第二話 晴れ舞台は遠かった…


 それぞれの部活を選んだわたしと亮平だけど、もちろん現実は甘くない。すぐに表舞台が用意されたわけじゃなかった。


 ずっとダンスをやっていたり体操をしていた子に比べて、わたしの体はガチガチに固いうえリズムも無茶苦茶。これをほぐすための柔軟体操やリズム感を養うためのリトミック。そしてなによりも全身の体力を作るための走り込みをずっとしていた。


「先輩、ランニング行ってきます!」

「気を付けてね」


 学校のグラウンドを出て、海沿いのロードを走っているときだった。


「ほら、遠藤、あと三本!」

「はいっ!」


 海岸の砂浜で、やっぱり体力作りのために、腰にロープで結びつけたタイヤを引きながらダッシュしている亮平を見た。


 軟式をやっていたとは言っても、中学生の頃も背の順はクラスで前から数えた方が早いくらいの小柄だったから、いろいろとハンデも多いはずなのに……。



 結局一年生ではレギュラーの座を掴むことは出来なかった。

 それでも、亮平とわたしはいつの季節も海岸を走り続けた。



 そう、絶対に同じ舞台に立つんだって。

 わたしもその頃には、同じ夢を追いかけるようになっていたから……。





 わたしが二年生の夏、引退する間際の三年生の先輩が声をかけてくれた。


「中村さん、本当によく頑張ってる。今の三年生は、みんな中村さんを来年のセンターに置こうって思ってるんだよ」


 いつも一番後ろの方で先輩の姿を見ながらの応援だったから、センター、つまり一番前で選手たちに声を届ける事が出来る。


 嬉しさの反面、それに甘えちゃいけない。それまで以上に練習に力を入れた。




 いろいろな部活にお邪魔しては、どんな応援がいいのか聞いて回った。


 どんな時に声を張り上げていいのか、その逆は? 吹奏楽部はどんな曲を使うのか?

 特に野球部は個人個人でリクエスト曲も違うから、攻撃の時は一人一人で振り付けも変わる。


 でも、それはあくまでベンチ入りしている十八人の選手のお話。


 その年も亮平の名前はその中には入ってこなかった。

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