伊達政宗、輝宗を殺すのは伊達じゃない その参陸
伊達政宗、倒れたり! 何者も近づけさせない見えない壁のような妖術も切れ、彼を守るものは全て消えた。刀は深く胸に刺さり、政宗はほんの少しも動かなくなった。
成実は
「成実殿! 若様は無事ですか!?」
「胸が貫かれて出血が止まりませぬ! 直ちに城に戻り、医者からの治療が必要です!」
「では、私が
景頼は刀を鞘に入れて、
「私が時間を
「感謝いたします!」
景頼は引き金を引いて拳銃から弾丸を放ち、正確に的を射た。殺しまでにはいかないものの、行動不能にするにはちょうど良い威力だった。
成実は政宗を抱きかかえると、急いで馬の元まで走った。するとその進路を
この特注の刀は槍のように振り回すだけで威力を
「いけえええぇぇぇー!」
また、景頼は政宗から教わった構え方がある。重心が地の底にあるような構えで、攻撃を受けようが倒れることはない。
変わり種の刀を振り、景頼は敵方の中へ突進していく。成実は景頼が注目を集めている間に
政宗を馬に乗せ、成実は馬を走らせた。景頼は刀を振り回しながら、成実達が馬を走らせて城へ向かったことを確認する。一安心をすると、刀を再度振り回す。成実と政宗が前線から離脱したため、景頼は主力として大いに活躍しないとならない。
大きいとも小さいとも言えない、つかみ所のない目を、景頼は
政宗を馬に乗せた成実は、城への最短ルートを
「若様、しばらくお待ちください!」
「な......成実か」
「話さないでください! 出血が酷くなります!」
「ああ、そうだな」
政宗は手を動かし、胸に刀が刺さっていることを確かめた。
「どうしましたか、若様?」
「俺、死ぬのか?」
彼の頭の中は、死ぬ、という恐怖が
「若様は死にません! 城に到着するまで耐えてください!」
「......おう」
胸に刺さった刀を抜くと、さらに出血が酷くなってしまう。だから、抜くことは出来ない。政宗は痛みを
「成実。馬が走る衝撃で、患部が痛いのだが」
「!?」
この状況にどう対処するべきか迷った成実は、患部を直接押さえながら政宗に我慢してもらうことになった。
「いっ!」
「ど、どうしました!?」
「痛いんだ......」
「すみません!」
そういうことがあり、馬は何とか米沢城に戻ってきた。成実は政宗を丁寧に降ろし、医者を呼び寄せた。
「医者! 医者はいるか!?」
一生懸命な成実の叫び声に、城に居合わせた者達が駆けつけた。そして医者が呼ばれ、政宗の患部を見る。
「これはいけない! すぐにでも治療室に連れて行きましょう!」
政宗は家臣らに連れられて、治療室に運び込まれた。医者は何をするべきか見極め、治療を
治療室には医者以外にサポートをする者が数人だけ残り、他の者は追い出された。成実は、子供を出産する夫のごとく、治療室の前を歩き回った。
治療室の中からは、政宗の叫び声が聞こえてきたようだ。成実は治療室の扉を叩いた。
「若様! 若様っ!」
成実の声に、反応する者は誰もいなかった。やがて治療が終わり、医者が治療室から廊下に出てきた。
「若様は!? 若様は無事ですか!?」
「一応、最善は尽くしました。ただ、奇跡ですよ」
「へ?」
「若様の胸に刺さっていた刀は、ギリギリのところで脈や心臓を外して
「わ、わかりました」
成実は安心するのと同時に膝から崩れ落ちて、肩を落とした。
医者はニヤリと笑みを浮かべながら、その場をあとにした。
「わ、若様!」
思考回路が正常に動き出すと、成実は治療室の中に飛び込んだ。この治療室も政宗が考案した技術などが盛り込まれていて、これからも若様に習うことはたくさんありそうだ、と思いながら成実は政宗に歩み寄った。
政宗は息をしている。動いている。成実はそれを自らの目で見ると、手を腰に回して体をそり返す。そして、ため息をもらした。
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