第6話ダメヒロイン誕生【2】

~~~坂月 結葉のプロローグ~~~



幼い時から全てに完璧を求められていた。

両親は厳しく、年相応の遊びに触れることが出来ず、周りからの評価を必然的に気にするようになり、いつの日か本当の自分がわからなくなっていった。


唯一、そんな私を狭く、窮屈な檻から解放してくれたのが、五つ上の兄だった。


兄は、基本的に明るく周りからも好かれやすい性格をしていた。


そんな兄に、私は憧れを抱いていたが、両親は兄を良く思っていなかった。


兄は勉強と運動が得意ではなく、坂月家では落ちこぼれの部類で、親族から罵られたり、馬鹿にされているところを見て私は嫉妬心を抱いていた。


それでも私は、必死に努力をしている兄が大好きだった。


しかし神は私の大好きなモノを全て奪った。




兄は、不慮の交通事故で十二という若さでこの世を旅だった。 



━━━━━兄がいなくなった私の心のよりどころがなく、物事に興味を示さなくなっていった。



そんな時、雲ひとつない群青色の空の日に兄にそっくりなあなたを見つけた。


もう失いたくない、もう1回味わいたい、だから私はストーキングを始めた。





━━━━━「うん。大好き。そのアホ毛が」


「・・・はぁ?」


その時の俺の脳内サミット自力で解決できるようなものではなかった。


「お前、頭いかれてるのか」


「それはあなたもおなじでしょ。だって公共の場であんな顔しながら妄想してるんだもの。通報されてもおかしくないわよ」


ぐうの音も出ない。

やはり、人に見られたのはまずかった。


「いや、ココ最近は妄想する回数だって減ってきてるんだ」


「はぁ・・・。どうしてそう簡単に嘘がつけるのよ。もう二か月間ずぅーっとしてたじゃない」


「だよな。そうだったわ。あははー」


「もう困るわね。うふふ」



・・・ん?おい、いまなんつった?

今とんでもないことを聞いてしまったような・・・。


まず状況を整理しよう。


『さっき坂月は俺の” アホ毛 ”が好きだと言った。ここも問題だが、まだ置いておこう。もっとやばい問題点がある

それは、俺が二か月間ずぅーーっと妄想していることを知っている事だ。

なぜそこが問題なのか、それは坂月本人に聞けばわかる事だ』



「坂月、まさかお前、俺の事ストーキングしてる?」


空気は重く深刻な状況になると思っていたが、坂月は朝飯を食べる感覚でこう答えた。


「んー、ストーキングって言うのかしら?ただ毎日あなたが家に着くまで観察しに、ついて行ってるだけだけど?」

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