進まなかったけど進んだ
僕と魔呼は小山田の所へ近寄った。
あれだけ僕の光や魔呼の槍を受けたのに、転げた時に付いたであろう擦り傷以外の外傷は見当たらない。
魔呼の槍も魔のもの以外に影響は無いようだ。
しかし魔呼は言っていた。
『小山田本人を倒さないと終わらない』
つまり、小山田が本体であり『魔そのもの』という事だと言いたかったんじゃないだろうか。
だとしたら、僕や魔呼の攻撃で小山田は『退魔』させられていないとおかしい。
「げほっ!」
小山田が咳き込み仰向けに転がる。
意識が戻ったようだが、向かって来る気力は無さそうだ。
僕は小山田の顔を覗き込んだ。
「鳥居…ったくよ…」
「何だよ?」
「折角…力借りてやったのに勝てねぇじゃんかよ…ごほっ!」
「力を…借りてやった?」
小山田は咳き込みながらも愉快そうな顔で笑っている。
「貴様を消せるなら…何だって利用してやるさ…」
「僕を消す?」
「いつもいつも…愛乃の傍をうろちょろしやがって…」
「そんな事の為に…僕を突き飛ばしたのか?」
「そういやそんな事もあったな…あそこまでは上手くいってたのによ…」
「あぁ、そうだな。僕はあの事故で死んだ。」
「ごほっ…なのに…何でまだ居るんだよ…」
肉体はあの事故で消えてしまったが、魂は飛ばされて天界と地獄の門をくぐらず、現世に舞い戻ってしまった。
「お前が僕の体を消した事は許さない。だけど今は保留にしとく。それよりこうして僕がここに居るのは事故の前後にあった何かが原因なんだ。知らないか?」
「あ?何だそれ?言っただろ…俺は貴様を消したかっただけだ…ここに残る原因なんか作るわけないだろ…」
それもそうだ。
となると小山田は関係無いか。
まぁ、一つ消し込みが出来たというだけでも一歩前進だ。
「ぐっ!」
「おぃお前。その力、誰から借りた?」
小山田の頭に足を置いて踏み付けながら魔呼が口を開いた。
小山田が魔呼を睨み付けるが、あれだけの力の差を見せつけられたせいか、その目は怯えているようだ。
「し、知らない…銀髪で左右の目の色が違う男という事くらいしか…」
魔呼が一瞬目を見開いたと思ったら、『はぁっ』っと大きな溜息を吐いた。
「あいつか…めんどくさいなぁ…」
「知ってる人ですか?」
「え?あ!う、うん…ちょっとだけね…」
小山田に対する態度と全然違うんだけど。
「あの…」
魔呼の足元から小山田の苦しそうな声が漏れる。
「足…どけてくれ…ませんか…」
圧倒的な力の差に小山田は敬語を使っていた。
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