愛乃の思い
結局何も掴めず、おまけに魔呼まで置き去りにして戻って来てしまった。
正直あそこで魔武と一戦交えたとしても、恐らく触れる事すら叶わず敗れていただろう。
いや、現世に戻れて来れたかどうかすら怪しい。
情けない気持ちを抑え込んだまま、僕と愛乃は愛乃の部屋に戻った。
「でも仮にあいつが愛乃の事が見えないとしても、お互いに触れる事すら出来無いだろうからどうにもならないよ。」
「じゃあ諦める?」
「いや、まだあいつから何も情報は得られてないからね。」
「そうじゃなくて。」
「え?」
愛乃の口から予想外の言葉が出る。
「魔呼さんを諦めるのか?って聞いてんの。」
「は?」
「あんな奴に魔呼さん取られたまんまでいいの?」
何を言い出すんだ?
「い、いやいや!何でそうなるんだよ?」
愛乃は真剣な目をして僕を見て言った。
「そりゃね、いきなり現れて突っかかって来るんだから居なくなって清々してるのが正直な所…でもね翔馬…魔呼さんに何度も助けて貰ったんでしょ?魔呼さん居なかったら例え幽霊でも翔馬と二度と会えなかったんだよ?そんな魔呼さん見捨てていいの?諦めていいの?魔呼さん待ってるよ…翔馬が来るのを…」
最後は涙を浮かべて訴えるような口調になっていた。
「愛乃…」
「私分かるもん…同じ人を好きだから…分かるもん…」
僕は愛乃の頭を撫でる仕草をした。
愛乃に触れられないのは分かっているけど…。
「分かってる…愛乃…ありがとう…」
だが見られただけで身動きすら取れなくなる相手にどうしろと…。
少し落ち着いた愛乃と考えを巡らせる。
「けど何で愛乃は見えないんだろうな?」
「うーん…『純粋だから』かしら?」
さっきまで泣いてた子が真顔でそれ言うか。
「ま、まぁ純粋だから見られないとして…触れられない事の解決にはならないよね…」
「うん…ここまで翔馬に触れたのって…魔呼さんと小山田君だけ?」
「あ~そうだなぁ…」
ん?
小山田?
「「それだぁぁぁ!!!」」
小山田!
唯一あいつは人間でありながら僕に触れた。
魔呼にも触れられていた。
そして魔呼に『ちっさい小山田』を抜き出されて聖人化してた筈。
あいつならもしかしたら…。
「いや…いくら触れる事が出来ても、魔呼にすら手も足も出なかったんだぞ…」
「魔呼さんは小山田君が見えてたのよね?」
「ま、まぁ…そうだけど…」
「ダメ元で話してみようよ。」
そうと決まれば早速小山田の家に行ってみよう。
小山田がどう出るか分からないけど。
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