! 二階堂は他の部隊をまとめろ、指揮権をたくす!」

「「はっ!」」

「生きて明日を迎えよう!」

 俺達は例外なく、神界最強であるアマテラスを殺しに掛かった。

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