魔武の存在
「アイツの名は
「魔呼さんの所にも幼馴染って概念あるんですね。」
「そりゃ私たちだって土や埃から生まれたわけじゃないもの。ちゃんと父も母も居るし、普通に近所付き合いとかもあるわよ。」
僕と魔呼の真下を歩く愛乃が口を挟む。
「じゃあ小さい頃に結婚の約束とかした仲良しなんでしょ?ステキネー。」
殆ど棒読みである。
魔呼がどんよりとした顔になっている。
「何万年も前の話よ。」
約束してたんだ。
てか『何万年』って…魔呼は一体何歳なんだ?
「ここから行けるわ。」
「え…ここ?」
三人がやってきたのは、前に龍樹と来た公園にある小さな神棚の祠…の裏側。
魔呼が祠の裏側に手を翳すと、小さな黒い穴がそこに現れ、やがて人が通れる程の大きさになった。
「この先よ。はぁ…行きたくないけど翔馬の為だもんね…」
「ありがとう魔呼さん。ホント感謝してるよ。」
「あん…そんなそんなそんな…」
頬を赤らめ…って分からないけど、体をくねくねさせて僕に寄り添ってくる魔呼。
「ええぃ!止めんかっ!」
愛乃が僕と愛乃の間に入ろうとするがそのまま通り抜けてしまう。
「翔馬も翔馬よ!そういう気のあるような言い方するな!」
「気があるからそういう言い方してくれるのよん。」
「こんの…ババアめ…」
チリッ!
愛乃と魔呼の間に火花が飛ぶ。
「やめんか!」
二人を制しつつ、僕は黒い穴の奥へと足を踏み入れた。
愛乃と魔呼が僕に続いて入って来る。
中は中世を思わせるような古い感じの街並みだった。
両脇に木々が並ぶ石畳の通り道。
その突き当りに、鉄柵で出来た門扉が見え、奥には古びた洋館が建っている敷地があった。
「ここが魔呼さんの住んでいる街…」
「そう。そしてあれが魔武の家。」
門扉の前まで来ると、洋館から一人の男が此方に歩いて来るのが見えた。
深く被ったフードから見える銀髪。
あいつが魔武か。
門扉を挟んで僕ら三人と魔武が対峙する。
「誰かと思えば魔呼ではないか。愛しのボクに会いに来たんだね?」
「んなわけないでしょ。」
「照れずとも良い。いずれ夫となるボクに気遣いは無用だよ。」
「一生ならないから。」
「はっはっは。で、そちらのお二人は?」
魔武は僕の方に視線を移す。
右目が青、左目が金色だ。
目の色よりも、その視線の冷たさに僕は身動きが取れなかった。
「この人は…」
魔呼が僕を魔武に紹介しようと口を開くと同時に魔武が言葉を挟む。
「君が…へぇ…」
魔武の金色の左目が輝いた。
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