さすがに引くわ
小山田の家も僕や愛乃、龍樹と同じ住宅街の中にあり、愛乃の家から歩いて5分ほどの場所だ。
小山田宅に着いた愛乃がインターホンを鳴らす。
『はーい。』
「あ、あの春日と申しますが…」
『愛乃さん?』
「は、はい…(愛乃『さん』?)」
『すぐ開けますからちょっと待って下さいね。』
インターホンが切られる。
「ねぇ翔馬…今の…」
「うん…」
ガチャっと玄関のドアが開くと、中から小山田が出てきた。
「お待たせしました!あ!鳥居君もいらっしゃい!」
こう…何て言うの?
『爽やか』とか『好青年』って言葉がピッタリの小山田って違和感しか無いんだけど。
「どうぞ上がって上がって!」
ドアを全開にして僕と愛乃を招き入れる。
「ほ、ホントに小山田君…だよね?」
「自信無いけど…多分そうだと思う…」
僕と愛乃は家の中へ入ると、綺麗に整頓された小山田の部屋に通された。
「母が出てるのでこんなものしか出せないけど…」
テーブルの上に綺麗な色をした日本茶の入った湯飲みが置かれた。
僕の前に置かれても飲めないんだけどね。
そのテーブルを挟んで、僕と愛乃の対面に小山田が座る。
「最初に、ごめんなさい!」
小山田が深々と頭を下げる。
「え?」
「な、何?お、小山田君どうしたの?」
ゆっくり頭を上げる小山田。
「まず愛乃さん。」
「は、はい…」
「僕は随分愛乃さんに不快な思いをさせてしまいました。もう二度と迷惑は掛けません。ごめんなさい。」
「い、いえ…その…気にしないでね。」
「ありがとうございます!…そして鳥居君。」
「うぇ?」
「あの時、酷い事をしてしまってごめんなさい。」
「い、いや…別にそれも気にしなくていいよ。」
「ありがとうございます!良かったぁ…それから…」
まだあるのか?
「魔呼さん…は?」
僕と愛乃の表情がきゅっと締まる。
「何かあったんですか?」
小山田が心配そうな顔をする。
「実は…」
僕は小山田にここまでの経緯を簡単に説明した。
「そんな事が…」
「うん…あくまでも可能性なんだけど『見られなくて』『触れられる』のが小山田だけじゃないかと…」
「なるほど…確かに理に適ってますね。」
「でも…かなりリスクはあると思うんだ。」
溜息を吐く僕と愛乃に、小山田は爽やかな笑顔を見せた。
「僕は魔呼さんにお礼を言わなきゃいけないんです。」
「お礼?」
「僕の闇を払ってくれたお礼を。」
「けど…」
「大丈夫です。僕に任せて下さい!」
何だろう…この頼もしさは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます